インタビュー 全国郵便局長会 佐々木靖副会長

2021.10.26

 全国郵便局長会の佐々木靖副会長(北海道地方会会長/手稲駅前)は地方創生や地域貢献に向け、北海道の美味をゆうパックで全国に届けたいとの強い思いを抱いている。終活紹介サービスに「訪問美容」の新たなメニューを加えたほか、2名局での電話案内サービスを開始するなど、斬新なアイデアを実行する佐々木副会長は「『郵便局に行けば何でも相談できる』状況にならなければ郵政事業は前に進まない。どうすれば地域のお役に立てるのか、常に考え続けることが大事だ」と話す。

何でも相談できる郵便局に

 ――白老町で北海道初の包括事務受託が開始されました。実現までにどのような経緯がありましたか。
 佐々木副会長 2018(平成30)年9月に発生した北海道胆振東部地震は、震度7を記録する大きな地震であったため被害が大きく、記憶のある方が多いと思うが、その4年前の14年7月にも同じ地域の白老町で震度5弱の地震が発生していた。
 そこで、「地域振興と地域社会づくり」を目的の一つに掲げる北海道郵便局長協会では、地域の防災力を高めるお手伝いをするため、14年以降、大きな自然災害を受けた自治体を中心に寄付を行ってきた。今年度も6自治体に寄付をしたが、その一つが今回、北海道初の包括行政事務受託を開始した白老町。
 全国郵便局長会(末武晃会長/萩越ケ浜局)は自治体からの包括事務受託を強力に推進しているが、北海道は5年ほど前に全179市町村と包括連携協定を締結し、そこを起点にさまざまな地方創生、地域貢献の取り組みを進めている。
 支社と連携し、郵便局として協力が可能なふるさと納税や行政事務等の受託一覧を作成。市町村担当局長、地方創生担当局長が連携しながら毎年自治体に出向き、提案している。
 〝恐竜の町〟として世界的に有名な旧穂別町、合併して「むかわ町字穂別」は私のふるさとだ。白老町の戸田安彦町長とは同郷というご縁があり、これまでの局長会の活動などをご理解いただいた上で「支所業務を4郵便局で受託していただければ、町民の利便性向上になる」と包括事務受託を喜んでいただいた。
 北海道では初めての包括事務受託になるが、間もなく実現の運びとなる自治体もある。住民の方々に対する郵便局の取り組みが自治体間で話題となり、一層広がっていくことを期待している。

北海道の美味を全国へ、クール便に期待

 ――北海道といえば、おいしいものの宝庫。ゆうパックで全国に届けたい品が多いのではありませんか。
 佐々木副会長 先般、基本合意が締結された日本郵便と佐川急便との協業の中に「クール宅配便」(冷凍)の配送サービスが明記された。これまでの日本郵便のサービスにチルド(冷蔵)はあるが冷凍がないため、配送できなかった「いくら」や「たらこ」などの海産物も多い。
 北海道のふるさと納税返礼品は、「うに」「かに」「いくら」など非常に人気が高い。北海道で物販ビジネスを展開する会社に郵便局の利用を働き掛けたが、「冷凍が可能なら『郵便局に任せる!』のに」と言われ、断念したこともあった。
 遠方に住む「いくら」嫌いの甥が北海道に遊びに来て、旬の「いくら」を食べた途端、大好きになった。産地の〝本物の味〟を全国の方々に味わっていただきたい。
 北海道や沖縄は、ゆうパック料金が高いという課題はあるが、注文量が増えれば当然、収益にも大きく貢献する。北海道の旬をいち早く届けられることにこだわって配送したい。
 佐川急便との協業を通じ、これまで諦めざるを得なかった冷凍配送がスムーズに進み、購入しやすい価格帯で提供できればなお一層良い。中期経営計画に掲げられている〝共創プラットフォーム〟を、北の大地に根を張りながら構築していきたい。さまざまな共創があると思うが、北海道の旬は伸びしろがあるので注目していただきたい。
 ――昨年、北海道全体で導入された「終活紹介サービス」は、斬新な発想でメニューを追加されましたが、さらなる取り組みを考えていらっしゃいますか。
 佐々木副会長 郵便局は郵便と金融だけ扱っていればよいという時代ではなくなっている。地方創生や地域貢献もそうだが、いろいろなことを皆で協力し、挑戦して、今まで以上のサービスや役割を担って「郵便局に行けば何でも相談できる」状況にしなければ、郵政事業は前に進まない。
 終活紹介サービスはデジタル社会が進む中、顔を見合わせながら直接相談したいという地域の方々の思いに応えられるサービスだ。徐々にメニューを増やしていけば「何でも相談できる郵便局」に近づいていける。
 北海道では相続の相談や訪問美容だけでなく、不動産登記の名義変更などいわゆる士業(行政書士など、士という名称の専門資格職業の俗称)との連携も試行の形で、2名局でスタートした。
 終活相談で最も多い相続に関しては、不要となった土地や住居を処分したいが信頼できる不動産会社が、分からない場合などの案件に関し、地元を良く知る郵便局がお手伝いできることがないか検討中。年度内には結果を出したいと考えている。不動産は高額なだけに〝信頼〟が一番大事だ。
 今夏から始めた訪問美容は美容組合と連携した施策。ご希望があれば美容師の方を紹介し、自宅にカットなどに行ってもらうものだが、継続して利用いただいている方もおられる。高齢の方が世間話をしながら、きれいさっぱりすることができ、元気な日々を過ごせる。北海道では、冬場に足腰が弱くなった高齢の方が外出するのは危険なため、大変に喜ばれている。
 「終活紹介サービス」のさらなる取り組みとして、「もし、ご希望ありましたらおっしゃってください。いつならご都合つきますか?」と要望をお聞きする「電話紹介サービス」も開始した。都市部の繁忙局も、郡部の2名局もそれぞれの地域で求められている役割を担い、全体として収益増につながるよう補い合うのだ。新しいサービスに対して常に前向きに挑む姿勢が、これからは特に大切だ。
 訪問美容サービスもそうだが、地方創生、地域貢献の取り組みは収益性のみの観点で始めようとすると実施できないし無理が生じる。住民の方々が喜んで利用し、地域が活性化していけば、郵便局に対する信頼が一層深まり、それに伴った果実も自分たちに還ってくる。
 ――集配マネジメント統合も進んでいるということですが、総合担務についてはいかがですか。
 佐々木副会長 配達業務を受け持つ旧集配センターは地方に点在しているため、民営化以降、受持局の副部長が定期的に臨局し、運営を支援していたが、常駐の管理者がいないので、小規模なセンターは3~5人の社員だけで仕事をせざるを得ない状況だった。
 統合により、エリアマネジメント局長が「物販は今、こういう取り組みをしているよ」「天候が悪くて大変だけど、頑張って」「お疲れさま」などと声を掛け、心の通った運営をすることで社員のモチベーションも上がり、事故防止にもつながる。エリアマネジメント局長は貨物法制の運用や始業点検など新たな業務で大変だが、地域の方のためにも頑張っていただきたい。
 センター統合が完了した郵便局は一定の条件の下、お客さまから依頼があれば、年金や振替に限り、局長や外務社員が取り扱える「総合担務」も導入できる。金融機関がない地域にお住まいの高齢の方などに望まれているサービスだ。
 北海道においては現在18局で総合担務を導入し、地域の方々に喜ばれ、自治体からも評価されている。どうすれば地域のお役に立てるのか、常に考え、常に行動に移す心意気が大事。郵便局の原点はそこにある。