増田日本郵政社長 楽天との〝共創〟本格始動

2021.12.10

 日本郵政の増田寬也社長は11月30日の記者会見で、「行政サービスを郵便局に委託したい自治体は間違いなく増えていく。今後は自治体が利用しやすいように、受託時間や曜日を区切って受け付けることはあり得るのかもしれない。柔軟に考えたい。自治体へ『事務受託の制度を使ってみませんか』と働き掛けをより進めていきたい」と語った。会見では、日本郵政グループと楽天との新たなサービス等、共創の具現化が本格始動したことを明示。日本郵便のドローンから配送ロボットへ荷物をつなぐ全国初の実証実験開始も発表した。

包括事務受託は柔軟に拡大を

 増田社長は「多くの荷物がバラバラに配送されるお客さまストレス解消に向けて、11月30日から日本郵便が配送する荷物を対象に楽天市場の複数店舗商品のまとめ配送を指定できる『おまとめアプリ』サービスを開始。まとめ配送日時、置き配や再配達などさまざまな受け取り機能を集約。注文情報は日本郵便の『e受取アシスト』の受け取り変更サービスに連携し、複数の荷物をまとめて都合の良い時に受け取れる。将来的に他の配送事業者や楽天市場以外のECサイト事業者へ拡大し、EC業界全体の利便性向上と配送効率化を実現するオープンプラットフォームを楽天と構築したい」と強調した。
 
 「金融分野では12月1日から『楽天カードゆうちょ銀行デザイン』『楽天カードゆうちょ銀行お買いものパンダデザイン』の申込受付、発行を開始する」と報告。さらに、「JP楽天ロジスティクス(諫山親社長)が設置した『楽天フルフィルメントセンター中央林間』は、楽天市場出店店舗向けの総合物流サービスセンター。物流拠点は順次拡大し、連携を強固に一層便利なサービス提供に努める。楽天グループと地域社会の貢献、事業拡大のために互いの経営資源や強みを生かしたシナジーの最大化を図る」と意欲を示した。

日本郵便 全国初の実証
ドローン×ロボットで配送連携

 増田社長は「ドローンと配送ロボットの長所を組み合わせ、単体では運ぶことができない場所への活用幅を広げる新たな実証実験は㈱ACSL等の協力を得て、12月1日から約1カ月間、東京都奥多摩町で実施。ドローンは荷物を積み、約2㌔飛行した到着地点で着陸せずに配送ロボットに荷物を受け渡し、ロボットは約200㍍の範囲内の複数世帯のお客さま宅まで公道を走行し、配送する。今回は歩車道分離されていないところでロボットが動く。今後、法改正など制度整備が加速度的に進む中、郵便や荷物の配送高度化実現に近づく。日本郵便は新たな技術と物流の融合を強化する」と説明した。 


 記
者団から「楽天との共創をどう見ているか」には「荷物増量で下地を作る。これまでの日本郵政グループではなかなかアプローチできなかった層に、ゆうちょ銀行も入っていきたい。DXに、意識改革や仕掛け含めて取り組む。想定以上の成果を上げる下地ができている」と述べた。
 「楽天モバイルは」には「楽天は第4のキャリアとして出て行く、相当の覚悟を持つ。楽天市場の利用者に携帯電話インフラを通じて提供するサービスと結び付ける先をいろいろと考えている」と明かした。
 「荷物増に向けた戦略は」には「巣ごもり需要の反動や料金等々の問題もある。法人向け営業を強める努力をしている。郵便・物流はグループの中心的な部分。BtoBを増やせるように、くさびを打ち込まないといけない」と指摘した。
 「楽天との配送ルートの再構築は」には「JP楽天ロジスティクスとの配送ルート組み替えは時間もかかる。5カ年で約2億7000万個目指す。中央林間の次に九州にも作る。加速度的に進めている。日本郵便は楽天以外も相当な営業努力が必要だ」と強調した。
 「郵便局ネットワークの再点検は必要か」には「リアルのネットワークは今の時代に他にはない。それによって提供できるサービスで会社の収益につながるものを育てたい。過疎地は公共的なサービス基盤として使う方法がある。都市部をどうするかはこれから大きな問題になると思うが、会社の業務との関係性で考えたい」と方針を示した。
 郵湧新報の「自治体の行政事務受託を局窓口が空いている時間帯に受け付けるなどして手数料を安くし、広げる考えは」には「郵便局に一部事務を委託する自治体数は現在、約300自治体まで広がってきたが、包括事務受託はまだあまり多くない。自治体は支所などサービス拠点の維持がますます難しくなっている。自治体も委託がプラスか否かを考えると思うが、こちら側も宣伝したい。柔軟に考え、働き掛けを一層進めていきたい」などと語った。