UPU第4回臨時大会議、サウジアラビアで開催

2023.12.09

 UPU(万国郵便連合)第4回臨時大会議は10月5日、サウジアラビアのリヤドでUPU諮問委員会(指定された郵便事業者ではない関係企業等で構成:ACSLや東芝等も参加)の機能強化や、WPSPs(幅広い郵便部門関係者)との連携の検討等を採択し、閉幕した。「開放」をテーマに時代に即したUPU組織改革に向けて、世界で成長し続けるEコマース分野にUPUが深く関わり、主導できる体制を整える。また、インフレの中でもUPUのプロジェクトが滞らないよう、年次経費の上限額の1.6%引き上げを決定した。

越境Eコマース分野を主導できる体制へ


 目時政彦事務局長(写真上㊨)就任以来初となる大舞台となった臨時大会議は、UPUの組織と国際郵便制度の改革を目的に、10月1日~5日に開催。リモートを含めて約160カ国・地域から約1200名が参加する中、日本からは総務省の竹内芳明総務審議官(同㊧)や青木勇司国際企画室長など6名、日本郵便の浅見加奈子執行役員(写真下の右から2人目)など7名が出席した。

 審議で決定したのは、①組織改革:「諮問委員会」の機能強化(UPU一般規則の改正)②製品・サービス:他の民間事業者(WPSPs)との連携方法の検討(決議)③年次経費の上限額引き上げ(一般規則の改正)④国際郵便サービスの見直し:義務的サービスと任意的サービスの取り扱い(条約の改正)――の主に4点。
 これら決定の背景には、ネット社会等を受けた世界的な郵便取扱量の減少と越境Eコマースの急拡大による国際物流市場の国際郵便の位置付け等、時代の大きな変化がある。
 これまでの国際郵便は、ある国の郵便事業者が集荷して配達国の郵便事業者が配達する形が通例だったが、今後は例えば、Fedex等の国際宅配事業者が集荷したものを日本郵便等の郵便事業者が配達する事例もあり得るため、対応する議論を開始する。
 民間企業等が参加するUPU諮問委員会には限られた権限しか与えられてこなかったが、権限や機能を強化し、幅広い郵便関係者とUPUの関わりを拡大することで、UPUの活性化を目指す。郵便のビジネスチャンス拡大に当たっては、郵便事業体とWPSPsが連携するモデル案を複数検討することとし、モデル契約書を策定するなどして連携を促進する。

諮問委員会機能と関係企業との連携を強化

 一方、世界的なインフレの影響をUPUも受ける中でも必要な活動費を確保するために、次期UPU大会議までの2024(令和6)年~25年の年次経費の上限額を1.6%引き上げる。このほか、①同一の受取人に宛てた複数の印刷物をまとめることで割安となる「M郵袋」(30㌔㌘まで)サービスは今後、義務から合意国間のみで取り扱う任意に変更②「書留」は書類だけに絞り、対物品は廃止③「追跡」は物品を入れた通常郵便物は義務化④「受取通知」は今後、書留と保険付の通常郵便物に限定し、対小包は廃止――の4点について、25~26年から施行する。
 4日の「UPU戦略サミット」におけるステートメントでは、竹内総務審議官がUPUに対する日本の支援を紹介し、関連民間企業を交えてデジタル関連企業の取り組みを共有する特別な会合の開催を提案した。
 5日の「郵便業務品質水準表彰式」では、オーストリア、フランス、ドイツ、日本、スイスの5カ国が最優秀賞を受賞。UPU保有の郵便物追跡情報や各国の前年データから、①品質②国際的なネットワークの接続性③郵便・物流・金融等の全体的な競争力④危機時の適応能力――を評価する「郵便業務発展総合指数」に基づき、日本郵便も世界最高水準と認定された(写真下)。

 総務省郵政行政部国際企画室の青木室長は「総体的に、越境Eコマース市場が拡大している時代に即す形で、国際郵便サービスに関する細やかな変更が承認された。各国の分担金に影響するUPU年次経費の上限額の引き上げが採択できたのは、各国からの目時事務局長への信頼が厚い証しで、大きな成果だ」と語っている。