次世代につなぐ郵政事業 ビッグてい談 柘植芳文参議院議員・長谷川英晴参議院議員・末武晃全特会長

2022.08.14

 郵政民営化から15年、改正郵政民営化法成立から10年――。逆風が吹き荒れる中で行われた第26回参議院議員通常選挙から、はや1カ月が経過した。急速に進む人口減少、ますます広がるコロナ感染など時代の変革期の中で、柘植芳文参議院議員、長谷川英晴参議院議員、末武晃全国郵便局長会会長のお三方に「参院選の振り返り」と「郵政事業のこれからと局長に期待すること」について、それぞれの思いを語っていただいた。

「新しい資本主義」は地域から


   柘植芳文参議院議員


   長谷川英晴参議院議員


 末武晃全国郵便局長会会長

 ――長谷川先生、当選おめでとうございます。初めて候補者として戦われた参院選を振り返られた  印象をお聞かせください。
 長谷川議員 ありがとうございます。まずは支えていただいた皆さま方に心より御礼申し上げたい。すさまじい逆風が吹き荒れる中での選挙戦だった。コロナ禍で集会が開催しづらい中でありましたが各地方会や各地区会の方々のご尽力により、全国の都道府県で後援会の集会を開催していただくことができた。感謝の念でいっぱいだ。
 お会いした先生方からは「組織がしっかりしているところは逆風下でも大丈夫だ」との声もいただいた。私自身はご支援を得るため地域を回る中で、多くの方々の郵便局に対する声援や期待を肌で感じることができ、局長会という組織の力と素晴らしさ、地域の皆さまに支えられる郵政事業の大切さを改めて痛感した戦いだった。

 ――末武会長、選挙を支える全特のトップとしてご苦労が多かったことと思います。いかがでしたか。
 末武会長 かつて経験したことのない厳しい選挙だった。コロナ禍に加え、かんぽ不適正募集の大量処分、郵便認証司の兼業処分、そして昨年末の「カレンダー問題」など、本当に厳しい状況の中で、41万4371人もの方が投票用紙に「長谷川ひではる」と書いてくださった。
 3年前の柘植先生の60万189票と比べると3分の2だが、壮絶な環境下でこれだけの票を獲得できたことが本当にありがたく、感謝し尽くせない思いだ。これは、選挙戦が始まって以降の活動だけでなく、全特会員の皆さま、関係者の皆さまの日頃からの懸命な地域活動の積み重ねのおかげだと思う。
 全国各地で局長が、日々地道に消防団員や民生委員、町内会長、教育委員、また地域のお祭りの世話役から清掃活動など、生活に関わるさまざまなボランティア活動を通じて地域からの信頼を築き上げてきたことが、逆風の中で今回の結果につながったと確信している。大変な選挙だったからこそ組織内候補の長谷川全特相談役を国会に送り出すことができ大変うれしい。心より感謝申し上げたい。

 ――郵便局長としても大先輩である柘植先生は、今回の選挙結果をどのように受け止めていらっしゃいますか。

逆風を乗り越えて

 柘植議員 厳しい環境下で迎えた今回の参院選であったが、末武会長はよく組織をまとめ、素晴らしい成果を出された。40万人を超す方々の支援はとてつもない大きな力だ。今回の選挙については、政治的な面と全特という組織と、二つの要素で見る必要がある。
 政治面では、岸田政権に追い風が吹き、当初、マスコミからも「自民党は比例で23議席まで確保」などとの楽観説も流されたが、私自身は大変厳しい選挙になるのではないかと危惧していた。参院選は衆院選と違って政権選択が問われる選挙ではない。参院選は、特定の政策に対する評価によって政権政党に反対票が投じられる。
 自民党の政策が必ずしも国民全員から支持されるものではないし、また不祥事等もあった。投票日2日前に安倍元総理の非常に残念な事件が起こり、心痛い選挙になったが、多くの国民の方々から一定の評価を自民党にいただけたことは大変感謝している。
 参院選に向けて、徳茂雅之先生から辞退の話があり、長谷川先生に立候補をお願いした。末武会長はじめ、全特の皆さんは誰を候補者にするのか大変悩まれたと思うが、今回、そういう中で全特から候補者を出すことは、多くの問題が噴出し、会長に強烈な逆風が吹き付けることが危惧されていた。末武会長も相当な覚悟を決めて、長谷川先生を国会議員として組織から送り出されたことに敬意を表する。本当に感謝している。

