光る!新ビジネスの芽 長谷川英晴議員を囲んで

2023.10.02

 各地域で郵便局長を主体とする新ビジネスが生まれようとしている。山形県鶴岡市で、ゆうパックを運ぶ軽四輪の空きスペースを活用する物流サービス、栃木ブランドイチゴの生産・販売等々。群馬県中部地区会(黒岩伸一会長/全特理事/草津)の石垣宏局長(前橋大友、写真㊧)と山形県庄内地区会(難波忠夫会長/羽前本郷)の東海林広典局長(北平田、同㊨)が、長谷川英晴参議院議員との「ザ・未来座」の中で現状を報告。長谷川議員は「地域から〝ありがとう〟と言われるようになることで局長と社員の皆さんは会社に誇りを持てる。それがウェルビーイングだ」と励ました。

ザ・未来座 郵便局長のトーク&インタビュー(上)
長谷川英晴議員を囲んで

 今、世界各地で自然災害や戦争、人口減少が襲い掛かる中、〝豊かさ〟や〝幸福度〟を測る指標がモノや資金の量だけでなく、目には見えない安心感なども判断に入れようとする人間回帰現象が起きている。時代の転換期に当たって郵政事業はどう道を切り開けばよいのか。東北地方会(三浦寿明会長/仙台岡田)の東海林局長と関東地方会(黒岩伸一会長/草津)の石垣局長に、自民党「日本ウェルビーイング計画推進特命委員会」事務局次長でもある長谷川参議院議員に「郵便局の将来像の在り方」や「局長魂を持った生きざま」などをインタビューしていただいた。

ウェルビーイングって?


 長谷川議員
 地域も、市町村も、職場も、学校も、全ての団体・組織が成長するには、そこにいる人の幸福を第一に考えなければ、本質的な成長はできないことに世界中が気付き始め、幸福度を測る指標として登場してきたのが「持続可能な成長」の鍵を握る〝ウェルビーイング〟だ。
 一般社団法人スマートシティ・インスティテュートのホームページには各自治体のウェルビーイング指数がグラフで示され、観光や教育、防災などテーマ別で町や村、市区町村ごとに見ることができる。地域行政の強みや弱みを幸福度から見た状況で把握することは、地域に根差す郵便局にとって大切なことだ。

 石垣局長 幸福度を上げるために、育児や介護と仕事の両立、障がい者雇用の促進等々ありますが、会社はきれいな言葉が先走って、実が後からついていってないようにも感じます。
 3万人削減に向かう中、多くの郵便局が人員不足の中で局長も社員も踏ん張っています。現場の局長を含めて社員が幸せになれる環境になっていない課題を解決しなければ、ウェルビーイングには結び付けられないと思いますが。

ESなくしてCSなし!チャレンジに魂を

 長谷川議員 日本郵便の千田哲也社長は社員向けメッセージ「社長通信」第1号で「ES(従業員満足度)なくしてCS(顧客満足度)なし!」を打ち出され、「社員の皆さんが仕事に満足して幸せになって初めて、お客さまに素晴らしいサービスを提供できる」と明言した。
 かんぽの募集問題を受けた処分、人員削減の中、局長が懸命に取り組む地域貢献事業を採算が合わないとストップをかける文化を変えていこうと発信された、と私は受け止めた。
 改正郵政民営化法では明確に郵便局の〝地域性〟〝公益性〟がうたわれ、「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(山口俊一会長)でも経営陣に多くの先生方が問いただしている。私も政治の立場から、法律の趣旨に沿った経営がなされているか、法制度は今のままで大丈夫かを検証しなければいけない。
 現場の局長は「ESなくしてCSなし」の方向に支社も含めて向かっているかを見極め、もし、異なる方向を感じた時には「社長の理念と違う」と意見すべきだろう。個局、部会、地区会、地方会、全特というおのおのの立場から堂々と発言していただきたい。

