インタビュー 郵政民営化推進室 藤野克室長

2025.01.07

 郵政民営化委員会(山内弘隆委員長)は10月8・9日の2日間、長野県泰阜村を視察した。泰阜村は2019(令和元)年、全国で初めて支所で取り扱っていた事務を包括的に郵便局に委託した自治体として注目されてきた。一行は委託から5年が経過した村役場、受託局の温田局(中島淳子局長)、また、泰阜村が日本郵便から受託して運営する門島簡易局(鈴川航局長)を訪れて課題を抽出。同行した郵政民営化推進室の藤野克室長は「行政事務を『丸ごとできる郵便局』にとのご要望をいただいた」と語る。

泰阜村視察 拠点性の価値と重みを

 ――泰阜村の現状をお教えください。
 藤野室長 昭和初めの最盛期には5000人余りだった村の人口は、今は10月1日現在で1434人。その中で、村役場施設もしっかりし、総体的に村の空気は明るい印象を受けた。合併した小学校の子どもたちの送迎もスクールバスを無料で走らせ、登下校まで村が支えていた。
 温田郵便局に26業務を包括的に委託することで、村の南部を担当する支所を廃止して、人員やコストを減らした。局には住民サービスのためにキオスク端末が置かれ、証明書を交付する「セパレート型キオスク端末取扱事務」も受託。
 村では、宅配業者の拠点も撤退し、コンビニもなく、郵便局は日々の生活を支える拠点として期待が大きい。
 ただ、泰阜村の事例のように、郵便局の自治体業務の包括受託がどの地域でも拡大しているかというと、5年が経過した今、そうはなっていない。地域拡大に向けて、どういう課題があるか、民営化委員会としても関心がある。
 村の意見では、郵便局に丸ごと委託したくても、一部が制度的にできない点等がネック。転入届や印鑑登録の登録申請は市町村職員でしか受け付けられない。そのため、委託後もしばらくは郵便局に職員を常駐させざるを得なかったという。
 今は、転入届等のために住民が来局されると、市町村職員が郵便局に車で20分ほどかけて出向くやり方に切り替えたそうだが、現実には、村役場に行っていただくようお客さまに言わざるを得ないことがあるとのこと。村では、「郵便局に全部委託できれば非常にやりやすい」との意見をいただいた。

 ――マイナンバーカード関連業務はいかがですか。
 藤野室長 温田局では、マイナンバーカードを活用したキオスク端末による証明書交付サービスを扱っており、住民の方々には好評。キオスク端末の利用やごみ袋の販売も含めて、住民による受託業務の利用は年間千数百件になるとのこと。
 他方で、全国で見たら、マイナカードの電子証明書関連事務も交付申請の受付事務も、まだ展開途上にある。
 市町村から郵便局への委託のやり方にも工夫は必要で、委託しても市町村の業務が本質的には減っていないとなると、委託に意味があるのか、となってしまう。
 資金面では、マイナカードを活用した証明書交付サービス端末の導入費用には、2022(令和4)年度第2次補正予算で補助金があり、23年度からは特別交付税措置があるが、これらの継続の要望もあった。

郵便局に全部委託できればやりやすい

 ――視察で問題点が明確になったのは成果ですね。
 藤野室長 視察時に郵便局と村の双方から伺った話と、9月に日本郵便からヒアリングした話の両方から、当事者の方々の問題意識が明確になってきた。日本郵便からも市町村からの要望を伺い、温田局の中島局長にも実務面での詳しいお話を伺うことができた。
 住民の方々が行政サービスのために郵便局に行くことで「便利さ」を実感できれば、「他にも何か買おうか、貯金や保険のサービスで窓口にも行こう、郵便や荷物も発送しよう」となる。郵便局の価値が高まることによる、そういった集客効果が重要。

 ――問題の焦点は、郵便局の受託業務が〝丸ごと〟になりきれていないことですか。
 藤野室長 そこが自治体側の要望。半分委託できても半分の業務が残ってしまえば、結局、村は人員を残さなければならない。拠点の集約が必要な状況になっている地域では、「丸ごとできる」郵便局の〝拠点性〟の価値と重みへの期待が大きい。