インタビュー 全国郵便局長会 宮川大介理事

2022.02.15

 価値ある郵便局ネットワークの将来像に向けて、さまざまな主体と懸命に〝共創〟し、地域創生に取り組む姿を全国郵便局長会(末武晃会長)の宮川大介理事(四国地方会会長/土佐山田神母ノ木)に伺った。

買い物可能な〝ホットステーション〟を

 ――自治体との連携状況をお教えください。
 宮川理事 四国での自治体との包括連携協定は、昨年12月末時点で進捗率56・8%と順調に進んでいる。近く、さらに5~6自治体と締結できる見通しだ。一方、自治体事務の料金体系の見直しが行われる中で、証明書交付事務の委託を継続される自治体と、そうではない自治体が出てくる。
 地域の方々から必要とされる郵便局であるためには、証明書交付事務にとどまらず、お客さまのさらなる利便向上につながる包括事務受託は非常に重要。郵便局の日頃の活動を生かし、長期的な視点で粘り強く取り組まなければならない。一人一人がアイデアをさらに絞り出し、実行に移していけるようにしたい。
 一昨年、高知県安田町が庁舎を建て直す際に、郵便局に入居してほしいと要請があり、昨年移転し開局した。町長は「郵便局が入ってくれたので、住民の方はワンストップで〝相続〟などの相談もできる」と喜んでおられた。近年、地方では支所の統合等が進み、四国の郵便局でも自治体の建物内に入れさせてもらう事例も出ている。

 ――ゆうちょ料金改定もありましたが、デジタルが進む中で郵便局ネットワークの将来にとって、大切なこととは。
 宮川理事 世の中の変化が急速に進む中でデジタル化の取り組みは重要で、時代に即した流れとはいえ、お客さま離れも心配される。郵便局を選んでいただける環境づくりに向け、これまで以上に皆で知恵を出し合いたい。
 地方にはデジタル化についていけない方も多い。デジタル社会だからこそ、お客さまと直に接している〝リアルな郵便局〟に力を入れるべきだ。高知県香美市内の郵便局(2局)が私立図書館と連携し、窓口ロビーで展開する「おでかけ図書館」は花や植物も飾られ、お目当ての本を見つけたお客さまとの会話も弾むようだ。
 また、高知県日高村が進めるスマホを活用した行政サービスの提供を支援するために始まった〝スマホ駆け込み110番〟を郵便局が受け持つ事例もある。徳島県鳴門市内の郵便局数局が販売する障がい者施設の手作り商品も、そのぬくもり感がお客さまに好評と聞く。
 それぞれの地域で存在感を示すことで、新たなお客さまにも足を運んでもらえる郵便局が次々と生まれている。全国的にも郵便局の空きスペースを事業者や一般の方々に貸し出し農産物等を販売する郵便局も増えてきただが、もう一歩進めるべき。例えば、生活雑貨等の陳列しやすい商品であれば、窓口で販売することも可能で、購入目的のお客さまと10回やり取りできれば、1~2回は郵便局の商品・サービスの話もできる。
 郵便局に行けば局長や社員と世間話に花が咲き、ついでに買い物もできることが理想的。郵便局が〝気持ち温まる〟サロン・ステーションとして、足を運ぶことが楽しみの一つになっていけば、郵便局の商品・サービスの販売にも良い影響が期待できる。
 さまざまな事業体が撤退し、デジタル化が進むからこそ〝リアル〟さが光を放つ。包括事務受託の早期実現を通じ客さまにさらに必要とされる「足を運びたくなる郵便局」であり続けられるようにしなければならない。

 ――地方創生に向けスーパー等との連携や移住・定住支援の状況を教えてください。
 宮川理事 人口減少は四国地方にとって切実。自治体だけでは移住・定住の情報提供が限られるため、郵便局に関係するパンフレットを置くなどのお手伝いをしている。移住を希望される方の住まいや仕事なども自治体と連携し、お役に立ちたいと考えている。郵便局に行けば、住まいや生活の悩みは解決するといった期待を持ってもらえる仕組みを構築できるとよい。
 山間地などではコンビニとの連携もなかなか難しく、スペース貸しも出店者の確保や賃料の問題もある。以前、四国ではスーパーと提携し、チラシを介しゆうパックでお届けする「お買い物サービス」を実施したが、食料品等は手に取って品定めしたいというお客さまニーズに合致しなかった。郵便局の駐車場を利用する移動スーパーの方がニーズは高いと思う。郵便局で買い物や相談ができる形を作り上げることが大切だ。