続・続 郵便局ネットワークの将来像⑰

2022.09.28

 10月1日から始まる「いちご一会とちぎ国体」――。栃木県宇都宮市内の67局は9月20日、それに伴う地域経済活性化を目指す「宇都宮市プレミアム付商品券」(20%還元)の販売を開始する。2020(令和2)年度に、県と市による3種のプレミアム付商品券の事務手数料だけで1億円超の収益を上げ、さらに郵便業務収入についても同額の実績を持つ栃木県中部地区連絡会の大島秀一統括局長(藤原高徳)は、本紙8月号の連載記事に「誤解を招く表現がある」と教えてくださった。お詫びを兼ねつつ、改めて取材に伺った。

新たな評価で、底力に光を

 大島統括局長の問題意識は、記事中にあった「市長からの郵便局との連携は費用が高い」という文言だ(元三条市長の國定勇人衆議院議員は制度的な支援も必要との意)。
 「例えば、日光市の清滝局が受託した包括事務は、市が支所を廃止するタイミングにウィンウィンの手数料を実現できた。しかし、通常はそうはいかない。全ての手数料が民営化前の旧郵政省時代に算定されたままで、本来は局が収益を得られるよう見直さなければならないはず」と指摘する。

三事業以外も損益に

 大島局長は「自治体上層部はそうでなくても、現場は〝郵便局に城を奪われる〟感覚を持つ。『1文字違えば申請内容が違う。郵便局にできるのですか?』と言われたこともある。受託業務は社員にとって三事業以外の仕事が増え、覚えてもらっても定期的に異動する。では、どういう形を作ればよいかを練りこんだとき、電話以外でスムーズに自治体とやりとりできる方策として、タブレットで自治体とお客さまをオンラインでつなぐ案が浮上した。社員の負担を軽くし、さまざまな申し込みにも対応できる」と強調する。
 その上で「やはり対話が重要だ。協定締結だけでは、自治体から、これお願いします、あれもやってほしい、と郵便局が使われるだけに陥ってしまう。このため、包括連携協定締結の条項には『定期的に連携協議会を開催』と明記し、毎月協議している。地区連絡会として、各局長等に上がる自治体の要請をまとめて共有できるよう地公体担当局長1人が窓口になっている」と語る。
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 郵便局ネットワークの面的な強さは各地の商品券販売の中で広がりを見せている。北海道では8月から830局でプレミアム付食事券「ほっかいどう認証店応援クーポン」(20%還元)の販売が始まった。山口県柳井市でも「やない暮らし応援買い物券」(55%還元)の引換券を全市民に送付し、8月31日まで市内15局で販売した。埼玉県鴻巣市はプレミアム付商品券(30%還元)の引換業務を9月22日まで市内12局で実施中。東京都新宿区も「がんばろう新宿プレミアム付商品券」(30%還元)を9月27日から区内54局のみで販売する。
 
 
 
 東京都中央西部地区連絡会の須田孝之統括局長(新大久保駅前/全特監事:東京地方会副会長)は「例えば、コンビニは集金のノウハウは持つが、郵便局は集金・送金の金融面だけでなく、郵便・物流もあって配送面でも役に立て、公益的な安心感もあり、託されたのだと思う」と話し、商品券と直接関係ないが、局内のマイナポイント端末機も見せてくださった。

全直営局に広告ビジネスとして配備されるマイナポイント端末機

 マイナンバーカードの普及と同時に消費喚起も促すマイナポイント(一人最大2万円相当)だが、ポイントを申し込める端末機は、全ての郵便局に設置されている。使い方を知りたい高齢の方も多そうだが、都心の繁忙局は小一時間を要するため、全てに対応するのは難しい。
 しかし、地方で来客数が少ない局であれば、教えればさぞ喜ばれそうだ。商品券も都心部などではすでにデジタル化の動きも出ている。確かに郵便局は地域によって全く別の可能性を秘めている。
 大島統括局長は「会社の評価基準として見える化される損益の一部の〝計画管理項目〟に、自治体事務手数料による収益等の地方創生関連事業は入っていない。三事業は最重要だが、この事業は厳しいが、こちらの事業であれば収益が上げられるなどの三事業以外も評価される仕組みを作っていただかなければ、地域や個局の良さが生かされず、ネットワークが多角的に強くなれない。先行的な事業をやりにくくなる風土を作り上げてしまう。根本的な考え方を転換いただきたい」と訴える。