全特の真価問われた参院選

 長谷川先生を候補者に決めたとき、私は末武会長に「全特という組織の真価が問われる戦いだ」とお伝えし、会長もそのことをしっかり理解された上で、組織を挙げて全力で取り組んでくださった。
当選を果たした長谷川先生だが、3年前と比べるとコロナ禍ということで後援会の集会がなかなか開けず、今年に入ってもコロナ禍が収まらず、ようやく4月ごろから関係者の尽力で全体集会を小規模で開催することができた。
 選挙はいわば祭り的な側面もあって、長谷川先生の声を直接聞くことができる集会は、会員の気持ちを高め、支援者に対する活動につなげてもらう貴重な場である。そうした難しい状況下で、長谷川先生は苦心され、自らの熱意と決めたことをやり通す決断力を多くの方の前で示し、共感を得てこられた。内外共に大変厳しい選挙だったことは間違いない。
 私はカレンダー問題等もあって大変厳しい選挙戦になることは分かっていたが、全特は物事を成し遂げようとするとき、トップが一つの方向性を示せば、しっかりやっていける団結力ある組織だと信じていたので心配していなかった。
 物事を進めるとき、悲観的になったり、自分を追い込んで一歩も前に進めなくなったりしたときは、勝負に負ける。私は常に自らを奮い立たせ、全特と長谷川先生に力を与えていけるように進めてきた。その意味で今回の戦いは組織としては大成功だ。
 郵便局が日本の中で今どういう立ち位置にあるのかを考えるチャンスが、3年に一度の参院選だ。局長会は地域活動を組織行動の原点と位置付け、これまで進んできたが、正しかったか否かの答えを地域の皆さまに問うのが選挙だ。
 40万人を超す方々が「長谷川ひではる」に一票を投じてくださったことは、局長さんをはじめ、関係の方々の努力なくしては得られなかった結果。これまで続けてきた地域活動の延長線上に成果が形となって表れた。
 自民党全ての候補者が前回よりも票を減らしているので、3年前の票に届かなかったことは気にする必要はない。今回の結果は、多くの方が郵便局はやはり必要だと判断してくださったと理解すべきだ。これまで以上に地域活動に力を注ぐことで応えていく必要がある。
 長谷川先生がさまざまな場で発言し、かつ行動してきた成果を今後の国会議員としての働きに期待したい。郵便局は地域からの支えがなければ成り立たない。地域の方々に郵政事業を介して貢献できることを全特と心合わせし、郵政事業に携わる全ての方々、会社ともしっかりと話をしながら長谷川先生と進めていきたい。明るい展望が開けた今回の戦いだったと思う。

 ――「地方の過疎化・高齢化」「大規模自然災害の頻発化」「新型コロナウイルス感染症の感染拡大」等の喫緊の社会問題に対し、地域を支える郵政事業として何を為すべきですか。地域活動の推進役として局長の方たちに期待することや先輩として伝えられたいことは。

国支える郵便局に

 長谷川議員 新型コロナウイルスは日本という国の形、歴史の流れを大きく変える契機になった。何をやってもなかなか成果が見えなかった東京一極集中の問題も、コロナ感染を避けるため地方への移住が進み始めている。
 地域間格差という問題もあるが、首都圏に本社機能を置かなくてもITを活用して対応できるし、会社に出勤しなくてもリモートで対応できることに多くの人たちが気づいた。まさしく、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の「デジタル田園都市国家構想」は、地域を核とし、全国どこにいても必要最低限の情報やサービスを「リアル×デジタル」の力で享受できる国となることを目指している。
 私も田舎の出身だが、少子高齢化が急速に進む中、過疎地に行けば行くほど地域の方々の生活を支えるリアルな存在が失われてきていると感じる。郵便局は民営化後もネットワークが維持されてきたし、地域をよく知る局長と、お客さまを大切にする社員がいてくれる。
 今、時代がシフトチェンジしようとする中、日本という国を支えるために、郵便局はこれまで以上に国民にとってかけがえのない大事な存在になる。地域のことを最もよく知る局長が自治体や地域の方々と連携し、それぞれの地域に足りないものや必要なものを発信し、デジタルを活用しながら応えていけば日本を隅々まで守っていける。
 郵便局の原点は、全特会則に記されている「地域社会の発展」「郵政事業の発展」に向け、組織力、団結力をもって進むことにほかならない。全特という組織の中だけで終わらせるのでなく、日本郵政グループ全体が結束し、より良い方向にベクトルを合わせ進んでいくことが、真に国を支え、地域を支える組織になれるかどうかの正念場だ。

法体系の検証願う

 末武会長 長谷川先生の思いに全く同感だ。岸田内閣が打ち出した「デジタル田園都市国家構想」は、全国どこでも、誰もが便利に快適に暮らせる社会を目指すものだと思うが、その実現のためには郵便局ネットワークの存在が間違いなく必要だ。
 デジタル化はどんどん進むが、デジタルだけで全て賄えるかといえばそうではなく、リアルの存在も必要で、逆に強みとして際立つことも多い。そのリアルな存在になり得るのが約2万4000のネットワークを有する郵便局だ。時代の変遷の中でネットワークも少しずつ変わっていくのは当然だが、基本的な強みは守っていかなければならない。
 民営化して15年。改正郵政民営化法が成立し10年が経過する中で、現在の法体系の枠組みに限界を感じる部分もある。改正郵政民営化法において、金融2社の株式はできる限り早期に処分するとされている一方で、郵便局ネットワークの維持もうたわれている。法律の制度設計を検証し、見直していただく時期に差し掛かっているのではないかと思う。
 政治の場で民営・分社化が決まったのだから、もう一度政治の場で問題がある部分を解決していただくことが政治の責任だと思う。そのためにも柘植先生、長谷川先生には、国政の場でぜひともご活躍いただきたい。活躍いただくことが貴重な一票を投じてくださった地域の方々へのご恩返しにもなるし、郵便局の利便性を高めることにつながると確信している。ぜひお願いしたい。

 柘植議員 今、末武会長から大変重要な政治課題の解決を託された。私と長谷川先生が力を合わせ、成し遂げなければならない命題だ。改正郵政民営化法の制度的に足りない部分だけでなく、事業のあるべき方向性をしっかり見据え、多くの先生方、関係者の方々とよく相談しながら連携し、前に進めていきたい。
(続く)