新春インタビュー 一木美穂 南関東支社長(執行役員)

2022.01.21

 郵便局改革推進室元室長として、初代の女性活躍室長としても郵便局の人材育成に深く携わってきた一木美穂南関東支社長(執行役員)は「成長し続ける組織とは『全員参加型』。職場のコミュニケーションが良くなれば、お客さまとのコミュニケーションも自然に良くなる」と話す。また、「郵便局は〝社員〟で選ばれてきた会社。少し離れた郵便局でも、『あの局長さんが、あの社員さんがいるからあそこの局に行くの』とおっしゃるお客さまがいらっしゃる。お客さまとの出会いは一期一会。少しでもお役に立ちたいとの〝お声がけ〟を」と強調する。

社員力を発揮し、選ばれる郵便局に

 ――改めてご感想やご抱負を。
 一木支社長 就任以来、最も印象に残った出来事は、昨年9月に支社管内で発生した新型コロナのクラスター。大変な事態となったが、近隣郵便局などからの配達応援やエリマネ局社員のお客さま対応など、南関東一体となって乗り越えることができた。
 また、お客さまからも励ましの声など、多くのエネルギーをいただき、これから郵便局を盛り上げていかなければいけないとの思いを強くした。

 ――新しい営業体制に向けた準備をどう進めていらっしゃいますか。
 一木支社長 今年度は4月に向けた準備期間。コンサルタントが専門性の高い保険商品に特化し、局窓口は幅広いご要望にお応えするという役割分担で、総合的な〝提案力〟を高める体制づくりを目指す。不適正営業問題の反省も踏まえ、お客さまニーズに応える営業の原点に立ち返ろうと取り組んでいる。
 営業の基本は、①お客さまの話を聞く②お客さまを知る③お客さまの課題を解決する――の3点だが、そのためには、全社員が「ニーズを引き出すコミュニケーション力」と「要望に応えられる知識・スキル」を身に付けることが大切。
 提案力を高めるために知識の研修を拡充してきたが、覚えたことを実践しなければ定着しない。ゆうちょ銀行とかんぽ生命とも連携して各局のお声がけの好事例など情報を吸い上げて横展開していく。
 また都市部以外ではコンサルタントが行かなくなる地域もあるため、ご要望があった時に回れる車の配備や、お客さまのご希望に応じて、例えばZoom等の画面上でお客さまと対話し、必要な時にリアルに手続きできるリアル・デジタル併用等により、お客さま接点を強めたい。
 電子申し込みの仕組みも試行をスタートした。将来、本格導入すれば手続きもスマホ等で「画面を開いて、ここを押してください」など、ご自宅にいながら申し込みできる。お客さまの選択肢を増やすことが必要だ。

全員参加型で〝お声がけ〟を

 ――人材育成で力を入れていることは。
 一木支社長 コロナ禍でズームでの「必須の研修」も「任意の研修」もメニューは増えた。ただ、知識・スキル研修だけでは「信頼できるから、この社員から買いたい」と言われる決め手、〝聞く力〟といった社員力の向上には物足りず、コミュニケーション力やお客さま視点を広め深める育成を織り交ぜる必要がある。
 研修だけでなく、日々の職務経験の中で磨かれる部分も大きな要素を占めるため、管理者のマネジメントが非常に大事。社員とのコミュニケーションの取り方についてはさまざまな場面でメッセージを発信している。
 成長し続ける組織とは「全員参加型」。一部の人がやって、それ以外の人が関わらない職場は不満もたまり、長続きしない。皆が同じ個性や能力があるわけではないが、得意な分野に自信を持って取り組む中で、不得意な分野も少しずつ克服していく努力が大事だ。
 一人一人に上司が寄り添って、良いところを褒めて自信を持たせる中でスキルを高めたい。職場のコミュニケーションが良くなれば、お客さまとのコミュニケーションも自然に良くなる。人材育成は一日一日の積み重ねが大切。コミュニケーション力をテーマにセミナーも実施する予定であり、「良い職場づくり」の中で人材を育てていきたい。

 ――郵便局と自治体や企業との共創で特に印象に残る取り組みは。
 一木支社長 青葉台局(横浜市)の屋上を舞台とするハニービープロジェクト。地元企業や商店街、郵便局などの協働でミツバチが集まる花を植え、周辺の局長がミツバチの飼育・管理を行った。試験的にではあるが蜂蜜も収穫でき、地元発の商品開発の第一歩を今年度踏み出すことができた。地元が元気になるプロジェクトまで育てたい。
 日頃から自治体や地元企業の方々とお付き合いをする中でヒントをいただき、郵便局ができることが実った。何かやりたいときに、いきなり顔を出して相談しようとしてもうまくいかない。日頃から地元の方と接点を持ちヒントをいただく活動を、支社全域で力を入れたい。

 ――南関東の地域性としてSDGsのイメージが強いです。
 一木支社長 日本郵政グループの重要課題として地域社会、地球環境、人の三本柱を立てているが、支社も地域社会では、自治体との包括連携協定に力を入れ、管内9割近くの51市町村と協定を結んだ。密に意見交換し、郵便局ができることに力を尽くしたい。
 また、手紙の書き方や金融の出前授業は管内全小中高の半数以上から要望いただき実施している。環境面ではカーボンニュートラルに向けて、南関東ではEV車を2014(平成26)年から配備し、今年度は500台以上の配備となった。局社屋を活用した太陽光発電の実績もある。
 人の面では、「社員が力を発揮できる職場づくり」の中で、地域に貢献できる人材を育てられると考え、研修やセミナー、セッションを進めている。女性活躍室初代室長の経験も踏まえ、女性管理者と次世代の社員との意見交換など、気付きを得る取り組みをやっている。
 アフラック様の女性社員との異業種交流研修も、南関東支社としては今年度初めて実施した。育児休業中の社員とのセッションもZoomを使って行った。女性に限らず対象社員の幅を広げて、郵便局社員、支社社員向けにいろいろな切り口でセッションをやっていきたい。

 ――郵便局改革推進室長も歴任されていますが、局長や社員の方々へ今、伝えられたいことは。
 一木支社長 郵便局は〝社員〟で選ばれてきた会社。お客さまのお宅から少し離れた郵便局でも、「あの局長さんが、あの社員さんがいるからあそこの局に行くの」とおっしゃるお客さまがいらっしゃる。
 ここ2年で失っていた自信をまだ取り戻せていなかったとしても、お客さまとの出会いは一期一会。明日また来てくださるとは限らない。一日一日を大切に、少しでもお役に立ちたいとの〝お声がけ〟の努力を私たちの責務としてやっていかなければいけない。
 今できることは何だろうと、できるための方法に目を向け取り組むことが、元気が出る郵便局になる近道。お客さまに喜んでいただける活動のために、悩みを共にしながら、知恵を出し、一緒に前に進みましょう。