生きる!地域と 宮城県の防災力
東日本大震災からの復興の歩みを力強く進める宮城県で、郵便局の防災施策が展開されている。仙台北部地区会(内ヶ崎慎会長/富谷日吉台)宮多賀部会(黒川幸久部会長/汐見台)は震災遺族の思いを受け、保育所等の避難訓練のサポートを実施。宮城県南部地区連絡会(大沼芳則統括局長/柴田)は㈱にしき食品(菊池洋会長兼社長)と連携し、東北6県約1900局で〝防災食〟にもなるレトルト食品を販売。「防災標語コンクール」も開催し、防災意識を高める機会を創出している。
園児の安全へ 局長会が避難訓練支援
10月11日に多賀城市の認定こども園「つむぎ野」(渡邉玲子園長)で行われた避難訓練には、深谷晃祐市長や市職員、保護者、ボランティアの方々が参加。大規模地震により大津波警報が発表されたとの想定で実施され、避難誘導の先発隊や最後に見送るのも局長たちが務め、訓練を支えた。
利府局の小熊陽一局長(写真上の右から2人目)は「2021(令和3)年から開始し、塩釜市や七ヶ浜町も含めて延べ10回近く実施した。一番大事なのは事前の打ち合わせ。参加者は何人か、避難経路の状況や連携はどうか、園児の安全確保に向けたシミュレーションをして本番に臨んでいる」と強調する。
市危機管理課の加藤雄一副主幹(写真上の中央)は「災害時にどこが危なくて、どこに避難すればいいのか一番よく知っているのは局長さんたち。さまざま助言をいただき、毎回とても勉強になる」と信頼を寄せる。
渡邉園長(写真下)は「子どもたちが〝地域の方々に守られている。助けてもらえる〟と肌で感じられる機会になった。防災士でもある局長さんは身近にいて頼りになる存在」とほほ笑む。
この避難訓練は、震災時に幼稚園バスが津波にのまれ、娘さんを亡くされた母親の思いを受けて始まったもの。発起人でもある(一社)Bird’s-eyeの菅原淳一代表理事は「当初、小熊局長に相談したところ、局長の皆さんが防災士だと伺い、大変心強く思った。今後も共に活動を進めたい」と期待を寄せ、宮城県東部地区会(今野毅会長/石巻立町)も協力し、今後は神奈川県西北地区会(細谷勝利会長/相模原古淵)とも連携して計画するなど広がりを見せている。
深谷市長(写真上)は「震災の折、悲しいことがたくさんあった。救えた命があったかもしれない。その思いを次の世代につなげようと真剣に取り組まれている局長の方々は本当にありがたい」と敬意を表した。
東北1900局防災食販売、防災標語も
にしき食品との連携施策では、岩沼市内の全小学生約2500人に同社からレトルト食品2パック、宮城県南部地区からも鉛筆が贈られた。施策を中心で進めた大沼統括局長は「防災施策を通して、子どもたちに備えの大切さを知ってもらいたい」と意欲を示す。
震災から12年がたち、「3.11」を知らない世代が増える中、当時の教訓を伝え、〝子どもの命を守ることは未来を守ること〟と奮闘する局長たちや郵便局への共感の輪は大きく広がっている。