インタビュー 全国郵便局長会 向井則之理事

2023.03.19

 全国郵便局長会(末武晃会長)の向井則之理事(中国地方会副会長/広島戸坂新町)に、自治体等と連動したリアルな郵便局を生かした地方創生の取り組みなどを伺った。

郵便局に追い風、惜しみなきチャレンジを

 ――中国地方では、5月にG7広島サミットが開催されますね。
 向井理事 広島県内には平和公園や宮島など有名な世界遺産がある。市との包括連携協定の中に、観光客に郵便局が道案内をする「トラベルパル」という施策があり、そのステッカーを市内の全局に貼り出している。
 G7広島サミットの盛り上げ役の広島県民会議の山根健嗣事務総長と、トラベルパル等の活用などを含め「郵便局がお手伝いできること」を調整中だ。
 日本郵便本社もフレーム切手の発行を準備中のようだが、局長会では会場付近を清掃するクリーン作戦を計画中だ。
 広島駅南口に昨秋、「広島JPビルディング」が開業した。1階の「広島JPビル局」内にはデジタルサイネージもあり、総合コンサルティングサービスに向け、相談ブースも充実している。北口の「グラノード広島局」では、障がい者の方々が作ったおいしいパンを月に何度か販売し、好評だ。
 2025(令和7)年には市電が「広島駅ビル」2階に乗り入れる。駅とビルが結ばれ、人の流れも変わることで郵便局もさまざまな可能性が出てくる。局長会としても南北2局を起点に、まち全体がにぎわうアイデアを練っていきたい。

 ――リアルとデジタルが融合した郵便局の形とは。
 向井理事 例えば、長谷川英晴先生が参議院総務委員会でお話をされた「まちの保健室」とオンライン診療を組み合わせるなど、人がいるリアルな郵便局のぬくもりとデジタルの利便性を郵便局を起点に融合させ、さまざまな社会課題を解決できれば理想的だ。
 マイナンバーカード関連業務を含め、政府は今、社会課題の解決に向け郵便局を活用しようと環境整備に取り組んでいる。
 ほしいも事業のように収入源となる新規ビジネスを作り上げる絶好のチャンスだ。通常国会でマイナンバーカード交付事務の法改正が成立すれば、地域における郵便局の存在価値がさらに高まっていくと思う。
 ただし、環境が整ったとしても自らが惜しみなく努力を続けていかなければ物事は動かない。

 ――人材育成については。
 向井理事 人材育成は郵政事業の最たる命題。私が所属する広島呉地区会では、局長志望の皆さんを集め、「広呉アカデミー」で各種教材等を使用し、地域社会での局長職の役割や責任感、地域貢献の在り方等を学んでもらっている。新任局長のほか、部会長や採用10年目の局長研修も継続して取り組んでいる。

 ――専門委員会では何をご担当されていらっしゃいますか。
 向井理事 「総合政策」「地域貢献・地方創生」「置局・局舎」の三つを担当している。民営化により会社は損益重視の考え方を取り、地域貢献的な施策は止められてしまった。しかし、そのことで郵便局らしさを失い、お客さまを遠ざけてしまった。そういった過去を今一度振り返る必要がある転換期に差し掛かっていると思う。郵便局ネットワークの関係も損益ばかりに重きを置き過ぎると、郵便局の持ち味である公益性を失いかねない。
 デジタル化は時代の要請で遅れてはならないが、日本郵政グループの看板ともいえるリアルの郵便局を生かす観点で、郵便局ネットワークも、地方創生も、考えていくべきだ。
 郵便局を取り巻く環境は都市部、中山間地、離島などそれぞれの地域により全く異なるが、損益と公共性のバランス、住民の方々の利便性確保を最優先する自治体との連携、新ビジネスなどを今一度、原点の〝地域〟発で考えることだと思う。気付きやヒントは必ず地域の中にある。