社説

2025.03.11

 郵便局窓口における、ゆうちょ銀行の各種手数料加算が始まって、早いもので3年が経過した。硬貨預払手数料等のように他金融機関も取り扱う手数料はやむを得ないが、郵便局ならではの郵便振替加入者負担のように以前、局窓口で振り込めば無料だったものなども一斉に110円の手数料がかかるようになった(現在は廃止)。

議論は今!ブランドは〝郵便局〟

 窓口ではなくATMを使用すれば無料なので影響はないと見込まれたかもしれないが、郵便局の利用は特に地方ではご高齢の方が多い。
 「えっ、手数料を取るようになったの?」と問われると、局社員の方は「コンビニでしたら無料ですよ」と伝えざるを得ない。24時間、土日も開いているコンビニが近くにある郵便局は大打撃を受けた。
 その結果、平均2割以上、来局者の方が減ってしまった。それにより、社員1人が削られ、さらに非常勤社員も1人削られていく負のパラダイムシフトが始まった。
 日本郵政グループの4社体制は、郵便局に大きな影響を及ぼす金融手数料も日本郵便との深い協議なしに、ゆうちょ銀行に決められてしまう。
 昨年の春闘では日本郵政、日本郵便、かんぽ生命の3社の一時金は月給の4.3カ月分、ゆうちょ銀行だけ4.4カ月分と決まった。運用も好調で素晴らしいことだが、その資金の大元は郵便局で集められたものだ。
 グループ一体は保たれていると経営陣の方々は言われるが、本当にそう言える状況なのだろうか。
 もう一つ、郵政グループは不思議な構造もはらんでいる。日本郵政のホームページによると、ユニバーサルサービスを担うが故に、収益構造上どうしても赤字になりやすい日本郵便が、日本郵政に年間約58億円の「ブランド使用料」を払っているようだ。ゆうちょ銀行は44億円、かんぽ生命も約20億円を日本郵政に払っている。
 ブランドとは「郵便局」に違いない。それなのに、赤字の日本郵便から日本郵政に払っていることは矛盾を感じざるを得ない。
 郵政関連法見直しの中で、先送りも検討される3社体制――。しかし、今、決めたとしても、時間のかかることだ。うやむやにしてしまうのではなく、公平な協議を今しなければ〝時〟を失う。
 体制を変えることは自らの立場がなくなる方も出てくる。それはさぞかし、悔しく、つらいことだと理解できる。だが、そこは前島密翁の精神に立ち返り、「郵便局」というブランドを輝かせる一番の在り方を考えていただきたい。
 世界も今「株主至上主義」から「ステークホルダー資本主義」へ向かっている。郵便局の場合、ステークホルダーの大半が来局者の皆さまだ。
 デジタル化が進んでも、「お客さま本位」が郵便局の個性であり、強み。未来を抜本改革できる法改正が望まれている。