人間回帰、地域貢献の先に〝お客さま〟


 東海林局長
 ウェルビーイングは国がやろうとしているデジタル田園都市国家構想と、どのように関わって、その中で郵便局としてはどんな役割が担えるとお考えですか。

 長谷川議員 岸田内閣の「新しい資本主義」という大テーマを実現するための国家戦略が「デジタル田園都市国家構想総合戦略」だが、その中で今、郵便局の存在が非常にクローズアップされている。
 先の通常国会の参議院本会議でデジ田構想の質問が出た際、岸田総理は愛媛県宇和島市のオンライン診療に係る郵便局の取り組みをデジ田構想の成功事例として挙げられ、「横展開が大事」とおっしゃった。国家構想の成功事例として郵便局の取り組みを挙げられたことなど、かつて聞いたことがない。
 国の期待に対し、局長を中心に郵便局が地域のために「よし、頑張ろう」と取り組んだ結果、住民の方々が幸せを感じられるようになればデジ田構想と合致し、まさにウェルビーイングだ。
 しかし、国家構想に則し、郵便局が地域に貢献しようとしても、会社の理解が得られず、結果的に何もしない、チャレンジしない文化がまん延することは最悪だと考える。

 石垣局長 郵便局ができることはもっともっとたくさんあると思います。ストップでなく、より後押しいただける会社になっていただきたいです。

 長谷川議員 千田社長が有言実行され、「一緒にやろう。失敗したら骨は拾う」という経営になれば、現場に〝夢〟も湧いてくる。
全てに成功は無理だが、チャレンジを後押しする企業風土になっていくことが「ESなくしてCSなし」の意味するところ。現場での新ビジネスの状況を教えてほしい。

 東海林局長 検討中のものですが、ゆうパックを積んだ軽四輪の空きスペースを活用した配達サービスを、庄内地区会は山形県鶴岡市と協議しています。
おそらく全国の中でも先駆け的な取り組みで、遠方への配達はできないですが、市内の物流の新しい形になっていくと思います。

 長谷川議員 訳ありの地元農産品を農家の方々に局に持ってきてもらい、赤車の空きスペースを活用して自治体の指定場所に集約し、業者の方が買いに行く仕組みと聞いているが、衝撃を受けた。
 多くの地域で買い物支援が試行されてきたが、ゆうパックに限らず他の宅配も通常料金でやろうとすると配送料が高く、採算が合わない。しかし、常時集荷で回る車が通常ルートで拾うのであればさまざまに応用できそうだ。
 自宅までは届けられないが、近くの郵便局に取りに行く形や、災害時に水や食料の補給にも使える。小単位の物流の仕組みを変えることで、郵便局や配達の価値が上がる。

 石垣局長 新ビジネスといえば、局長の思いが全て詰まったほしいも事業の第2を生み出そうと、関東内でも各地域が挑んでいますが、特に栃木県ではイチゴ事業を立ち上げようと懸命に取り組まれています。

 長谷川議員 栃木のイチゴも素晴らしい取り組みで、頑張っていただきたい。加工品ではないため、ほしいも事業とはまた別のスキームだが、地域事情によって違って当然。郵便局が自治体や生産者の方と連携する形はさまざまあってよい。
 ほしいもは郵便局が工場で加工し、付加価値を付けて自前商品としてカタログだけでなく、窓口でも売れることが大きなポイントになる。栃木ブランドのイチゴも雪国マンゴーでも、地域と経営にプラスになるのであれば、どんどん進めていただきたい。形になるまでは多方面から横やりが入って諦めるケースが多いが、それではもったいない。
 新ビジネスは、全てがもうけられなくても構わないと思う。地域貢献的な企業価値向上の取り組みと経営に資する取り組みは別枠で考え、地域から「ありがとう」と言われるようになることで、局長と社員の皆さんは会社に誇りを持てる。それがウェルビーイングだ。(続く)