協業サービスのプラットフォームに③ 保険評論家・保険アナリスト 山野井良民氏

2022.05.21

 保険のサービスミックス(生損保フルラインサービス)と顧客満足・顧客維持率の関係について、米国保険会社の調査データを示して解説したことがあった。端的に、お客さまとの取引保険種目数と顧客満足度・顧客維持率が比例することを表したもので、当時はかんぽとゆうちょのフルラインサービスが可能な郵便局は、お客さまの利便性の視点に立てば他業態に比べて優位にあった。

幅広く人とデジタルをつないで

 公益性の面からは自賠責、そして損保家計主要種目(自動車・火災・傷害保険)の受託販売(代理業)を行い、お客さまとの取引種目数を増やせば、さらに顧客満足・グリップ率が高まるだろうと説いたと思う。
 言うまでもなく郵便局の優位性は、人材ならぬ人財と郵政151年の歴史が醸成する公益性と信頼度の高さにあり、これを基礎にして郵政グループ内にとどまらず公的事業や他の生損保会社、金融機関との業務事務の代理代行のほか、地域の事情により、デジタル難民、医療・介護難民、交通難民、買い物難民等に対する多様な事業者とのネットワークサービスまで視野に入れて、他業種との幅広い領域で人とデジタルで繋ぐサービスネットワークを構築していくことだ。
 保険業界では、契約募集の代理店分担(手数料分担)が常識で、多様なチャネル間において協業している。郵便局が損保のモーターチャネル(ディーラー・整備工場)と協業したり、専業代理店と分担したりして互いに得手不得手な分野を分けて分担し合うことができれば、よりきめ細かいサービスミックスが提供できる。
 これからは新たに人を雇用しなくても、デジタルでネットワークが構築できるだろう。今できない領域があれば、利用者のために能動的に規制緩和を主導すればよいではないか。