根岸日本郵政社長 体質改善に全力!〝現場〟の声が重要

2025.07.16

 日本郵政の根岸一行社長は6月27日、就任後初の記者会見を開催し、「まずは点呼業務未実施事案でお客さまの信頼を損なったことをお詫び申し上げたい。一連の不祥事等は最優先課題としてグループ全体の体質改善に全力を注ぐことが責務」と強調。「日々お客さまに接する郵便局の局長や社員の声が重要。システム等の使い勝手が悪い、お客さまニーズとずれている等々の現場の声を経営に取り込みたい。ゆうちょやかんぽの社員ともコミュニケーションを取ってグループ全体で取り組みたい」と意欲を示した。
 また、「中期経営計画『JPビジョン2025+』の最終年度をやりきり、次期中期経営計画を策定する。通例は5月頃に公表する予定だが、骨子をできれば年内にお示ししたい。物流や不動産等の成長分野に必要な投資を行う。地域の方々に役立てる公的な受託業務は広げたい。ただし、グループガバナンス徹底を最優先した上で社会問題にお役に立てることに取り組みたい」と語り、会見中何度も「グループとして」「(局長含む)社員の声を」と繰り返した。

地域に役立つ受託業務広げたい

 ――成長戦略をどうお考えですか。物流事業をどう模索されていますか。
 根岸社長 物流と不動産は成長の大きな柱。郵便局窓口による自治体等の事務受託もあるが、成長というよりはネットワークを生かして地域のお客さま利便に貢献するもので、収益の積み上げは限定的。物流はBtoCから幹線輸送等、幅を広げることは取り組めると思う。
 小型荷物は日本郵便の得意分野で、生かさないのはナンセンスだ。点呼問題を早期に解決し、注力できる体制に取り組む必要がある。営業も取り扱い個数が増える提案ができる体制に早期に持っていくためにもガバナンスを整えたい。

 ――点呼問題の業績への影響やデジタル化は。ガバナンス方針を。
 根岸社長 6月25日に国土交通省から一般貨物自動車運送事業の許可取り消しと再発防止徹底を求める安全確保命令の処分を受け、総務省から日本郵便株式会社法に基づく監督上命令等を受領した。厳粛に受け止め、点呼の適正実施、飲酒運転の根絶にグループを挙げて取り組みたい。
 トラック集荷業務は約6割を他運送会社に委託し、残り4割は日本郵便の約3万2000台の軽四輪車でお客さまにご迷惑をおかけしないようにオペレーションを行うことになったが、現時点で問題は発生していない。軽四論の特別監査が実施されており、処分内容が明らかになった際に説明したい。
 グループガバナンスの徹底が必要。収益の影響が出てこないとも限らない。デジタル的な記録等ができることは重要。一線(事業部門)、二線(管理部門)、三線(内部監査部門)の強化も全体で機能するように取り組んでいきたい。

郵便局ネットワーク生かし
時間単位の柔軟性検討も

 ――郵便局ネットワークについて隔日営業や都市部の集約等は考えるのですか。
 根岸社長 法令上、過疎地は維持、都市部は制約がない。さまざまな議論があり得るが、地元の方々のご意見もある。かなり時間がかかるのも事実。
 都市部は、局間で社員が2~3時間単位でフレキシブルに移動する柔軟な配置の方が効果的だと思う。数ありきで議論するより、今の施策で実を取る方がよい。
 各地域の中で何がベストな配置かさまざまな選択肢を考える時期で、統廃合を考えるとすれば次のステップ。隔日営業は他金融機関の週2日営業、1日おきしか開けない店舗を見ると、利便性が相当劣っている。半日営業の方が現実的だろう。それも難しい場合は1日単位の議論はあり得るが、段階を追う方が現実的だ。
 観光地等で周辺の店舗が皆土日に開店している中、郵便局だけ閉じているのもおかしな話。地域の実情と段階的に議論を進める方が、効果が目に見える。

 ――全国郵便局長会も新体制になりましたが、郵政事業が危機的な状況の中で連携や協力が必要と思えますが。
 根岸社長 局長会は任意団体。会社の施策に関する直接的な議論はやりにくいが、お客さまと直接接するのが郵便局。局長や社員の声を聞くこと、コミュニケーションは重要だ。
 勝又一明全特会長は静岡県内の郵便局長で、私は東海支社長だったため、存じている。それ以外の局長の皆さん方とも意見交換は必要だ。
 日本郵便だけでなく、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の社員とも危機的な状況だからこそ、フロント社員とコミュニケーションを取って現実を把握することが大切だ。

 ――現場の方々の意見を経営に反映されますか。郵政関連法見直し法案に盛り込まれた郵便局の公的業務を第四事業に位置付けますか。グループ一体感の担保は。(郵湧新報)
 根岸社長 日本郵政グループは多くの社員を抱え、全国に郵便局ネットワークを持つ。日々お客さまに接する社員の声が非常に重要。日本郵便は「未来会議」で社員とコミュニケーションを取ってきたが、ゆうちょやかんぽの幹部も参加いただき、意見交換をしている。
 その他本社の人間も郵便局、ゆうちょ、かんぽの直営店やセンターに足を運び、意見を聞き、システム等の使い勝手が悪い、お客さまニーズと会社のやり方がずれている等々の現場でお客さまと接する社員の声を経営に取り込みたい。
 本社や支社の社員数も限られ、全社員の満足は難しいが、聞く機会を多く確保することが重要だ。各郵便局でどのような営業指導が行われているか、任せきりでなく、ミーティングに支社や本社の社員も積極的に入り、状況を把握し、悩みや疑問点を解決するよう、日本郵便も取り組みを進めている。
 見直し法案は、上乗せ規制撤廃を従来からお願いしてきた。郵便局が地域のお客さまに役立つには、ゆうちょ口座だけではなくて、自治体事務受託も大きな役目。法案で公的業務を本来業務に位置付けていただくことや地方交付税措置も非常にありがたい。
 それだけに限らず、自治体の皆さま方にできることをお伝えし、受託業務は広げたい。第四か第五かいずれにしても三事業に次ぐ重要な柱。次期中期経営計画の中で非常に重要な要素だ。
 来局誘致等もまだ制約があり、コンプライアンスを守ることが前提だが、郵便局窓口で商品を説明することで、ゆうちょやかんぽの取り扱いも増える。グループ全体で一緒に実を挙げていきたい。
 広報も郵便、ゆうちょ、かんぽそれぞれさまざま取り組みを進めているが、各社のPRでなく、グループ全体をPRできる仕組みを含め、一体感が表に見えるようにしたい。各社社長とも話し始めている。次期中期経営計画を議論して、具体的にお示ししたい。