社会の要請に〝リアル拠点〟生かす 日本郵政 増田社長
日本郵政の増田寬也社長は9月30日の記者会見で、記者団の「新規ビジネスの展開は。民営化15年が経過したが」との質問に対し、「約2万4000の郵便局ネットワークを維持できていることが重要で、歴代の経営者が取り組んできた成果だ。地域が急激に変化する中で、自治体も支所等が維持できず、郵便局が肩代わりする状況も増えつつある。地域利便のためにもリアルな拠点を守っていきたい」との方針を示した。また、「ネットワークをグループだけで使うのでなく、企業や自治体の方々に活用し尽くしていただきたい。撤退せずに生かし、社会で要請されるサービスにどこまで入り込んでいけるかだ」と感慨深く語った
民営化15年、維持できていることが重要
増田社長は「局数配置とサービスは地域性に鑑み、考える必要がある。地方は局を維持する社会的なニーズが高いが、1局単体で収益を賄うのは厳しい。エリアで補完し合い、ネットワーク維持のために空き家見守り的なビジネスをもっと掘り起こしたい。都市部は稠密(ちゅうみつ)配置で企業も多い中、サービス内容を考えなければいけないが、インフラ企業として都市も地方も維持が強い武器になる。人員は業務範囲に応じて融通し合い、来年公表の30年先までの人口動態の詳細を分析し、将来を考えたい」と述べた。
さらに「24時間365日提供するデジタルサービスも、世代交代が進めば主力になる。サイバー空間上のネットワーク構築も急ぎ、郵便局サービス全体で向上できるようにする」と加えた。
ネットワーク力で「空き家みまもり」
同日に発表された「郵便局ネットワークを活用した『空き家のみまもりサービス』試行」の基本サービスは、社員が定期的に空き家を訪問して物件の外回りの状況や戸締まり等を確認し、結果を写真付きで報告。
オプションで鍵を預かり、家屋の換気や通水、郵便受箱の片付け等の他、物件を見回る報告サービスも提供する。10月28日~来年1月末まで先着100名の協力者を日本郵便のホームページで募集し、来年2月から再来年1月まで試行する。
増田社長は「国内の空き家数は2038(令和20)年に1367万戸、空き家率21.1%と予測されている。メンテナンス等、維持管理の課題の解決策になる。試行結果を踏まえ、運用を検討する」と説明した。
配送ロボット、外部オフィスで初実証
一方、10月3日~12月21日まで、日本郵便は「アーバンネット名古屋ネクスタビル」でビル内エレベーターと連動し、フロア内を移動する配送ロボットの実証実験を行う。増田社長は「今年度は配送ロボットとドローンを23年度以降の実用化候補地で現行制度に則した実証実験を行う。国が予定する航空法改正に基づく実験に積極的に取り組んでいく」と意欲を示した。
内部通報制度は「外部専門チームの客観性、公平性を確保する仕組みを導入し、1年が経過。より多くの社員から声が寄せられている」と報告した。
郵湧新報の「空き家みまもりサービスの自治体等への働き掛けや、マイナンバーカードで検討されていることは」には「郵便局データは自治体の防災活用が最優先。法律の枠組みの中でできることを協力させていただきたい。マイナカード普及率は現在約48%(会見時)。政府の新たな対応など状況を見ながら考えていきたい」と語った。