協業サービスのプラットフォームに② 保険評論家・保険アナリスト 山野井良民氏

2022.04.08

 今後、日本郵政グループでは、かんぽ生命と郵便局窓口で区分けし、それぞれの顧客適性にマッチしたマーケティングが展開されるものと思われるが、例えば経営者向け保険の販売先の職域には必ず社員=個人のお客さまがいることを考えれば、支社と当該地域の郵便局との密な連携は必須要件となる。

局長と社員の声、経営に反映を

 民間生保会社の事例では、主にホールセールスを行う大同生命と、その職域個人に対してリテールセールスを行う太陽生命が形成するT&Dグループの関係性が好事例となろう。
 郵便局は通信・物流、金融サービスをもって国民生活を支える重要なインフラで、端的には国民の財産といっていい。民間企業としての郵便局が目指すべき発展の道筋は、郵政グループ内外の資源を幅広く相互活用し、公的・民間サービスを含め、郵便局の強みの公益性を確保しながら利用者ニーズと費用対効果の両面で考量し、協業によるサービスミックスのプラットフォームとして、その事業領域を可能な限り拡大し、多様なサービスをもって地域のお客さまの暮らしを支えていくことがミッション(使命)である。こうした発展プロセスを通じて、個々の郵便局の経営を拡充強化することが必要だ。
 民営化の法的スキームはそれとして、すでに郵政グループは民間企業であり、どこの企業もそうであるように、地域のお客さまニーズに最優先で目を向け、現場でお客さまの声を聴き、その暮らしに寄り添って活動している郵便局長と局員の声をボトムアップで経営に反映していく社内風土の醸成が肝要だ。お客さまのためにやれることは何でもやるという局長、局員の強い思いが基本になる。
 お客さまは国の株式保有割合をにらんで郵便局を選択しているわけではない。身近に便利な郵便局があるから利用しているだけだ。郵便局のお客さま満足を満たすための自由化にブレーキとなるような法的規制は廃止するか、速やかに緩和することだ。
 郵政公社時代かその前だったか、東京郵政局、東北郵政局などの職員研修で「保険業法改正と生損保相互参入」について講演した当時、主婦層主体の45万もの生保営業職員や、それこそ郵便ポストの数より多かった損保代理店の姿を見慣れた私にとって、目の前の若い郵便局職員のクオリティーの高さに、しばし見とれたことを思い出す。