インタビュー 全国郵便局長会 福嶋浩之副会長

2022.06.23

 全国郵便局長会(末武晃会長)は5月22日に開催した総会で、退任する佐々木靖副会長(前北海道地方会長)の後任に福嶋浩之理事(東京地方会長/八王子並木町)を選任した。東京は競合他社がひしめく主戦場。福嶋新副会長は「お客さまを増やすには、郵便局が常につながる努力をし続けなければ厳しい。局周がオフィスであっても住宅地であっても、お客さま対応は変わらない。局周は愛着をもって接する〝守るべき城〟」と語る。

お客さまと〝つながる〟努力継続を

 ――ご就任おめでとうございます。ご抱負をお話しください。
 福嶋副会長 ありがとうございます。末武会長が目指している、会員がそれぞれの部会や地区会の中で忌憚なく話ができ、気持ちが通い合う組織づくりや環境づくりに自分も努力する。また専門委員会のさらなる活性化も目指していきたい。
 会社の発展を考えながら会員の処遇改善や業務のしやすさを皆で考えなければならない。必要とされる郵便局になるためには、最大の強みであるリアルさにデジタルを取り入れた未来志向のアイデアを現場目線でどんどん発信できればと思う。

 ――地方会として取り組む地域清掃の輪がじわじわと広がっているようですね。
 福嶋副会長 全国には、年に何回か定例的に清掃活動に取り組んでいる地区や部会がたくさんあるが、地方会を挙げて継続的に一斉に取り組んでいる例は全国的にも珍しいと思う。「郵便局」と明記した赤いビブスを着用し、清掃活動をすることはいわば看板を背負っているようなものだ。会員は皆、丁寧に誠実に取り組んでいる。
 自発的に取り組み続ける中で、支社からも「一緒にやりたい」と賛同をいただき、社員や単マネの方たちが参加する地域も出てきた。毎月第2土曜日の朝、東京のあちらこちらで行われる郵便局の清掃活動が風物詩になるよう地道に続けていきたい。
 オフィス街の局長から「地域貢献ができない」「そもそも地域がない」などの声も聞くが、局周がオフィスであっても住宅地であっても、お客さま対応は変わらない。局周は愛着をもって接する〝守るべき城〟と思っていただきたい。

 ――東京都内の包括連携協定も進みつつあるようですが。
 福嶋副会長 5年ほど前に都議会の予算関連の会合に出席した際、「はこぽすを都営団地の中に設置してほしい」と要望したこともあった。昨年は長年、郵政関係者の悲願でもあった「東京都との包括連携協定の締結」を進めるため、東京地方会として要望を出した。
 その後、都から東京支社(樋口良行支社長)に「日本郵便との包括連携について話を聞きたい」と連絡があり、打ち合わせが始まった。常日頃の局長と地域との「つながりの強さ」が自治体との連携を深めることにつながった。都心部においても、もっともっと地域とのつながりを深めていきたい。

 ――人口が集中する首都圏は特に防災の心構えが重要と思います。
 福嶋副会長 首都直下の大地震が起きれば帰宅困難者も多数出てしまう。局長の多くが防災士資格を取得しているが、住民の方々には、あまり認知されていない。私の局は「防災士のいる郵便局」と案内を掲げている。それぞれの局長がさまざまな方法でアピールできるとよい。
 資格維持には普通救命を3年に一度受け直さなければならないが、東京会は消防署に依頼して継続的な訓練を続けている。防災士として局長たちがみんなで頑張っていることを地域の方々にどんどん知らせていきたい。

 ――日本防災士会の浦野修会長は全特顧問としても防災に熱心に取り組まれており、備蓄を推奨する防災安全協会(斎藤実理事長)も都内にあります。郵便局を防災安全拠点にできないでしょうか。
 福嶋副会長 非常に大事な観点。ただし、小規模なエリマネ局は備蓄といってもわずかしかできない。防災拠点としては発電機も備えている単マネ局を整備し直すのが、備蓄量という点でもベストな方策だと思う。

局周は愛着をもって接する 守るべき城

 ――東京は競合他社がひしめく主戦場。投資信託など窓口での金融商品販売を活性化するアイデアは。
 福嶋副会長 投資信託はつみたてNISAなどの非常に良い制度もある。貯蓄から投資へという流れもあるので、「定額定期に預けておくより、お金は育てるものですよ」と、お客さまとじっくりお話しできる時間が欲しいが、その時間がなかなか取れないのが都心部のジレンマだ。
 お客さまが待ち時間の間に、例えば、業務用タブレットを自由に使い、投信、保険、物販の商品やサービスを確認できれば、事業にとってもお客さまにとってもウィンウィンになる。
 金融商品のお客さまはかなりの時間お待たせする。我々が手続きする間、ただ待っていただくのは申し訳ないので「こちらをご覧になってください。郵便局にはいろいろな商品やサービスがありますよ」とタブレットをお見せしたり、お客さまご自身のスマホでそれらを見ていただけたりするとよいと思う。お客さまを増やすには郵便局が常につながる努力をし続けなければ厳しい。
 投信も、保険も、定額も、積極的にお客さまに連絡を取って来局いただく取り組みを継続していかなければ一度限りのお客さまで終わってしまう。人間関係を継続するためもDXを活用し、お客さまに細やかにアプローチすることが有効だ。

 ――リアル×デジタルの郵便局に対するお考えはありますか。
 福嶋副会長 今、郵便局が最も注力すべきことはマイナンバーカードとの接点。電子証明書の発行・申請も法改正のもと、郵便局でできるようになったが、行政が局に端末を支給してくれて初めて成り立つ仕組みだ。
 自治体の事務受託も、マイナンバーカードを住民の方が持つ持たないでは大きな差が出てくる。まず持っていただくために、身近にある郵便局を活用すれば利便性が高い。「局に行くついでにマイナンバーカードを申請しましょう」と全国の郵便局で展開するぐらいのことを本当はした方が良いのではないかと思う。
 スマホに全てが搭載される世の中に向かっている。郵便局はこれまでも金融商品の販売のため本人確認業務を行ってきたが、膨大な書類が必要で時間も手間も掛かる。現段階はシステム上できないが、マイナンバーカードを活用すれば郵便局もスムーズに本人確認ができる。郵便局とマイナンバーカードの接点を作ることでさらに利便性が向上していくと思う。