郵政の顧客データいよいよ活用へ

2021.10.21

 日本郵政グループが今後始める顧客データを活用した新事業の実施に向けて、総務省が顧客データの取り扱いの留意点をまとめたガイドライン作成に乗り出すことが分かった。月内にも総務省やデジタル庁、郵政幹部らで議論する検討会議を開催する。

総務省がガイドライン

 日本郵政グループが5月に発表した中期経営計画で、約2万4000の郵便局ネットワークというリアルの強みと、郵便局サービスのスマートフォンアプリ化など、リアルとデジタルを組み合わせた上で、地方自治体や他企業と連携して新サービスを提供する「共創プラットフォーム」戦略を掲げた。このプラットフォームの前提に、「グループ内のデータ基盤・データ活用」を明記。顧客情報を一元管理するデータ基盤を整備する方針を示している。
 一方、総務省も「デジタル時代における郵政事業の在り方に関する懇談会」の報告書で、現在はグループ各社で分散している顧客IDの一元化や共通顧客データベースを構築するなどのデータ活用の重要性を強調。取り組みとして、個人から預かったさまざまな情報を匿名化するなどして他企業に提供する「情報銀行」などが期待できるとしている。

 ただ、新規事業の基となる郵政グループの持つ個人データについて、総務省幹部は「細心の注意が必要で、どこまで使っていいデータなのかなど線引きをしっかりやる必要がある」と指摘する。虐待の被害者で居住実態を隠している人や住民票を移していない人の実際の住所も、郵便物を届けている郵便局は把握できるからだ。
 総務省はこうした点に配慮し、データを活用する範囲を利用者から許諾を得ることなどデータ管理のガイドラインを年度内にもまとめる。省内で検討会を開催し、自治体の持つデータの活用を検討しているデジタル庁の担当者や、日本郵便などのデータ活用やデジタル分野の担当者らで議論する方向だ。(フリージャーナリスト 大久保冨士鷹)