インタビュー 日本郵政グループ女子陸上部 髙橋昌彦監督③

2022.11.20

 ――どのような人材が、伸びしろがあると見ていらっしゃいますか。
 髙橋監督 気力や、やる気、気持ちの余裕度等を見ている。会話や目の輝き方、前のめりになってもどんどん自ら走り、練習する積極性のある選手に伸びしろを感じる。そうした選手の採用を意識し、その上ですぐに活躍できなかったとしても長い目で見ることが必要だ。

やる気こそが〝伸びしろ〟

 今、キャプテンの太田琴菜は今年5年目だが、入部後3年は故障の連続で試合に出られず、3年目に「周りがどんどん伸びる中で3年間も走れない選手がチームにいていいのだろうか」と言ってきた。
 コツコツと努力を重ねていたのを知っていた私は「やる気があるなら一緒に頑張っていこう」と話したのだが、今年3月の名古屋ウィメンズマラソンに出場し、自己記録を出して8位に入賞。来年10月予定のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で、次のパリオリンピックの選考会での出場権を獲得する結果を出してくれた。5000㍍も好成績で、クイーンズ駅伝も5区を走ってくれた。
 太田の高校の後輩で同じ5期生の樽本知夏も伸び悩む中で励まし続けたが、今春に「もう無理だ」と言ってきた。「もうちょっと頑張ってみない」と話したところ、7月になって3000㍍の自己記録を出した。樽本は5年目、太田は4年目で一番良いパフォーマンスが出ている。
 長い目で「誰一人取り残さない」姿勢を持って選手たちと向き合う〝待つ〟大切さを学ばせてもらった。何十万人の社員が働くグループの社員と管理職の方の関係もおそらく同じで、成長を信じ、声を掛けてもらって顔や名前を覚えてくれたとなれば、頑張ってみよう、となるのだと思う。

日本郵政グループは「コミュニケーション企業」

 ――女子陸上部はグループの希望で、局長の方々のファンも多いです。
 髙橋監督 地域に根差す約2万4000局の拠点を日々支えてくださっているのが局長の皆さん。郵便局、日本郵政グループは表向きは三事業を中心とする「サービス企業」の位置付けだが、「コミュニケーション企業」「創造企業」と言い換えてもふさわしいと思える。
 手紙は人の心をつなぐ超アナログのコミュニケーション。デジタル化で減るのは致し方ないが、一層必要であり、尊重されていくべきだ。日本郵政グループはもっと「つなぐプライド」を持ってよい。
 スポーツの世界も実は超アナログ。人がコミュニケーションを取らなければチームワークは生まれないし、人々が集まらないと競技会は開けない。かんぽ生命のラジオ体操もさまざまな地域で根強く受け継がれているが、郵便局は地域の子どもたちの育成や人生100年時代の健康づくりにもっと貢献できる。
 郵湧新報に掲載された中国郵政のコーヒーショップも、コミュニケーションを潤滑にする場の提供だが、スポーツだけではなくて、将棋が上手だったり、お華や茶道が上手だったりする方などグループ内は多彩な人材の宝庫。
局長の方々にそうした人材をどんどん引っ張り上げていただき、日本郵政グループ女子陸上部も一緒に地域のコミュニケーションを支えることができれば、新しいビジネスにつながることもあり得るし、地域の中で郵便局の拠点価値を一層高められる。