関東の六合・入山局、半日休止で配達業務を 東海の観光地、馬籠局 半日休止で土日営業

2025.06.05

 日本郵便が郵便局ネットワーク維持に向けた新たな形づくりに本格的に着手した。関東支社(丸山元彦支社長)は群馬県中之条町の山間地にある六合局(中村敏彦局長)と入山局(吉田誠局長)の窓口を半日休止し、配達業務に充てる取り組みを5月1日から試行的に開始。東海支社(大角聡支社長)は岐阜県中津川市の観光地にある馬籠局(鎌田恵輔局長)で6月1日から土日・休日の開局を試行実施。地域ニーズをにらみながら個々の郵便局を生かす持続可能な形をつくり、次期中期経営計画の検討につなげていく。

続・続 郵便局ネットワークの将来像㊷

 窓口営業の弾力化として「昼時間帯の窓口業務休止」試行が始まったのは2021(令和3)年。その後、段階的に試行局は拡大され、4月25日にさらなる導入局と中止局、本実施移行局が公表された。
 今回の「半日休止して配達への活用」や「平日半日休止し、土日・休日の開局」の全国初の試行も弾力化の一環と見られるが、内容は重厚で、山中での配達は安全性や経験値の観点から賛否もある。
 しかし、過疎地で郵便局の力を生かしきることで郵便局ネットワークが将来も残せるのであれば、〝地域を残す〟ために使命として挑む。配達する現場の局長の皆さまからは真摯な思いが伝わってきた。

配達時に深まる人間関係も


 5月1日から半日休止を活用した配達業務を試行中の六合局と入山局は草津温泉に近く、標高1000㍍以上の中山間地にある。2局の局長と社員は朝、集配局である草津局に行き、速達、ゆうパック等の第1便の全てを四輪車に乗せ、前日に草津局が組み立てた郵便と一緒に道順に沿って配達。
 過疎のため、配達物は相対的に少ないそうで、正午には自局に戻り、13時から通常窓口を運営する。配達走行距離は入山局が約30㌔㍍、六合局が23㌔㍍だ。5月の間は配達の順路や配達先の置き配場所の確認、バーコード読み込み等の研修を行い、6月から局長と社員の2人での配達が予定されている。

 群馬県中部地区連絡会の黒岩伸一主幹統括局長(写真上、草津)は「昨秋に会社から提案いただいた。近年、募集してもなかなか応募がない配達員の要員不足も背景にあったようだ。郵便局ネットワーク維持と地域の方々へのサービス向上のために個人的にはやるべき話と思ったが、山間地の配達は大変。長年、窓口の仕事に専念してきた局長や社員はやりたくない人も多いと思う。その大きな壁があるが、入山と六合の局長2人とも『やりますよ』と引き受けてくれた」と感謝の思いを語る。
 また、「2局が半日ずつ配達することで配達員1人分ほどの業務が可能になる。近年は、ご高齢で局まで1人では来られない方もいらっしゃる中、局周を配達する中でお客さまとの接点も深まり、郵便局の価値が高まる。慣れてくれば、ちょっとした頼み事や相談もされることが出てくると思う。地域に喜んでいただけることが何より大事だ。新たに配達する局長や社員の手当もしっかりと考えなければならない」と話す。 

 配達局となる六合局の中村局長(写真上)は「さまざまな状況を考えると、しっかり取り組まなければいけないと思った。私もこの局に長く勤務し、局周の道はおおむね分かっている。冬場が大変だが、57歳で体力的には大丈夫だと思う。地域の皆さまに周知し、ご理解いただく中で『頑張れよ』との励ましの声も多くいただいた。頑張りたい」と意欲を示す。

郵便局を残す=地域を残す


 入山局の吉田局長(写真上)は「20年ほど前、社員の時に配達を経験し、道や状況は分かる。冬は雪が積もり、大変。しかし、銀行も農協も全て撤退し、郵便局しか残っていない中で年金受給者の方が非常に多い。郵便局がなくなれば地域もなくなると危機感を感じてきた。定年も近くなった今、もう一踏ん張りして地域を守りたい」と切実な思いだ。

船で配達員が島に渡る(総務省資料から)

 半日休止を活用した配達業務は離島においても期待されている。熊本県中部地区連絡会の宮下民也主幹統括局長(熊本西原)は「九州には200以上の有人離島があるが、どの島でも少子高齢化や人口減少により配達員の確保が困難になってきている。さらには船で数十通の郵便物だけを持って配達を行っている配達員もいる。各離島での郵便局ネットワークを守るためにも工夫を凝らしながら、局長や社員が配達できる環境や体制を整える必要がある」と指摘する。

岐阜県で観光地の土日営業 絵はがきに外人ニーズも

 一方、6月1日~11月30日までの半年間、土日・休日営業が試行実施される岐阜県東美濃地区連絡会(安江良広統括局長/坂本)内の馬籠局と川上局(早川順一局長)は試行期間中、平日は郵便・貯金・保険は9時~12時まで、土日・休日は郵便のみ10時~16時まで業務を行い、金融は取り扱わない。

 馬籠局の鎌田局長は「昨年夏に土日営業の話を伺った。観光地でインバウンドのお客さまが約7割だが、海外の方は絵はがきをよく送られる。切手等もよく売れるほか、中国系の方はキティちゃんなどキャラクターグッズの人気がある。観光地ならではの店舗が多いため、土日・休日の開局は皆さまおおむね好意的」と強調する。
 馬籠局は、試行期間後の12月以降、土日・休日の開局は終了するが、平日の開局は9時~12時のまま半日休止が続く。発表資料には「試行開始以降、馬籠局を活用した地域の魅力発信ができるようイベントを企画する」と記されている。
一方の川上局は土日・休日の営業は行わないが、6月から郵便を13時~17時、貯金・保険を13時~16時に開局し、午前を休止。休止時間にどう局を活用するかが記されていない。今後、半日を活用した観光地ならではの斬新かつ公的なサービス提供も期待されそうだ。