新春インタビュー JPデジタル 飯田恭久CEO

2023.01.19

 時代が急速にデジタル化に進む中、「みらいの郵便局」の実現に向けて、日本郵政グループは今、グループ一体の基盤づくりを進めている。JPデジタルの飯田恭久CEOは「郵便局IDとして統一化を図り、活用し、事業展開にもつなげていく。日本郵便も、ゆうちょ銀行も、かんぽ生命も途切れなくつながる設計を作る」と話す。また、「キーワードは『地域のお客さまのためになるサービス』だ。どれだけデジタルが進んでも〝人〟が必要」と強調する。

グループ一体の郵便局IDを

 ――「みらいの郵便局」のアイデア募集の結果はどうなりましたか。
 飯田CEO 「どのような郵便局にしていきたいか」と投げか掛けて、アイデアを募集したのだが、本社や各支社、フロントラインの局長や社員、パートナー社員やアソシエイト社員の方々から1400を超えるアイデアが集まった。郵便局に深い思いを持つ方がこれほど多く存在することに気づ付かされ、素晴らしい企業グループだと思った。
 都心の繁忙局から、あるいは地方の局からのものもあり、アイデアの中身はまさに多種多様。例えば、コンビニエンスストアは店舗の形が決まっているが、郵便局は外観も中もそれぞれ手作りで工夫されて個性がある。多様性こそ郵便局の魅力だ。
 複数のアイデアを出してくれた方もおり、55名58作品を入賞として選定し、表彰式を昨年11月に行った。どのアイデアも全て素晴らしいものだったが、内容の優劣ではなく、優先的に具現化したいアイデアを日本郵政の増田寬也社長、日本郵便の衣川和秀社長、ゆうちょ銀行の池田憲人社長、かんぽ生命の千田哲也社長に、社長賞として4作品を選んでいただいた。
 授賞式の前に入賞者をグループ分けし、ディスカッションを行った。一つ一つのテーブルを回りながら話を伺う中で、お一人お一人のパワーあふれる熱い思いを生で聞き、感動で胸が打たれた。

 ――結局、「みらいの郵便局」のイメージとは。

 飯田CEO 「みらいの郵便局」と言いうと、先進的なシステマティックなイメージを持たれたりするが、固定的な姿があるわけでなく、郵便局がユニバーサルサービスを担う限り、時代の変化に合わせながら未来永劫に続くものだ。
 20年前にスマートフォンはほぼ存在していなかったが、今やほとんどの方が持ち、若い世代はスマホがなければ一日の生活も成り立たない。となると、スマホに合わせたサービスも提供しなければならない。
 例えば、「スマートねんが」もその一つ。年賀状は極めて大切な文化であって、私もお世話になった方や友人に紙の年賀状を贈送る。しかし、スマホ世代の眼(まなこ)から見ると、LINEでスマホから年賀状を受け取るほう方が便利と感じる方もいる。
 デジタル技術の進化に連動する生活変化に応じたサービス展開をしなければ、郵便局は時代から取り残されてしまう。その意味で「みらいの郵便局」とは、常に先を見据え、創造し続けていくスローガンとして命名した。

 ――具現化する根底にあるものとスケジュール感を教えてください。

 飯田CEO 一足飛びにはいかない。日本郵政グループ中期経営計画「JPビジョン」の2025(令和7)年までは先を見据えた基盤(プラットフォーム)づくりだ。現状、各社単体の公式アプリは九つあるが、今はグループのプラットフォームになるべく、スマホアプリを開発中。
 お客さまはプラットフォームアプリに入れば、自宅や外にいても郵便局の各種サービスを受けられる形だが、第一歩は郵便局で最も利用度の高い「送る・受け取る」サービスになる。
 現状、グループで統一したお客さまの顧客基盤は整備されていないが、郵便局IDとして統一化を図り、活用し、事業展開にもつなげていく。お客さまは一つのIDを持っていただくことで、例えば、たくさん申込書に書かなくても、スマホでQRコードから読み取れば一度で済むような基盤のプラットフォームを25年までに整える。
 25、26、27~2030(令和12)年と徐々に機能を強化し、日本郵便も、ゆうちょ銀行も、かんぽ生命もどんどん途切れなくつながるよう設計を作る。プラットフォームの上に既存サービスを進化させたものや新しいサービスを乗せ、お役に立てるサービスを積み重ねながら展開していく。
 キーワードは「地域のお客さまのためになるサービス」。完全無人化の郵便局を作ることは技術的には難しい話ではないが、郵便局は働く局長や社員がさまざまなサービスを提供し、お客さまの生活や人生のお手伝いをするところに価値がある。特に高齢者の方はスマホをかざして全て完結するのは難しい。
 どれだけデジタルが進んでも、〝人〟は必要。デジタル担当の私が「人、人」と強調するのはおかしいかもしれないが、デジタルをよく知る人ほど、実は〝人〟が必要だと思っている。