インタビュー 全国郵便局長会 宮下民也理事
郵便局ネットワークの価値ある将来像に向けて地域創生・地方創生に懸命に取り組む姿を全国郵便局長会(末武晃会長/萩越ケ浜)の全特将来構想PT座長の宮下民也理事(九州地方会会長/熊本西原)に伺った。
お年寄りに優しいアプリを
――熊本県八代市内21局でタブレット端末の買い物支援が総務省の実証実験として始まりました。
宮下理事 私の母は宮崎市の郊外に住んでいるが、小売業や商店がほぼ撤退し、年を取った母は車を手放し、たまに訪れる移動販売車で食料品等を購入している。郵便局が最後の砦として残る不便な地域だ。郵便局は配達スキームも持つため、買い物支援ができれば暮らしやすくなるとの思いがあった。以前、熊本県山都町でもローソンと連携し、買い物支援を行ったが、紙で注文するスタイルはそれほど広がらなかった。
利便性の観点からはタブレット注文がベスト。ただし、タブレット操作に慣れていない高齢の方は家庭にあるテレビ等で双方向通信ができれば一層使い勝手が良い。
――「リアル×デジタル」の理想的な近未来とは。
宮下理事 デジタル端末の活用が鍵を握る。90歳を超す私の父は孫に教わりながらスマートフォンを使っているが、操作を教えてくれる家族が近くにいないご高齢の方はスマホに触ろうともしない。コロナ接種を病院窓口で申し込まれた高齢のご婦人が事務員から「ネット予約が簡単ですよ」と言われて困惑されていた。
押し寄せるデジタル化の波に〝援助の手〟が必須だ。デジタル庁は「デジタル推進委員」や「デジタル推進よびかけ員」の制度を作っているが、全国津々浦々にある郵便局の局長や社員がその役割を果たしていくべきだと思う。
高齢の方々の楽しみといえばテレビ。それぞれに合ったポータルサイト的なテレビ画面にできると良い。地域情報やマイナポータル、好きな番組等がテレビで完結し、スマホやタブレットと融合する〝テレビアプリ〟が作れたら理想的だ。双方向通信も、買い物支援も可能で、バーチャル郵便局から情報も入手できる。リアルな郵便局の相談予約等ができれば、なお良いだろう。
――マイナンバーカード普及に向けて。
宮下理事 少子高齢化の課題を吹き飛ばす肝は「定年制廃止」と「マイナカードの普及」と言われているが、諸外国も少子高齢化に突入する中、日本は一足先に危機を乗り越えるモデルを作る役目もあると思う。カード取得の手続きは最後に自治体に出向いてカードを受け取る面倒な部分を近くの郵便局で完結できれば利便性が高まり、普及に拍車がかかる。
民間システムの統合も進むといわれるが、マイナカード普及後の社会の在り方を政府はもっとPRすべきで、郵便局がそのお手伝いとマイナカードの活用にもっと協力できることを願っている。
――港と局舎の一体計画もあるようですね。
宮下理事 奄美群島の加計呂麻島の新しいフェリー乗り場へ郵便局を移転できないか検討中と聞く。役場や公共的な場所と郵便局の一体化は地域の利便性向上に必ず役に立つ。
――今夏の豪雨で宮崎県なども大きな被害を受けられました。
宮下理事 宮崎県北部地区会(岡田寿美会長/延岡島野浦)の被災地の郵便局を私もお見舞いした。本流に注ぐ支流の氾濫だったが、実は何回も浸水被害を受けた局ばかり。今後の局舎設置は防災・浸水マップを反映させる必要があると強く感じた。
同地区は陸上自衛隊西部方面音楽隊の防災コンサートを実施し、コンサート中に会場の電気を消灯させ、暗闇の中で避難誘導する訓練も行っている。地域への啓発活動や訓練は大事だ。今回の水害でも局長の日頃の地域活動が生かされた。多くの局長が防災士資格を持っているが、常に資格のアップデートを図っておけば災害時に大きな力を発揮できる。