インタビュー 全国郵便局長会 黒岩伸一理事(関東地方会会長/草津)

2024.03.01

 全国郵便局長会(末武晃会長)の黒岩伸一理事(関東地方会会長/草津)が課題に挙げているのは人員減。郵便局の根幹とは、どこにあるのだろうか。

〝井戸端会議〟ができるような局に

 ――全特役員による各地区会との意見交換会が活発ですね。
 黒岩理事 まずは「令和6年能登半島地震」のお見舞いを申し上げたい。
 意見交換会は末武晃全特会長の提案でスタートし、5年間かけて全地区会を回り切る予定。私も新潟、兵庫、広島に行ってきた。風通しの良い組織づくりのため、本当に良い施策だと思う。上からの説明や指導だけでなく、会員たちが意見を言える場が増えれば、組織の活性化につながる。
 関東地方会でも、役員が各地区会を回って現場の声に耳を傾けている。関東版「未来を考えるミーティング」も昨年度から開催し、会員から提案のあった防災士フォローアップ研修や、中堅・若手会員と支社社員との意見交換会が実現できた。

 ――全特の専門委員会のご担当は。
 黒岩理事 総合政策と置局・局舎、集配センターマネジメント統合(主任理事)を担当している。私の草津局も集配局で、要員は配達物数や配達箇所数、配達距離などで決められるが、片道1時間かかる所に時間指定の小包が1個出れば、それだけで1人が往復2時間取られる。現場でなければ分からないことはさまざまあり、計算通りにはいかない。時には誤配もある。クレームをいただくこともある。集配局のご苦労を肌身で感じている。
 2名局が増え、社員さんが局長になると、その穴埋めもできない。入社数年で辞めてしまう社員もいる。DXよりも要員減ばかりが先行していると感じる。銀行などは、タッチパネルだけ窓口に置いた無人受付が増えてきたが、郵便局はそうはいかない。人がいてこそ成り立つものだ。地域の最後の砦として、局で井戸端会議ができるような〝安心の拠点〟の役割があると思う。

 ――改正郵政民営化法の見直しの動きについて思われることは。
 黒岩理事 どんな田舎でも、同じように金融サービスが受けられ、郵便が届くことが一番大事なことだ。経済合理性だけで局を減らすようなことがあってはならない。ユニバーサルサービスの質の低下など国民が不利益を被ることのないよう、国の財政関与を視野に入れた検討を願う。「郵便局は日本国と共にあり。郵便局は国民と共にあり」との思いだ。

 ――自治体などとの連携が関東地方会内でも加速しています。
 黒岩理事 包括連携協定は281市町村中275市町村と締結した(約98%、昨年9月末時点)。包括事務受託は茨城県の大子町と石岡市、栃木県日光市、千葉県富津市から受託。日光市ではタブレット端末を窓口に設置し、テレビ電話方式で行政相談を実施している。
 神奈川県横浜市では新型コロナワクチン接種予約受付業務を302局で実施し、福祉パス交付事務も受託。山梨県内201局では物価高騰対策緊急生活支援金の申請書受け付け、神奈川県川崎市では高齢者特別乗車証発行業務、同小田原市と山梨県都留市では証明書交付事務を取り扱ってきた。
 JR東日本との連携による〝駅一体局〟では、千葉県江見駅局を皮切りに、千葉県安房勝山駅(24年夏ごろ)、栃木県蒲須坂駅(25年春ごろ)でも開局予定。千葉県睦沢町と連携した「ほしいも事業」は4期目となり、ふるさと小包での販売は全国に拡大した。

 ――人材育成で心掛けていることは。
 黒岩理事 大事なことは「コミュニケーション」だ。同一認識で一生懸命に取り組めば結果も出せる。実力を出せないまま局長人生が過ぎていくのは本当にもったいないことだと思う。会員たちの意見を聞き、一緒に考えていくことを真剣に取り組んでいきたい。