インタビュー 全国郵便局長会 西條英夫副会長

2021.11.25

 全国郵便局長会(末武晃会長)の西條英夫副会長(信越地方会会長/新潟県:稲田)は「局長一人一人が地域で何ができるか、課題や要望を聞き、自治体や住民の方々と共に行動することで見つけ出した〝地域発〟のビジネスを育てれば地方創生になる」と話す。また、「局長や社員がいる全国ネットの郵便局が、三事業だけでなく、医療や交通など生活を営む上で必要な拠点機能を持つ『地域総合商社』として機能すべき」と指摘する。

郵便局は〝地域総合商社〟に

 ――なぜ、郵政事業は150年も続いてきたと思われますか。
 西條副会長 
郵便局が地域から信頼され続けてきたためだ。歴代の局長が長年地域に溶け込み、コツコツ仕事し、貢献を重ねてきた歴史が信頼の根幹にある。営利のみ追求してきた企業は150年も続かない。また、郵便局だけあっても信頼などされない。郵便局には必ず〝人〟がいる。人の力はすごい。人あっての〝拠点〟だし、2万4000局が〝ネットワーク〟として連なっていることが財産だと思う。
 「会社が建てずに、なぜ一局長が局舎を建てるのか」と揶揄されることもあるようだが、郵政事業の歴史を知ってほしい。前島密翁の思いを受け、民間人が私財を投げ打って提供した局舎。先達がいなければ、過疎地に郵便局は残っていないだろう。
 
新潟県上越市で行われた「みんなの郵便局」の来場者

 ――西條副会長は以前から日用品も局で販売できるとよいとおっしゃっていましたが、コンビニの無人決済店舗が入った郵便局が誕生しました。郵便局ネットワークの将来像はどのような形が望ましいですか。
 西條副会長 
局内にコンビニ店舗を入れる取り組みは素晴らしいと思った。すぐには難しいかもしれないが、将来、市町村の中に一つでもこうした店舗があると、山間地や離島だけでなく、国内に約700万人とされる買い物難民が多い地域でもとても喜ばれるだろう。
 人口減少がさらに進んだ将来、大震災が起きて壊滅状態になったとしたら、デジタル化が進んでもそれだけでは解決できない問題も出てくると思う。
 局長や社員がいる全国ネットの郵便局が三事業だけでなく、医療や交通機関、その他、生活を営む上で必要な拠点機能を持つ「地域総合商社」として機能していれば、災害等で引っ越しせざるを得なくなってもどこでも安心して暮らせる。
 地方は自然が豊かで食べ物も新鮮。物価も安い。全国ネットの郵便局を活用し地場産業を活性化させ、遠方の方との交流の拠点、情報収集の拠点、生活相談の拠点にすべきだ。
 そのためには局長もサラリーマン意識を捨て、地域への熱い思いを持って、地域に奉仕する精神で行動を続けなければならない。自分たちの利益だけでなく、「地域のためにある企業」との思いを創業200年になっても持ち続けるべきだ。

「みんなの郵便局」での前島密翁の展示

 ――公益性と収益性を備えた郵便局らしい新規ビジネスが急務と言われています。
 西條副会長 
新規ビジネスは市町村、支社や地区、郵便局と単位ごとに皆ニーズが異なる。局長一人一人が地域で何ができるか、市町村や地域の方々から課題や要望を聞き、一緒になって考え、共に行動することで見つけ出した〝地域発〟のビジネスを育てていけば地方創生につながる。都市部も同じだ。
 里山の葉を収穫し、料理を美しく彩る〝つま〟として出荷する徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」は、商品が軽く容易に扱えるので、皆が生きがいを持って取り組み、大きな収益を生み出した。
 市況を確認するためにパソコンやタブレット端末を使うことから、パソコン等も簡単に使えるようになったそうだ。お宝ビジネスも、人と会話しなければなかなかアイデアも生まれない。

見つけ出そう! 地域発のビジネス

 コロナ以前は全特も、九州などの取り組みを参考に婚活に力を入れてきたが、私も以前住んでいた地域で近所の方に「何か困っていることありますか」と聞いたところ、「山の中だからお嫁さんを見つけるのが大変。良い人を紹介してもらいたい」という声を耳にした。そこで、遠く離れた地域の局長に相談してみると「独身の女性に声を掛け、婚活に貢献しよう」となった。
 寡黙な人が多い男性陣には、「積極的に行動するように」と伝えた上で事前に講習会も行った。当日は遠方からバス1台で局長と女性陣20人が参加し、こちらは小さな村だったが、村長まで出席して村挙げての大歓迎となった。その後、「局長に相談するとしっかりと対応し、本当に実現してくれるんだ」と評価され、地域との信頼関係を一層深めることができた。
 また、あるお客さまが「都心に住む子どもに連絡が取れなくなった」と相談に来られたときは、当該地域の局長に電話で事情を説明し、確認をしてもらったところ「子どもさんは旅行に行っている」ことが分かり、親御さんはとても安心したようだった。地域の拠点となっている郵便局だからできることだ。困り事の解決もビジネスにつながるかもしれない。局長や社員がいる郵便局を、地域の特性を生かして収益も上げる形にしていくべきだ。
 これからは農業が特に大事だ。品種改良等の努力で寒冷地などでも良い米を収穫できるようになったが、米余りによる米価の落ち込みで農家をやめる人がますます増えている。食料自給率が低い日本が仮に海外から輸入を止められた場合、食料危機がやってこないとは断言できない。美味の作物が採れる日本各地の農業を中心に地場産業を支えることも、地域に根差す郵便局の役割の一つだと思う。

「みんなの郵便局」に列席した西條副会長(右から2人目)

 ――地方創生に向けさまざまな取り組みを実行してきた長谷川英晴全特相談役の人間的な魅力をどこに感じますか。
 西條副会長 
まず、正直な方だ。飾らず、言動に裏表がない信頼できる人物。郵政事業に対する潔い純粋さを持つ方。理屈理論でなく体験で話されるため、思いが伝わってくるし、話も分かりやすい。人の話をじっくりと聞き、少し考えた上で生半可な返事でなく、かみ砕いて的確な判断を出す。実行力と判断力がすごい。皆に慕われ、相談される人だと思う。この厳しい時代に負けないリーダーシップを国政に生かしていただけると思うのでしっかりと支援したい。
 全特は昨年度から末武晃会長の発案で、風通しの良い組織を作るために、全特役員が各地区会に出向いて意見交換会する施策を続けてきた。緊急事態宣言でしばらくはできなかったが、今再開している。
 意見交換で生の声を聴くことで互いに学び、発見することも多い。杓子定規の講話などでなく、本音で会員の皆さんとぶつかり合うことで、感動も生まれる。心に壁を作り、この辺りまでは言うがこの先は言わないでおこうなどと思いながらの会議や打ち合わせは、相手側にもその思いが伝わり、どこまでいっても本質的な解決の糸口は見いだせない。けんけんごうごうと本音で話し合うことで血の通った生きた組織ができ、将来が開けていくものだと思っている。私は、そういった方針で会議や打ち合わせに臨んでいる。