Liquid「社会のすき間から未来を見る」

2024.07.09

 日本郵政グループは5月10日、本社前島ホールで「Social Co-Creation Summit Liquid 2024~社会のすき間から未来を見る~」(主催:ローカル共創イニシアティブ、協力:MPO法人ETIC)を開催した。人口減少や高齢化が進み、地域コミュニティーが崩れる状況を食い止めようと行動し、結果を出しているベンチャー等と郵政関係者で課題解決を探り合う公開フォーラム。日本郵政の砂山直輝執行役は「すき間なくの意は、日本列島をカバーする約2万4000の郵便局だ。若手社員を公募して地域現場に送り出す『ローカル共創イニシアティブ』も3期目を迎えた。企業の創意工夫と郵便局を掛け合わせた解決策を一層探るため、今日は郵便局長や社員の皆さんにも登壇いただいた。現場発の意見発信を願いたい」と呼びかけた。(セッションは8構成で展開。うち、3セッションの一部を紹介)

新しい自治の形を 郵便局の〝つなぐ〟力で

○基調セッション『関係性から生まれる地域ビジネス』 登壇者:高橋博之㈱雨風太陽社長、小林味愛㈱陽と人社長、増田寬也日本郵政社長。モデレーター=浜田敬子氏(ジャーナリスト)の4名。

 浜田氏 能登の復興でコミュニティーの集約化の話も出ている。郵便局の在り方にも関わってくると思うが。
 高橋社長 道は二つ。戻すのであれば集約化は避けられない。一方、暮らしたい方の想いを実現するには、ある程度インフラを自ら賄う形をつくらなければならない。田舎の魅力とは、土地の自然から生活する力をもらい、外の人に価値を売る。しかし、一流の田舎が都会をまねて三流の都会になった。都会にないものを持つ一流の田舎だから、都会の人がお金を落とす。
 小林社長 郵便局の業務を効率化して生み出したゆとり時間で、畑の仕事や不登校児との対話など、地域と一層、関われる可能性はあると思う。
 増田社長 地域全域をよく知る組織は郵便局しか残らない。局長や社員の皆さんが積み重ねた信頼やデータを地域に役立つようにしたい。企業や団体が地域と関係性を持とうとする時も、信頼のある郵便局を通せば地域の方々も受け入れやすい。今、支社を通じて郵便局がさまざまな関係をつなぐ仕組みをつくろうとしている。

〇テーマセッション1「共助」『ローカルコープ~地域の生き残り戦略~』 登壇者:家入一真㈱CAMPFIRE社長、山口美知子公益財団法人東近江三方よし基金常務理事兼事務局長、今井吉則月ヶ瀬局局長、光保謙治日本郵政事業共創部係長。モデレーター=林篤志(一社)Next Commons Lab代表理事の5名。
 今井局長 局長になって25年間に4割近く人口が減った。20年前に村の若者定住事業の委員長を務め、世代間交流をやろうとなったが、続かなかった。今日の話を聞き、「解決策はお金だけではない」とも思えた。子どもたちも半分以上は地域外に出ていく。地域を超越した関係含めて地域づくりを進め、1人でも戻って来れる環境づくりが必要。地域おこし協力隊と住民の方々を結び付けるのが私の役割と思う。
林氏 過疎地等の自治体の枠組みが今のままでは持たない。住民自らが参画するサブ自治体をつくるべきだ。
 光保係長 買い物支援の「おたがいマーケット」は、日本郵便の地域への再投資で、地域にお金を還元する一歩。「皆が集まる拠点があるなら何かをやってみよう」という住民の方々の生きがいも広がるサービスだ。
 山口常務理事 10年以上眠り、預金保険機構に集められる預金を再分配する法律ができた。受け取れる仕組みをつくりたいと考え、実現できた。
 家入社長 資金調達もコミュニティーの関わりも含めて〝関係人口〟と非常にリンクする部分がある。

〇テーマセッション4「空き家」『空き家を社会課題から地域におけるポジティブな資産への転換~最新の事例から見えるシステムとしての可能性~』 登壇者:渡邊享子㈱巻組社長、古市奏文(一財)社会変革推進財団インパクト・エコノミー・ラボのインパクト・カタリスト、立川尚人和倉温泉局局長、木下翔太郎日本郵便地方創生推進部主任。モデレーター=多田進也日本郵政事業共創部マネジャーの5名。

 多田マネジャー 空き家は昨年10月時点で約900万戸。地域にインパクトを発信するために多面的に可能性が感じられる。
 渡邊社長 地場の域内で資源が循環する受け皿のように空き家は機能し得る。地場で経済圏を自立できるようにすれば災害時も強い。
 立川局長 郵便局の空き家みまもりサービスは、写真を撮って状況等を遠方のお客さまに報告する。能登半島地震後は詐欺や空き巣被害も多かった。私がみまもるお宅も入り口のドアが開いてしまい、心配になってお客さまに連絡を取り、警察立ち合いのもと、中を拝見したが、持ち主の方は状況がさぞ気になると思う。
 町の実情をよく知る局長は町の管理人的な役割もできるかもしれない。石川県内全局長が移住・定住サポーター。配達社員も日々、町を回るため、市役所の方に「住民票より郵便局の転居届の方が、精度が高い」と冗談で言われる。
 古市氏 関係人口化が定住人口にひも付く事例も増えている。空き家活用は地場産業の変化への敏感さが重要だ。局長の皆さんの気付きを活用できる。