新春インタビュー 武部繁樹関東支社長

2022.01.20

 大都市部から山間地まであらゆる地域が存在する関東支社は、実証実験でもモデルケースになることが多い。武部繁樹支社長は「『共創プラットフォーム』は、地域のニーズを郵便局がどう汲み取れるかにかかっている。お客さまから満足される価値やサービスを提供できるかに尽きる」と指摘する。一方、「社員の思いを聞いてあげ、苦労を察してアドバイスし、実現してあげられる役目を局長の皆さんは担う。大変なミッション。日々の小さなことでも成功体験の後押しをお願いしたい」と話す。

〝共創〟でお客さま満足価値を

 ――改めてご感想やご抱負を。
 武部支社長 就任後しばらくはコロナまん延の中で、感染リスクが高い業務が多い中、窓口業務、集配業務をはじめ、三事業他さまざまな仕事に懸命に取り組んだ社員の皆さんには感謝しかない。
 郵便局の仕事は多岐にわたる。昨秋から土曜休配や保険専担化など会社の大きな変化もあった。支社は現場が不安感を持たないようにやり方や知識を分かりやすく示し、サポートしていけるか、が勝負だ。
 本社と支社との交流人事も進められているが、郵便局の実態やキャパシティーを理解いただくためにも自らのテリトリーを超え、現場を見て互いの立場を知ることが風通しの良い職場づくりには欠かせない。
 私も支社長になって地方の2名局の実態を知ることができたが、とても大切なことだ。今後も、日本郵便本社だけでなく、日本郵政とも人事交流をしていくことが重要となる。

 ――新しい営業体制に向けては。
 武部支社長 JP改革実行委員会からも相応程度評価いただき、信頼回復からお客さまとの信頼関係をさらに強化する時期に来ている。お客さまのご意向を聞き取り、ライフプランを確認して、設計書を作り、重要事項を説明して契約するまでには多くのプロセスがある。自信が持てる研修も必須。
 社員がどのようなペースでお客さまと出会ってどの段階で何を説明したかを管理者が把握し、的確なアドバイスをしていけるよう全体で進めなければいけない。数字のみを追い求める手法はこれまでの轍を踏んでしまう。解決策の引き出しを管理者が持てるよう支社の支援体制を整え、対応できるようにしたい。

 ――支社の権限を高めた方が良いのですか。
 武部支社長 フロントラインに近い支社がさまざまな企画を考え、地方や地域により異なる事情がある点では、地域性は重要。一方で、ユニバーサルサービスを担う郵便局は全国のお客さまが隔たりなく安心できるサービスを提供する使命を持つため、骨太部分は本社で決めて、それを根本に地域ニーズを汲み取る部分の権限を支社に落としてもらう形が良いかもしれない。
 支社は企画的な仕事は慣れていないため、本社企画部門の方に実地を見てもらったり、支社の人間が本社に行ったりなど、知識や経験、発想力をすり合わせながら進む必要があると思う。

聞く力で成功体験の後押し願う

 ――自治体との包括連携は全国で4番目に進んでいるようですが。
 武部支社長 自治体の方々から郵便局が信頼され、拠点価値を認識いただいていることは非常にありがたい。中期経営計画「JPビジョン2025」の「共創プラットフォーム」も、地域のニーズを郵便局がどう汲み取れるかにかかっている。
 栃木県清滝局は日光市の包括事務受託で、局内のタブレット端末のテレビ電話機能を通じて住民の方が市の職員と直接やりとりできる取り組みを8月に全国で初めてスタートした。包括事務受託は茨城県大子町や石岡市が先行しているが、多くの自治体と行政手続だけでなく、広い視野で郵便局にできることを相談したい。
 行政サービスの一部受託やフードバンク活動も各地に広がってきた。自治体や企業の方々の手が届きにくい部分に郵便局の代替サービスはたくさんの可能性を秘めている。地域の産物を郵便局で産業化できた千葉県睦沢町のほしいも事業は、道の駅で販売し、ふるさと納税返礼品にもしている。駅と一体型郵便局として千葉県江見駅局も注目されている。

 ――ファミリーマート様の店舗が局内に設置されたり、EV急速充電器を常備したりする局もできました。
 武部支社長 大規模な埼玉県川越西局の無人決済店舗、小規模な茨城県柴崎局では陳列棚を設置することにより、ファミリーマート様との共創が始まった。過疎地などの買い物では非常に役に立てるモデルケースだと思う。
 知恵を出し合って、それぞれが何をできるか、をすり合わせた「共創プラットフォーム」も、どれだけお客さまから満足される価値やサービスを提供できるか。そして、郵便局が収益を得て、双方にメリットがある形にしていく必要がある。
 カーボンニュートラル化に向けた急速充電器は、栃木県小山局に設置され、車両のEV化はもとより、社会全体が脱炭素に向かう中、住民の方々のEV化を郵便局が手伝える。EVは〝動く蓄電池〟だから、防災拠点の郵便局価値も高まる。また、電気を作るのに化石燃料でなく、太陽光を活用する点でも真の意味でのカーボンニュートラルだ。

 ――人材育成はどのようなことを進められていらっしゃいますか。
 武部支社長 フロントラインから管理者まで誰もが不安なく仕事ができるよう階層別研修を支社として先行実施している。さらに当然のことながら、投資信託やさまざまな提携金融商品を窓口社員も自信を持って滞りなく提供できるための研修も行っている。
 また、研修に限らず、若手社員が将来は重責を担うことを意識し、どれだけ今の自分を高められるかを意識することも大事だ。自ら考えたアイデア、小さなことであれば局等の飾り付けなどを含めて管理者に提案し、具現化することで満足度を高める成功体験を積み上げてあげることが育成だと思っている。

 ――現場の局長の方々に期待されることはありますか。
 武部支社長 結果はもちろん大事であるが、プロセスを丁寧に踏んでお客さまの信頼を得ていくことが基盤となる。社員がステップアップに苦労しているようならアドバイスしてあげ、一歩上がるごとに「あ、ここまで行けた」と成長を促す成功体験の後押しをお願いしたい。
 社員が働きやすいと思わなければ、お客さま対応のモチベーションも下がる。気持ちと知識の両面が大切だが、特に意識面は局長の皆さんの関与が大きい。明るく振る舞える支援の一つは風通しの良い職場づくり。
 思いを聞いてあげ、苦労を察してアドバイスし、やりたいことを実現してあげられる役目を局長の皆さんは担っている。大変なミッションだが、その部分の努力を願いたい。
 また、地域の核としての郵便局ネットワークを最大限に活用し、創業以来培ってきた地域からの信頼を基に、ユニバーサルサービスを提供しつつ、地域を支えていただきたい。