公共サービス維持の仕組みを日本も国×郵政×地域で 郵政政策部会
柘植芳文総務副大臣は4月12日に行われた総務省情報通信審議会郵政政策部会(米山高生部会長)で、「フランスは国と企業(ラ・ポスト)が協調し、公共サービスを提供し続けられる仕組みを構築している。人口減少と超高齢化社会に直面する日本も地域を残すためにこうした形を考え、①国②日本郵政グループ③地域――の3者融合の仕組みをつくることが重要だ。新しい未来に向けた〝希望ある地域づくり〟に政府として寄与できれば、と思う」と展望した。
無償→「財源+α」で持続性を
地域貢献の価値=郵政事業の根幹
郵政政策部会では、横田純子委員(NPO法人素材広場理事長)から「(郵便局業務の)人件費を少し見直すなどで黒字化に近づけられる形を」との意見があり、米山部会長が「郵便局は住民の方々に無償で何かして差し上げるものが多いが、当然コストがかかっている。間に国が入る形で地域の方にも何かしていただくことはコストの問題だけでなく、郵便局ネットワークの価値向上のためには広い意味で重要な視点」と指摘。柘植総務副大臣はそれら意見を受け、デジタル社会が進む中で地域が取り残されないよう公共サービス維持の仕組みづくりを提案した。
柘植副大臣は「国と地域、日本郵政グループが調整しながら人口減少、超高齢化社会を乗り切らなければならない。総務省と日本郵政グループは密に将来の事業の進め方を検討する必要がある。特に過疎地の問題にスポットを当て、郵政事業がどういう形で使命を果たせるか、が今問われている」と強調。
また、「三事業はもとより、地域に根差し、地域に貢献し、地域の方々と協力しながら信頼を勝ち得た人(局長と社員)がいる局が全国約2万以上張り巡らされる〝強み〟のもと、郵政事業は151年継続できている。日本郵政グループが地域に貢献する今の形を保つ限りは事業を継続していけると期待感を持っている。しかし、委員の先生方から意見があったように、地域サービスを提供する際、民間企業として人件費や経費の問題もある。国の機関だった郵政省当時から郵便局は総合担務と呼ばれる制度のもとで1人が郵便・貯金・保険全てを担ってきた。今も基本は1人の社員が三事業を担う。本来は人件費が3倍かかる形を非常に効率的にこなしてくれている」と問題提起した。
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同日は国光あやの総務大臣政務官も出席する中、総務省郵政行政部の松田昇剛企画課長が「郵便局を活用したマイナンバーカードの取得促進」として、2022(令和4)年度に群馬県前橋市、熊本県八代市、三重県熊野市で行われた「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」の実証結果を報告。
「マイナカードとひも付ける市の交通系ICカードを前橋市内46局で販売した結果、1年間の販売枚数約3000枚を3カ月で達成。八代市の買い物支援サービスも局社員がタブレットに不慣れな方をサポートし、利用促進できた」ことを強調した。
総務省大臣官房の大村真一企画課長は「郵便局を活用した地方活性化方策検討PT」(キャップ=今川拓郎官房長)がまとめた方策を説明。また、「郵便局の持つ強みの〝信頼性〟について、地元に長くいて活躍される郵便局長が、近年は若干減ったとの声も議論の中であった」などと述べた。
ヒアリングでは、日本郵政の風祭亮執行役が日本郵政事業計画によるグループ企業価値向上の計画の数々を紹介するとともに「ゆうちょ銀行株式の一部売却により、今年度は受取配当金の減少を見込む」状況にも触れた。日本郵便の松岡星彦執行役員は日本郵便事業計画について「局窓口のデジタル化を徹底し、効率的な営業活動を可能にする環境整備により創出した資源を生かし、地域やお客さまニーズに応じたサービスを提供したい」と語った。
日本郵便の高橋文昭常務執行役員は「地域課題解決への自治体への働き掛けや受託業務を一層進めるために現場の声を聞き、〝財源〟含めた制度上の課題があった場合は総務省に相談し、連携して自治体の方々と一体感を持って地方活性化や地域貢献につながる取り組みを推進したい」と意欲を示した。