現場局長から初ヒアリング 郵政政策部会

2023.03.13

 総務省情報通信審議会郵政政策部会(米山高生部会長)は2月20日、7月めどの答申に向けて、現場と政策に齟齬(そご)がないよう愛媛県宇和島市内の清家裕二局長(宇和海)にヒアリングを行った。同日は日本郵便の役員・部長計3名からもヒアリングを実施。郵政政策部会が現場の局長にヒアリングを行ったのは2009(平成21)年の発足(「デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方」は昨年10月から)以来、初めて(全国郵便局長会へのヒアリングは実施したことがある)。

自主運営組織の総務役を郵便局に
共創イメージは〝小さな拠点〟 郵政政策部会

 柘植芳文総務副大臣、国光あやの政務官も出席する中、清家局長は「局長になって20年たつが、地方の衰退を肌で感じる。政府の〝小さな拠点〟のような地域の自主的な運営組織を作り、自治を進めることが必要だが、事務局機能の仕組みがない。郵便局が一足飛びに中核を担うのは難しいが、住民の方々、自治体、企業、NPOと連携し、事務局的な役割を郵便局が果たせないかを皆で検討中。実績を積み重ね、信頼を得て担うことだと思う」と提案した。

オンラインで参加する柘植副大臣(総務省HPから)

 冒頭、部会長に再任された米山部会長は「十分な審議を重ね、日本の将来に責任ある報告書を作成できるよう重責を果たしていきたい」と改めて決意を表明。総務省郵政行政部の松田昇剛企画課長が「本日は〝生の声〟をお聞きしようと、日本郵便の郵便・物流部門担当の五味儀裕執行役員、愛媛県宇和島市内の清家裕二局長(宇和海)、日本郵便地方創生推進部の山田協部長、日本郵便事業共創部担当の砂山直輝執行役員(日本郵政執行役/事業共創部担当)に話していただく」と4人を紹介した。
 五味執行役員は「防災の身近な拠点として郵便局を生かしたい。東京都品川区では子会社の物流倉庫を活用し、防災物品を在庫管理していると聞く。エリマネ局長の皆さんも防災士含めて防災分野の知見を蓄えられている。配達ネットワーク機能と合わせて防災での地域貢献を考えたい。静岡県熱海市の土砂災害では、住所確認が自治体の課題だった。新鮮な原簿情報を保有する郵便局が個人情報に留意した上で役立てる」と強調した。

(総務省HPから)
 清家局長は「地方では主力の一次産業の活性化が重要だが、相場は技術事業者に価格決定権が委ねられ、利益率が低く不安定な経営。魅力ある食材があっても会計処理や税務申告、労働環境の整備も難しく、個人向け販売の許認可や食品表示法、商品化後のマーケティングから決済まで小規模事業者が行うのは難しい」と指摘。
 「企業や商工会議所、自治体等との連携を通じ、郵便局が共創プラットフォームとして経営支援や販売支援を行えたらと思う。良いものを安く、では、大手に勝てない。地域全体がそうした商品を応援する仕組みと取りまとめ役が必要だ。コンサルの方々と同じ形でなく、カタログ販売や物流送金決済、ダイレクトメール等々郵便局の持つ経営資源を使ってウィンウィンにできるよう、局に常駐する局長や社員を地域全体の総務として活用いただきたい」と語った。
 山田部長は「住宅・土地統計調査では、1988(昭和63)年~2018(平成30)年の20年間に空き家が1.5倍に増えた。都市部の方が地方の家を見に行くのが難しい場合等、全国ネットワークを持つ郵便局が応えようと『空き家のみまもりサービス』を来年1月末まで試行実施中。住宅破損や不審者侵入がないか、空き家付近の局社員が検証し、写真付き報告書をお客さまにメールで報告。深刻化する社会問題に貢献したい」と説明。
 砂山執行役員は「『オープンイノベーションプログラム』をリニューアルし、『郵便・物流』のみならず、『地方創生』『みらいの郵便局』もテーマに加え、革新的な技術やノウハウを持つスタートアップ企業を募集している。DXを活用し、局窓口における三事業にとどまらないサービス、郵便局の地域密着性を生かした教育・医療・福祉等の社会課題の解決につなげたい。ブルームアクト社とは金融商品オンライン相談サービスを開始した」と報告した。