インタビュー 全国郵便局長会 末武晃会長

2021.09.25

 新型コロナをはじめ、社会環境が急激に大きく変化する中、郵便局はどうあるべきか、と自問自答を繰り返し考え続ける中で、会長就任2年目を迎えた全国郵便局長会の末武晃会長は「地域への貢献活動を充実させることで、地域に密着した郵便局づくりと地方創生への基盤づくりを力強く押し進めたい」と話す。昨年度に、風通しの良い組織づくりに向け率先して動いた末武会長は「難局を乗り切るには〝結束〟が最も大事だ」とも語る。

地方創生の基盤を郵便局で

 ――全特会長として2年目に入られましたが、初年度の振り返りと今後の方針を教えてください。
 末武会長 自ら率先し、最も心して取り組んできたことは、組織強化に向けた「風通しの良い組織づくり」。昨年度、緊急事態宣言が解除された時期には、私自身が全ての地方会の役員会に出席して意見交換を行うとともに、全特役員全員が地区会との意見交換を実施した。現地に行って直接話を聞くことで見えていなかった課題が発見でき、組織づくりには不可欠だと実感した。良好なコミュニケーション確保に向け、コロナ禍でも工夫を凝らしながら会員と全特役員との接点を今後も深めていきたい。
 しかし、そうした努力を続ける中で発覚した元局長による詐欺事件は、郵便局や郵便局長に対する地域からの信頼・信用を悪用するもので許しがたい犯罪だった。周囲がなぜ気付けなかったのか、部会や地区会でのコミュニケーションはどうだったのか。会員全員が『局長は地域を守る職業』との思いを肝に銘じ、日々アンテナを高く持って未然に犯罪を防がなければならない。
 犯罪は、郵便局と地域との距離を遠ざけ、郵便局の良さである地域密着性も失わせかねない。郵便局の存在価値を高め、地域社会の維持・発展に取り組むことは、当該地域だけでなく日本郵政グループにとっても有益だ。犯罪者を絶対に出さないという心構えで犯罪の撲滅に取り組みたい。
 ――来夏の参院選に向けて、自民党公認候補者として全特の組織内候補予定者である長谷川英晴氏が選出されましたが。
 末武会長 全特は、4月の評議員会、5月の全特総会を経て、長谷川英晴氏を「次期参議院議員選挙候補予定者」に決定した。そして7月14日に自由民主党から次期参議院議員選挙候補者として公認を頂いた。
 今回、改選期である徳茂雅之参議院議員は、2016(平成28)年7月に当選以来、郵政事業の発展のためにご尽力いただき、ゆうちょ、かんぽの限度額引き上げ等、多くの課題解決に取り組んでいただいた。最近では「郵便局が受託できる地方公共団体の事務の拡大や代理人請求可能な事務の追加」「市街化調整区域での郵便局の設置」に精力的にお取り組みいただき、大きな進展を勝ち取ることができた。
 徳茂先生とは昨年来、さまざまな意見交換を続けてきたが、先生ご自身のお考えから「国会議員を今期限りで辞し、その後を郵政事業に対するご自身の思いを継承いただける方に引き継ぎたい」旨の重いご決断があり、全特として、徳茂先生の重大なご決断を最大限尊重させていただくこととした。
 徳茂先生のこれまでの活動についてはしっかりと評価し、受け止めており、今後任期の最後まで私どもと手を携え、郵政事業の発展にご尽力いただけるよう期待申し上げている。
 徳茂先生の後継者選考については、関係する方々の意見や全特の各地方会の意見などを聴取しながら調整を進め、長谷川英晴氏を決定した。
 長谷川氏は全特の要職を歴任され、卓越した行動力と指導力を発揮されてきた。ふるさと納税返礼品の開発や新規事業「ほしいも事業の立ち上げ」など極めて大きな実績を持つ。郵政部内、部外に係る豊富な知識と経験、地域社会と郵政事業の発展への熱い思いを併せ持ち、参議院議員候補者として最適任である。
 徳茂先生からは「私の郵政への思いを引き継いでくれる後継候補の長谷川英晴さんを、自らが先頭に立って支援する」とのお言葉を頂いた。
 日本郵政グループは郵政民営化法等の法律により、同業他社と比べ数多くの規制(いわゆる上乗せ規制)を受け、手足を縛られている。昨年に「改正郵便法」、今年5月に「改正郵便局事務取扱法」が柘植芳文先生、徳茂先生等のご尽力により成立したが、まだまだ「ユニバーサルサービスコストの負担問題」「郵便局ネットワークの維持」「上乗せ規制の撤廃」など課題は山積し、その解決に向け、これからも政治に関わらざるを得ない。新たに長谷川英晴氏に加わっていただき、しっかりと取り組んでいただくことを期待している。

地域密着の貢献活動を

 ――社会の変化の中での郵政事業と郵便局ネットワークに対するお考えは。
 末武会長 高齢化・過疎化の進展、ICT・AI・フィンテック等の技術革新、金融情勢、労働市場の動向など、郵政事業を取り巻く社会経済環境は大きく変化し、厳しさを増している。その中で、全国津々浦々に張り巡らされる郵便局ネットワークは地域の要望に応えられる役割を果たす〝礎〟そのものだ。利用者利便やニーズに対応できる郵便局は社会的にも必要で、郵便局ネットワークの維持は重要な課題と考えている。
 地域事情に応じたサービスや、時代の変化を先取りした商品等を提供できる郵便局を目指し、会社と進める「郵便局ネットワークの将来像」の議論を深めていきたい。短期的な収益性のみならず、公益性・将来性の観点も含めた将来像が必要。新たな収益を探ることも大事で、全特は、次代を担う中堅・若手会員の意見を吸い上げ、中長期の将来像に反映させる取り組みも行っている。
 ――コロナ禍において地方創生の取り組みが一層求められています。郵便局長はこれからどう動かれるのですか。
 末武会長 地域への貢献活動を充実させることで、地域に密着した郵便局づくりと地方創生への基盤づくりを力強く押し進めたい。デジタル社会が進む中であってもリアルな郵便局は絶対に必要だ。現在、全国で20局まで実現した自治体の包括事務受託、新規事業の創出、デジタル的な要素も掛け合わせた新サービスの開発等、自治体や地域の団体等との〝密接な連携〟は、地域に根差す局長だからできること。国等にも地方創生に資する郵便局の利活用をこれまで以上に働き掛けていきたい。
 150年前、前島密翁が全国に広がる郵便局網を短期間で作り上げることができたのは、思いに応え、無償で自宅を提供した各地の有志の存在があったから。その志を受け継ぐのが郵便局長。「縁の下の力持ち」として、一人一人がそれぞれの場所で地域貢献を積み上げることが必要だ。この力を結集することが私の使命。自治会や町会、消防団等をはじめとする地域組織の運営や各種行事、防災活動への参画等は地道な活動だが、極めて重要。引き続き積極的に取り組んでいただきたい。
 私は地元萩市の幕末の偉人、吉田松陰の好んだ孟子の一節「至誠にして動かざる者は未だこれあらざるなり」(誠意を尽くせば、どんなことも動かすことができる。無理だと思うことでも行動することが大切だ)を座右の銘としている。新型コロナや災害で大変な時代だが、思いを共有し、これまで以上に良好な局長間のコミュニケーションが図られるよう努めていきたい。この難局を乗り切るには〝結束〟が最も大事だ。