インタビュー 全国簡易郵便局連合会 山口博文会長
簡易局15年、その前の直営局37年を含め、半世紀以上にわたって郵政人生を歩んできた全国簡易郵便局連合会の山口博文会長。6月の総会で選出された役員と心一つに前進を期す山口会長は「信頼関係が絶対的に必要だ。対立はいけない。もちろん会社に対しても、組織内でもそう。意見の違いはあっても、理解し合えるように対話を重ねていくことが大事だ」と〝対話の力〟を強調する。
信頼関係が絶対的に必要
――先日の総会では特に「犯罪ゼロ」を強調されていました。
山口会長 郵便局は金融機関だから、犯罪を起こせば信用をなくす。地域の信用を失ったならば、商売はやっていけないし、他の会員にも迷惑をかけてしまう。昨年、簡易局の犯罪はゼロだった。
「一日1円防犯積立運動」では、各人が〝私の防犯施策〟を実施し、一日1円ずつ積み立てていった。金額が問題ではなく、防犯活動を毎日行うことで、犯罪に気持ちが傾くことにストップをかけられたと思う。寄付された約58万円は日本赤十字や盲導犬協会などに寄贈し、大変喜ばれた。
――今回、役員体制が刷新されました。
山口会長 簡易局は個人商店の集まりだから、一人一人が、いわば社長さん。100人いれば100人の顔があり、前職もさまざま。いろいろな考えの人がいる。私の一番の仕事は、その集まりをまとめること。融和を常に考えなくてはいけない。皆さんの意見を吸い上げ、運営に生かしていくことが最大のポイントだと思う。
――特に力を入れて取り組みたいことは。
山口会長 一つは一時閉鎖対策。現在営業している簡易局数は3656局(6月末現在)。1970(昭和45)年当時は約4300局あったが、600以上も減った。特に過疎地は地元の人しかなり手がいないため、なかなか難しい。一時閉鎖が増えると、その地域でユニバーサルサービスの提供ができなくなってしまうため、真剣に考えて取り組んでいかないといけない。
――簡易局のデジタル化についてはどのようにお考えですか。
山口会長 今回、QRコード決済を希望する全局に導入するとの会社のご配慮に感謝したい。ただ、簡易局のデジタル化の推進は、今の制度のままだと個人商店主の受託者(局長)に負担がかかるのと、制度上の壁に直面する。
簡易局の郵便部門は町の販売所と同じで、受託者が郵便切手類を直営局から買い受けして、個人で販売している。つまり、簡易局の公の販売品ではない。切手類の受領書も個人で発行している。
簡易局のデジタル化の推進でネックになるのは、郵便切手類の買い受け制度。簡易局の将来像を考えたとき、この制度にメスを入れていくことが避けられないと考える。買い受け制度の廃止、私から公への郵便部門の改革によってデジタル化は推進する。大きな問題だが、お客さまのため、受託者のために会社にご検討をお願いしたい。
現在、会社との簡易局将来像の意見交換会を行っている。デジタル化の本丸である郵便窓口端末機(POSレジ)の配備について、継続して意見交換をいただいている。
――簡易局の未来に思われることは。
山口会長 今の大手町本社が建つ前の東京国際郵便局に1970年に入り、そこに約6年いて、福島中央局などを経て簡易局を始めた。これまで、切り絵展や水彩・油絵展、写真展などロビー展を行うなど、地域の方々とのお付き合いを大切にしてきた。お客さまとの距離の近さ、親密さは簡易局ならではだ。
何事もそうだが、信頼関係というものは絶対的に必要だ。対立はいけない。もちろん会社に対してもそうだし、組織内、理事会でもそう。意見の違いはあっても、理解し合えるように対話を重ねていくことが大事だと思う。
簡易局の未来のため、さまざまな環境づくりに取り組んでいきたい。若い人たちから「簡易局をやりたい」という人がどんどん出てくるようになることが、私の一番の願いだ。