協業サービスのプラットフォームに ① 保険評論家・保険アナリスト 山野井良民氏

2022.03.09

 保険評論家・保険アナリストとして、長きにわたり保険業界を見つめてきた山野井良民氏。中期経営計画「JPビジョン2025」では「お客さまと地域を支える共創プラットフォーム」を目指す日本郵政グループ、郵便局の今とこれからの課題をどう見ているのだろうか。伺った内容を数回に分けて紹介させていただく。

四半世紀のハンディ、乗り越えよ

 かんぽ生命は募集問題を経て、新契約募集を長期間停止しながらも広範な改善取り組みを集中的に行ったことは率直に評価したい。お客さま本位の業務運営を行う新体制が整備されたと思う。
 新規業務が認可制から届出制に移行し、ようやく商品・サービスの自由化の緒に就いた。民営化法上の制約があるとはいえ、他の民間保険会社は1996(平成8)年4月の保険業法改正で届出制が導入されたのだから、四半世紀遅れたハンディを負っている。かんぽ生命は多様な利用者ニーズに応え得る新商品を攻めの姿勢で品ぞろえすべきだ。
 方法は二つある。一つは、かんぽ生命自社新商品の開発に注力すること。当面、郵便局のお客さまの要望が強い第三分野商品で他生保に追い付き、追い越すつもりで新商品開発を進めることだ。
 死亡保障と医療保障の必要額を設定する自由度を高めつつ、手厚い医療保障を提供できるよう医療特約の改定等について届出を行ったが、高齢化社会の中で医療・介護保険分野の充実こそ郵便局の扱う保険として「公益性にマッチ」している。
 また、収益を重視する民間企業として、自社商品開発すればよいものでもないし、法的な制約もなお残る。二つ目は新商品開発における費用対効果と即効性の面で、他の保険会社による業界内調整論的なアレルギーを払拭するためにも、他の保険会社とのウィンウィンの関係性、協業関係を重視し、業務事務の代理代行による受託販売にも積極的に取り組む姿勢が望ましい。
 国内生保・外資系・損保系生保のバランスを取りながら、他生保の法人向け商品を直営支社で受託販売する届出を行ったことは評価に値する。

 2001(平成13)年、保険業法・同施行規則改正により、民間銀行における保険の窓口販売が行われるようになったが、当初、生保業界は主力の営業職員チャネルを守るために表向きは反対論一色だった。
 しかし、内実はどの生保会社も欧米のバンカシュアランス=保険窓販の急速な進展ぶりに大きな関心を寄せ、商機を伺っていた。日本郵政グループの伝統的な簡保・郵貯のサービスミックスを羨望視していたことも事実。
 改正法施行後、生保会社はさほど間を置かずに銀行窓販の受け皿となる子保険会社や窓販専任営業担当社員体制を立ち上げ、今では資産形成用の保険から第三分野の保険まで含め窓販商品が年々拡大している。
 主力の営業職員体制が縮小の一途をたどり、募集代理店の統合も進む中で、今や銀行窓販なしに生保会社の経営は成り立たないといっても過言ではない。
 一方、銀行側もゼロ金利、マイナス金利下での保険販売による収益拡大は大きなメリットで、双方ウィンウィン協業関係が確立している。こうした他社との協業、すなわち代理業ビジネスは商品やシステムの開発コストがかからない。収益拡大が必須の民間企業として、かんぽ生命も郵便局も大いに活用すべきだろう。