インタビュー 全国郵便局長会 前野耕一理事(東京地方会会長/江東亀戸七)
個々の郵便局の可能性を引き出し、ニーズに応じた新しい形が模索されている。全国郵便局長会(末武晃会長)の前野耕一理事(東京地方会会長/江東亀戸七)は現場目線に即した柔軟で地域に喜ばれるネットワークの構築を目指している。
地域発の行動で〝安心拠点〟の砦を
――「選ばれる郵便局」になるために、どうすべきとお考えですか。
前野理事 全特専門委員会では「総合政策専門委員会」と「地域貢献・地方創生専門委員会」「人事制度・人材育成専門委員会の下の防犯PT」を担当させていただいているが、お客さまから「選ばれる郵便局」になるには、それら全てが大切だ。
都心部でも、地方創生施策の買い物支援やみまもりサービス等が、マンション、特にタワーマンションなどが増え、人間関係が希薄化したことでニーズが高まっている。
家庭内で修繕や困りごとが起きた時に、地元の信頼できる業者や士業(法律に基づいた専門資格の取得が必要な職業)の方が分からず、ネット上では悪徳業者にだまされた、チラシから依頼したら高額を支払わされたとのニュースをよく目にする。
郵便局はどのような相談でも「地域の安全」の架け橋となれる生活サポートの〝拠点〟になるべきだ。
――そのために何を変えるべきですか。
前野理事 地域内の住民の方々や企業等の声や状況は、やはり現場の局長がよく分かっている。現場の意見を聞いて新ビジネスに結び付ける専門部署を会社に創設いただきたい。
現在も、みまもりサービス等は個別に専門部署はあるが、担当者の方をある程度長い期間は交代させずに継続的に対処いただかなければ、成功に結び付かない。利益を得るには〝石の上にも三年〟との名言もある。
短期間で担当が替わるたび、方針がガラリと変わり、現場の意見と離れていくようでは最終的に滞ってしまう。昨年から全国展開となった郵便局の終活相談サービスである「郵便局の終活日和」も、6年前に江東区内41局で取り組んだ時は専門業者の選出もパンフレットも局長の意見やアイデアを反映したスタートだったが、現在、全面的に変わっており、ニーズがあっても広がらないジレンマも感じる。
会社の「JPビジョン2025+」でも地域性が重視されているが、全国画一的なやり方から脱皮できていない。「ふるさと小包」も各地域産品の中で「これならいける」と物販につなげたはずだが、地域活性化への貢献という主眼からずれて、収益額だけを重視しているように感じる。郵便局の存在価値を見つめ直す時だと思う。漁師が海を大事にするのと同じように、郵便局は地域を第一に考えなければ商売にならない。
――防犯も先駆的に取り組まれましたね。
前野理事 特殊詐欺の手口が複雑化する中、東京も江東区内局から警察署との協定をスタートしたが、全国でも多くの郵便局が警察と連携し、地域の安全な暮らしを支えている。常に局長同士が対話し、横のつながりを大切にして、「風通しの良い組織」をつくり上げることも重要だ。部会の皆で協力し合い、「地域の安心」を郵便局から発信していきたい。
――中堅・若手局長の方に伝えたいことは。
前野理事 多様な方々が集まり、ビジネスの主戦場でもある東京は何事も言い訳がしやすいが、局長としてやるべきことはやらなければならない。町会の新年会に行くと、役員の成り手がいないと80代の方々が嘆いている。保護司も民生委員もPTAも人が足りない。そうした部分にどんどん入ってほしい。東京は地域活動のチャンスはむしろ多い。
自局も部会も地域の方々を守り、幸せにする行動を意識し、外を歩けば近隣の方に「局長、元気?」と呼ばれる存在を目指してほしい。そのための肝は〝地域活動〟だ。地域清掃も、通学路で「おはよう、今日も元気でね」と声を掛ければ「おはようおじさん」になれる。そうしたことを継続するのはボランティアでなく、郵便局長の使命であり、〝全特魂〟だ。