続・続 郵便局ネットワークの将来像⑯

2022.08.21

 人口減少、デジタル化と波は軒並み押し寄せるが、人と人をつなぐのが郵便局の仕事だとすると、手段が紙だろうとデジタルであろうと、〝心〟をつなぐ仕事の本質は変わらないはず。1年前から自治体の包括事務を受託し、窓口に自治体と直につながる相談用タブレットを設置した栃木県清滝局では、来客者が増えているようだ。もちろん包括事務を受託できたことが大きいが、さらなる魅力は「+デジタル」で人とつながる〝相談サービス〟にあるのかもしれない。

「+デジタル」で〝来客〟を増やす

 「お客さまは増え、新しいお客さまも取り込んでいる。さまざまな手続きができるだけでなく、タブレットを通じて局窓口から役所に直接相談もできる。間口は徐々に広がった。自治体の出先機関が近隣にない郵便局に広がるとよいと思う」。清滝局の小倉浩史局長はこう語る。

 昨年8月、日光市の包括事務受託を開始したのが関東支社(茂木孝之支社長)管内の清滝局。29業務の一つ、「タブレット端末を活用した案内業務」は来客者が局から申し込めば市本庁舎の担当者が各部署とつながり、郵便局にいながら遠い役所に直接相談できる。タブレットで地銀とつながる局窓口はあったが、自治体につなげ、何でも相談できる形は全国初。相談は月に数件だそうだが、小倉局長は来客者増を実感している。
 今年6月末時点で、市町村の包括事務を全国43局が受託しているが、清滝局のケースは1年が経過した今も全国で唯一だという。

脱!殿様商売

 7月14日に報道向け内覧会のあった「みらいの郵便局」の「リモートブース」のキーワードは〝相談〟。ブースは将来的には来客者が入る想定で作られているが、現時点は、例えば、昼休みに大手町局(白髭竜平局長)に来客し、「保険の話を聞きたいが時間がない」場合などに「後日リモートで受け付けられます」と案内し、予約時間に自宅等からPCやスマホ、タブレットでのZoom相談を受け付ける。
 日本郵政DX推進室の岡田彬嗣マネジャーは「将来は金融相談だけでなく、士業や健康など専門家への相談も局に行けば申し込めるようにしたい。検証し、理想形が決まった段階で他局に広げる。投資信託は紹介局に相談に来られても、近隣の取扱局までお客さまに出向いてもらわなければならなかったが、将来はどの郵便局からもリモート相談につなげられるようにする。現状、局の営業時間内のみ対応するが、ゆくゆくは土日や時間外も検討したい」と展望した。
 記者会見では「デジタルが苦手な方たちが使い方を覚える〝入り口〟に郵便局がなれませんか? 全国津々浦々にリアルな拠点を展開されている。もっと身近で、もっと敷居低く、かつ郵便局でタブレットや端末を触りながら少しずつ慣れていくような場にできそうに思えますが」と物流専門誌の方が問い掛けた。
 JPデジタルの飯田恭久社長は「そのアイデアいただきたい! タブレットの使い方を一部の局で教えているが、広げることで郵便局がもっとお客さまのために役立てることもある」と顔をほころばせた。
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 包括連携協定は43同府県、1328市町村と結ばれ、自治体との共創も着実に広がった。しかし、元新潟県三条市長の國定勇人衆議院議員は以前、「半公共機関、準公共機関として郵便局の存在価値は今後ますます高まる。ただし、乗り越えなければいけない壁は、市町村の業務を郵便局に委託する際の委託料が高過ぎることだ。自前でやった方が安い状態になってしまっている」と話していた。
 自治体だけでなく、いくつかの企業の方からも「郵便局との連携は高い」との声も耳にした。
 小さな共創でも日本中に多く築くことで、大きな共創プラットフォームが立ち上げられるとすると、敷居を低く積み上げることも大切かもしれない。