日本郵政G×ヤマトHDが共創 第1弾は配送→投函ビジネス

2023.07.13

 日本郵政、日本郵便、ヤマトホールディングス、ヤマト運輸の4社は6月19日、持続可能な物流サービスを協業する基本合意書を締結した。大型配送を主力とするヤマト運輸と小型配送が得意な日本郵便の双方の強みを掛け合わせた「共創プラットフォーム」を構築。第1ステップは日本郵便の「顧客ポストへの投函ビジネス」で、クロネコDM便やネコポスに代わる新サービスの配送を日本郵便が受託し、手数料による増収を図る。佐川急便との協業も継続。社会課題のeコマース需要に応える体制づくりを、〝共創〟を基盤に目指していく。

日本郵便 手数料増と冷蔵配送に期待
ヤマト 主力宅配に注力、投函は協業

 同日の記者会見で、日本郵政の増田寬也社長は「荷物の出し手と受け取り手の要望は多様化し、安定した物流サービスの持続的な提供が課題。今回の協業もお客さまと地域を支える共創プラットフォームの強化だ。安心・安全で豊かな生活、人生の実現を目指す」と意欲を示した。
 ヤマトホールディングス、ヤマト運輸の長尾裕社長は「3年後に主力宅急便が50年目を迎える。ネットワーク構造の刷新とビジネスモデル変革に着手した。成長分野も収縮分野もある。経営資源を考えて選択するタイミングとして、2024年問題を控える今がベスト」と強調した。

(左から)鹿妻専務執行役員、長尾社長、増田社長、衣川前社長、美並副社長
 協業は①クロネコDM便を「クロネコゆうメール(仮称)」に改め、来年2月から日本郵便配達網で届ける②ネコポスを「クロネコゆうパケット(仮称)」に改め、10月から日本郵便配達網で届け、順次範囲を拡大し、2024(令和6)年度末までに全国に拡大。
 協業目的に顧客利便性向上を筆頭に、2024年問題(24年4月からトラックドライバー時間外労働上限を年960時間に制限)対応やCO2削減を掲げている。
 ヤマト運輸の強みは2㌧や4㌧の大型トラック約3万5000台のうち、約95%に約2000㍑冷蔵庫(家庭用大型5台分)を搭載するネットワーク。
 一方、日本郵便の強みは二輪約8万2000台、軽四輪約3万台の小型・薄物に強く小回りが効くネットワーク。
 双方を生かす組み合わせを考えた際、第一に浮上したのが、ヤマトがこれまで外部や個人事業者に委託してきた日本郵便の得意とする「顧客ポスト投函事業」だった。
 投函協業オペレーションは、ヤマト運輸が集荷したクロネコDM便やネコポスを宅急便センターや郵便局で預かり、日本郵便が「引受地域区分局」から「配達地域区分局」へ配送し、顧客まで届ける。
 ヤマト運輸の鹿妻明弘専務執行役員は「投函事業は第1ステップ。その後に冷凍・冷蔵便を拡大するほか、全国1都1道2府43県に張り巡らされている郵便ポストの有効活用、飛行場でのカウンタービジネス、郵便局受取サービス、トラック幹線輸送などの拡大も考えている」と展望した。

 (以下、記者団の質問)
 ――協業の最大の目的や経緯を。
 増田社長 受託手数料による増収。すでに2020(令和2)年10月に基本合意をし、クロネコDM便を10道県で日本郵便がお届けを引き受けていたが、今年見直す協議を行い、合意に至った。20年をピークに減っているゆうパックとゆうパケットのトップライン引き上げは経営課題。リソースを掛け合わせ、新たなサービスを相談し、成長に生かしたい。
 長尾社長 既存施設内の箱型と投函の二つの作業は、仕分けも配送も別だった。協業によりシフト体制も簡素化できる。主力は宅急便の箱型ビジネスだが、投函ビジネスのクロネコDM便は直近の年度で8億冊近い。
 ネコポスはeコマース向けサービスとして、同4億冊超。引き続き投函商品を維持しながら、両社が組むことで良いサービス構築になる可能性がある。冷蔵や、ポスト利用を含めるリソースの有効活用は、皆にとって良いことだ。
 美並義人日本郵便副社長 
 クロネコDM便の年間売り上げは500億円超、ネコポスは800億円弱で計1300億円。そのうち、ある程度が日本郵便の収益増になる。25年頃には全体が日本郵便の受託数になる。

 ――日本郵便は佐川急便とも協業されていますが。
 衣川和秀前日本郵便社長 佐川様ともいろいろな協業をしっかり進めたい。さまざま検討しており、大きな問題はない。
増田社長 佐川様ともヤマト様とも関係を深め、2024年問題や環境問題対応の社会的な使命を果たせる。ヤマト様は冷蔵だけでなく、DXも素晴らしい取り組みをされている。