インタビュー 全国郵便局長会 末武晃会長

2023.07.20

 全国郵便局長会(末武晃会長/萩越ケ浜)は6月18日、結成70周年記念総会を初めて沖縄の地で開催した。改選期の今年は退任に伴い役員人事が大きく入れ替わったが、末武晃会長は再任された。ネット社会が進む中、動かずとも遠方の人と瞬時につながる一方で、近隣が時間をかけて深くつながり、支えた地域は人口減少と相まって崩れかけている。地域の総合的な守り手としての拠点的な役割が郵便局に期待される昨今だ。末武会長は「果たしていかなければならない使命に思いを馳せた。必要な役割を果たせるように、法制度の見直し等も視野に入れた検討をお願いしたい」と語る。

郵便局存続が地域社会の生命線

 ――会長のご就任おめでとうございます。再任後の改めてのご抱負をお聞かせください。
 末武会長 全特は11月に結成70周年を迎える。その記念総会ということで、先月、昨年に本土復帰50年を迎えた沖縄の地で初めての通常総会を開催した。2020(令和2)年以降、コロナ禍のために通常総会は参加者を総会構成員に限定していたが、先月の沖縄総会はコロナの感染防止に配慮しつつ、1000名を超える傍聴者も参加し、来賓の方々もお招きする本来の形で開催することができた。
 沖縄本島での開催に当たって準備等で沖縄地方会(伊志嶺豊和会長/宮平)には、さぞ苦労を掛けたと思うが、無事に開催できたことにまずは感謝申し上げたい。
 総会会場の沖縄アリーナで、1600名もの参加者を目にした時、改めて全特が持つパワーを全身で感じるとともに、私たちが果たしていかなければならない役割、使命に思いを馳せ、熱くなったことを覚えている。
 全特が持つ力を郵政事業や地域の発展のため、最大限発揮するためには、会員とのコミュニケーションを一層深化させ、会員同士が何でも話し合える「風通しの良い組織づくり」により、これまで以上に組織力を強化していく必要がある。これからの1年、全特役員と心を一つにして、全力で取り組んでいきたい。

 ――全特は地域社会の維持、発展に向けた活動を推進してこられましたが、今後の展開をどのように進めるお考えですか。
 末武会長 これまで全特は地域貢献活動を全国で展開してきたが、国が進める地方創生の取り組みも併せて実施するように、2016(平成28)年度からは、従来から設けていた地域貢献専門委員会を地域貢献・地方創生専門委員会に改組し、取り組んできた。
 まず、地域社会が求める地方創生施策を学ぼうと、自治体関係者や有識者等を招いた「地方創生セミナー」を全国で開催した。
 また、地域振興につながる新規事業の開発、展開に向け、将来構想PTや中堅・若手代表者小委員会といった専門委員会の枠組みも活用しながら検討を続けている。
 今後も、地域社会の維持・発展、そして地域にお住まいの方々の利便向上に向けた取り組みを展開する。自治体との包括連携協定を踏まえた行政事務の包括受託の推進として、昨年12月23日に閣議決定された「デジタル田園都市国家構想総合戦略」では、全国に展開する郵便局の利活用がうたわれ、マイナンバーカードの普及や利用機会の拡大が明記されている。郵便局に対する期待の表れだと理解し、組織を挙げ積極的に推進していきたい。
 なんといっても地域社会の存続が郵便局の生命線だ。このことを肝に銘じ、精いっぱい取り組んでいきたい。

 ――近年、豪雨災害等が頻発しています。全特は、会員による防災士資格取得に取り組まれていらっしゃいますが、資格をどう活用すべきでしょうか。
 末武会長 2003(平成15)年に誕生した防災士は、現在、全国で25万人と承知している。全国各地で「自助(自分の命は自分で守る)」「共助(地域で助け合い、被害拡大を防ぐ)」「協働(市民、企業、自治体等が協力して活動)」の基本理念の下、活動を続けている。
 全特は、防災士制度の趣旨、目的を十分理解した上で、会員による防災士資格の取得に力を入れてきた。その結果、現在、全国で1万2000人以上の会員が防災士資格を取得している。
 近年、全国各地で豪雨、台風、地震等の災害が頻発し、その復旧には大変な労力が必要となる上、多くの尊い人命が失われている。
 災害そのものを防ぐことは容易ではないが、事前に危険箇所を把握し、安全な避難経路による避難訓練の実施、また、災害発生後の復旧・復興に向けたボランティア活動や物資の調達・運搬活動にも、防災士が有する知見や人的ネットワークは、とても有益だと考えている。
 地域ごとに求められる役割は異なるため、防災士資格を有する会員の皆さまには、地域の自主防災組織の一員として、ぜひ積極的に自治体や自治会等と調整され、協力の上で必要な活動を行っていただきたい。地域社会の維持、発展を願う全特として積極的に取り組んでいきたい。

現状直視し、役割果たす制度見直しを

 ――郵政民営化から間もなく16年、改正郵政民営化法施行から11年たちます。見直しが必要だなどの声も耳にしますが。
 末武会長 地域社会の維持・発展のためには日本郵政グループの健全な経営の下、全国津々浦々に設置される郵便局ネットワークを活用し、お客さまが求める商品やサービス等を安定的に提供していく必要がある。
 また、少子高齢化や過疎化が急激に進む中で、商店や金融機関、JAやガソリンスタンド、学校や市町村役場の支所までが、地域から撤退していく状況にある。そのような中で、郵便局は地域社会の最後の砦となるものとして存在しなければならない。
 今まで郵政改革という名の下、郵政事業、郵便局は政治によって大きく型を変えられてきた。郵政民営化の際に「郵政を民営化すれば、バラ色の社会になる」といわれてきたが、現状は真逆だと感じている。
 政治には郵便局の現状を直視していただき、郵便局が健全な状況で、それぞれの地域で、地域に必要な役割をしっかりと果たせるよう、制度見直しなども視野に入れた検討を切にお願いしたい。