郵便局の「フードドライブ」

2025.12.09

 子どもたちが安心して過ごせる居場所と、温かい手作りごはんを提供する「こども食堂」の支援に向け、鳥取、沖縄、滋賀、山梨、埼玉、新潟など各地の郵便局では「フードドライブ」の取り組みを展開している。住民の方々から持ち寄られる真心の食材等の寄付を通じたサポートは、子どもたちや生活困窮者への一助となり、行政や関係者から期待も大きい。

(写真は鳥取市内のこども食堂)

 こども食堂支援も 〝小さな善意〟拡大

 全国に先駆けて取り組みをスタートしたのは中国支社(砂孝治支社長)の鳥取県因幡地区連絡会(山田一孝統括局長/中河原)。2019(令和元)年2月から1市4町(鳥取市、岩美町、若桜町、智頭町、八頭町)55局と鳥取中央局(長繁浩司局長)にフードボックスを設置し、鳥取市人件情報センターを通じて寄付活動を継続してきた。
鳥取本町局の井上昌也局長は「各部会の拠点局で月2回、食材を回収している。鳥取市が進める〝孤独・孤立支援〟の活動にも協働し、局長7人が『つながりサポーター』の認定を受けた。地域で誰一人取り残さないよう、今後も貢献していく」と意欲を示す。

 沖縄支社(金城努支社長)は20年10月からのフードドライブ活動を実施。沖縄県の子どもの相対的貧困率は21・8%(24年度「沖縄こども調査」)と、全国平均の十数%と比較して突出している。
内閣府が16年度から開始した「沖縄子どもの貧困緊急対策事業」の効果もあり、当時の29・9%から改善傾向にあるものの、厳しい生活状態の子が5人に1人いる状態で、解決にはほど遠い現状だ。
先島地区連絡会の与那覇寛信統括局長(下地)は「宮古島市内13局(簡易局含む)において、今年9月末までに、累計1万3195個、3573㌔の食品などを寄贈いただいた。11月13日にも寄贈式を開催する予定。郵便局が貧困家庭の力になっていきたい」と強調する。
 
 山梨県西部地区会(進藤真彦会長/小淵沢)は、認定NPO法人フードバンク山梨(米山けい子理事長)と連携してきた。同地区会の三木孝悦理事(鏡中條)は「夫人の会とも協力して寄付活動を推進してきた。地域への貢献を清掃活動などともあわせて推進していきたい」と抱負を語る。
 米山理事長は「当法人と郵便局とのご縁は13年前に始まった。活動初期は認知度も低く困難も多い中、年賀寄付金による車両提供や倉庫改装助成、地域郵便局のフードドライブ実施など、長年にわたり力強く支えていただいた。物価高騰が続く今、厳しい環境で生きる子どもたちのため、郵便局と共に支援の輪をさらに広げてまいりたい」と期待を寄せる。
埼玉県中部地区連絡会(林将史統括局長/上尾平方)は21年10月から、(一社)埼玉県子ども食堂ネットワーク(東海林尚文代表)と協定を締結し、毎月の寄贈を行ってきた。林統括局長は「地域に根付き、寄付のリピーターの方も多い。10月の『こどもの居場所フェア埼玉』でも県の要請で郵便局ブースを出展し、絵手紙教室等を行った」と決意を込める。
 
 郵便局を訪れれば、誰でもできるフードドライブ。幼い子どもが母親に付き添われて、自分のお菓子を寄付する姿も見られるという。小さな善意の輪が、大きく広がっている。