2022年3月期 第1四半期決算
日本郵政グループは8月11日、2022(令和4)年3月期第1四半期決算を発表した。
日本郵政G 市場環境の回復により純利益倍増
浅井常務執行役
グループ連結の経常収益は2兆8640億円(前年同期比2.5%増)。経常利益は2884億円(同116・5%増)。純利益は1597億円(同102・7%増)と前年同期から倍増し、増収増益。日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の利益がいずれも順調な滑り出しになったことを受け、グループ連結ベースの通期業績予想(当期純利益3400億円)の進捗率は47.0%となった。
日本郵政の浅井智範常務執行役(経理・財務部長)は「前年同期の新型コロナウイルス感染拡大に伴う不安定化した金融市場からの回復により、業績は改善した。ただし、デルタ株の感染拡大等、先行きの不透明感も強く、必ずしも楽観できる状況にないため、業績予想の修正は行わない」と語った。
日本郵便 純利益概ね2倍に
三田経理・財務部長
日本郵便の第1四半期決算は減収増益。営業収益は4月から始まった収益認識基準の適用に伴い、一部取引が総額ベースから純額ベースに変更となった影響等で、前年同期に比べて235億円減(2.5%減)となった。
営業費用は豪トール社のロジスティクス事業アジア部門における大口取り扱いが減少したことのほか、郵便・物流事業におけるコストコントロールの取り組み等により399億円減少。
郵便局窓口事業は減益となったが、国際物流事業と郵便・物流事業の増益で営業利益を368億円(同80.1%増)、経常利益を345億円(同79.9%増)生み出し、純利益は326 億円(同95.8%増)と前年同期比で概ね2倍の利益を計上した。
郵便・物流事業は減収増益。前年同期に目立った巣ごもり消費増の反動を受け、主力のゆうパック(ゆうパケット含む)が同13・8%減(ゆうパケットは22.7%減)となった。
一方、大口顧客が差し出しを開始したこと等で同2.6%増となったゆうメールや、引受再開に伴う国際郵便増で、郵便物総取扱数量は45億4900万通(同0.7%減)とほぼ横ばい。全体の減少幅を大きく縮め、コストコントロールとあわせて営業利益は203億円(同31・9%増)と増益となった。
郵便局窓口事業は減収減益。受託手数料が三事業で同52億円減少(保険手数料同29億円減、銀行手数料同16億円減、郵便手数料同6億円減)したが、銀行手数料と保険手数料は前年同期より減り幅は改善している。その他収益のうち、物販事業の収益が収益認識基準の適用により減少し、提携金融事業も20億円(同30.6%減)とやや苦戦気味。唯一、不動産事業が77億円(同6.3%増)と増収となったが、営業利益は113億円(同22.9%減)となった。
国際物流事業は減収増益。営業損益が前年同期比1億9300万豪㌦増となり、7700万豪㌦の黒字に転換した。
事業別の営業損益はロジスティクス事業(輸送・倉庫管理や資源・政府分野の物流等サービス)では大口取扱が減少したが、不採算の米国部門を閉鎖した影響もあり700万豪㌦増益、フォワーディング事業(貿易事務や輸送手配に付随して発生する専門業務)も貨物取扱量増と拠点統廃合で2500万豪㌦の増益(黒字転換)。エクスプレス事業(速達便や貨物輸送サービス)はサイバー攻撃に伴う取引激減解消を主因に赤字幅を9400万豪㌦改善した。
日本郵便の三田彰子経理・財務部長は「米国宛てEMS再開等も国際郵便の増収に影響した。国内の荷物は巣ごもり消費増の反動もあり厳しい状況だが、ゆうパケットポスト発送用シール促進や楽天グループとの連携等で、ゆうパック10億8000万個を目指していく」と強調した。
ゆうちょ銀行 市場の落ち着きにより増益
今井財務部長
ゆうちょ銀行の第1四半期決算は増収増益。連結粗利益は3991億円(前年同期比934億円増)を計上した。その大半を占める資金利益は、国内の低金利環境は続いているものの、外国証券利息の増加を主因に、3230億円(同1296億円増)となった。役務取引等利益は323億円(同4億円増)。単体の内訳は為替・決済関連手数料が211億円(同1億円増)、ATM関連手数料が52億円(同3億円増)。投資信託関連手数料はほぼ横ばい。販売額は453億円(同26億円減)だが、つみたてNISAの増加等で販売件数が101万2000件(同17万7000件増)となった。
つみたてNISA稼働口座数は6月末時に14万口座、通帳アプリ登録口座数は同じく6月末時に336万口座(3月末から52万口座増)となった。
単体の営業経費は2521億円(前年同期比2億円減)と、やや改善。新規採用の抑制に伴う社員数の減少を主因に、人件費は287億円(同5億円減)。連結業務純益は1461億円(同934億円増)、経常利益は1626億円(同1206億円増)となり、親会社株主純利益は1208億円(同875億円増)となった。ROE(企業の収益性判断の指標)は5.26%(同3.79%増)と改善した。
ゆうちょ銀行の今井健一財務部長は「外国証券利息の増加は、保有する投資信託に係る収益の増加による部分が大きい。前年同期は市場の混乱により、収益認識できない分配金が増加したが、今期は市場に落ち着きが見られるため、分配金の収益認識ができた。投資信託の販売については現段階でトレンドを判断するのは早い。販売件数の増加はつみたてNISAの増加によるもの」と述べた。
かんぽ生命 新契約にじわり動きが
北村主計部長
かんぽ生命の第1四半期決算は減収減益。4月にお客さまへの積極的なご提案を再開したことに伴い、新契約年換算保険料は個人保険が116億円(前年同期比93.0%増)、うち第三分野は4億円(同72.8%増)と動きが出てきたが、保有契約減少等に伴い、保険関係損益は減少したが、キャピタル損益の改善等により、連結経常利益を920億円(同31.6%増)確保した。
ただし、キャピタル損益は価格変動準備金と相殺されるため、連結四半期純利益は412億円(同11.8%減)を計上した。
5月に実施した自己株式の取得(3588億円)に伴う連結純資産の減少等により、EV(エンベディッド・バリュー=生命保険会社の企業価値を示す指標)は3兆7711億円(前期末比6.3%減)となった。
かんぽ生命は22年3月期の普通配当を1株当たり90円とし、中間・期末の2回を予定。25年度までの新中期経営計画期間は原則、減配を行わず、増配を目指していく。
かんぽ生命の北村嘉啓主計部長は「新契約年換算保険料は昨年度同期より増えたが、一昨年度同期の1割強の水準であり、依然厳しいという認識。ご契約内容確認を中心としたアフターフォローは順調に進んでいるが、この活動から具体的な提案につながっていないことが一因と考える。対応策として、満期を迎えたお客さまに対する丁寧なご意向確認、提案活動を着実に実施する。また、来年4月に向けて新たなかんぽ営業体制構築の準備を進め、10月から先行し、コンサルタントの保険専担化を予定している。こういった取り組みを通じて、営業活動全体を活性化させていきたい」と見解を示した。