続・続 郵便局ネットワークの将来像㉛
NTTのように地域別の分社化でなく、一つの郵便局を業務別に分社化してしまった民営化による遠心力。その弊害を食い止め、持続可能な社会の基盤として貢献する郵便局ネットワークを目指す改正郵政民営化法見直し法案が、成案への議論に突入した。肝は、公的サービスの定義付けと国の財政措置。郵便局の準公的機関としての立ち位置も必要になるが、実現の先には、日本郵政グループが描くぬくもりある「共創プラットフォーム」が各地域に芽生える姿も想像できる。
郵便局がある=地域を残す
「農協や地域公共交通等の公的基盤の拠点は少なくなっている。郵便局に公的な最後の砦になってもらう制度整備が必要。三事業提供に公共含む公的サービスを加える『郵便局の公的基盤の位置付けを法的に担保する』」と、12月20日の郵活連役員会で、国定勇人議連事務局次長が法案の主旨を、こう説明した。
役員会では、郵便料金値上げ後の予測のみならず、郵便局ネットワーク維持交付金・拠出金制度の支援だけでは足りなくなった経営の現況も試算として明らかにされた。
世界基準に
古屋圭司議連副会長は「ユニバーサルサービスを津々浦々で提供するのが郵政事業。山口俊一議連会長が言われたように、公的な支援を法的に担保する必要がある。郵便は世界中がそうだ。グローバルスタンダードで公的助成のたたき台を創ろう」と意欲を示した。
城内実議連副幹事長も「郵便局ネットワークは公共財。ドイツは民営化して大失敗し、郵便局を復活させた。おそらく補助金が出ているが、地方の局はパンや野菜も販売している。中山間地は、そうせざるを得ない」と指摘した。
柘植芳文議連事務局長も「10年前の日本とは社会が大きく変化し、取り残される地域が増えてきた。公的サービスは自治体業務だけではない。医療も防災も生活に直結するさまざまな分野で今、郵便局に期待が持たれている。定義付けが必要だ。ドイツもフランスも国がある程度関与し、財政的に援助している。日本も制度づくりが重要」と訴えた。
公的サービスの明確化
「公的サービスの明確化」も役員共通の意見だった。
宮下一郎議連常任幹事は「郵便局が公的サービスを担う形は自治体が今、進めるガバメントクラウドへの移行との連動が必須。システム面と法的手続きを含めて、デジタル行政を局窓口でできる仕組みを考えるべきだ。過疎地や離島の買い物支援は郵便局にコンビニ事業もやってもらい、郵便局があれば、その地に暮らし続けられる機能を強めるべき」と言及した。
長谷川英晴議連オブザーバーは「例えば、自社商品を積極的に使うような愛社精神が郵政内では低下している。公的サービスを明確にし、地域に貢献する仕事で喜ばれ、生きがいが伝播していく形づくりが大事だ。防災においても避難所局や備蓄局がある。できることは、まだまだたくさんある」と強調。見直し法案には長谷川議員が国会質問した「基金の設置」も盛り込まれている。
役員会では、公的サービスで想定される中身として、昨年3月に総務省の「郵便局を活用した地方活性化方策検討PT」(キャップ=竹村晃一官房長/当時は今川拓郎前官房長)がまとめた①約2万4000の局窓口②人材③局舎スペース④配達ネットワーク⑤ビッグデータ――をイメージとして提示。
自治体事務、地域交通施策、消防団、集落支援員、行政相談委員との連携、災害時の緊急避難所や備蓄、緊急時のデータ活用、買い物支援、サロンやワーキングスペース等々さまざまあるが、「地域住民から顔の見える関係を形成し、信頼が得られる個々の〝人材力〟に着目した取り組みを推進」とも明記されている。公的サービスを担うための、あらゆる連携の形は、まさに共創プラットフォームだ。
中谷元議連常任幹事は「地元に店舗もガソリンスタンドもなくなった。集落活動センター等のサービス拠点としても、郵便局に地域を維持してもらいたい」と期待を寄せた。
坂本哲志常任幹事も「中山間地の農業は非常に厳しい。人口も減少し、集落も消滅。郵便局がその地にあるかないかでは大きな違いがある」と語った。