人も、荷物も、乗せてGO! 加賀市×日本郵便×Uber
石川県加賀市、日本郵便、Uber Japanは3月から、全国初の「公共ライドシェアドライバーによる貨客混載実証事業」を開始した。人を乗せるライドシェアドライバーが空いた時間にゆうパックを載せる機能も加え、移動と配達双方にメリットをもたらす新しいモビリティビジネスを目指す。
ドライバーもゆうパックお届け!
2024(令和6)年4月から一部地域でタクシー会社が運営主体となり、一般のドライバーが自家用車を使って有料で人を運ぶ「日本版ライドシェア」サービスを開始した。
加賀市はUber Japanと連携し、地元住民や観光客の移動支援に向けてアプリを活用した公共ライドシェアを本格導入。利用数は順調に増加したが、平日の昼間や観光客が少ない時期は時間を有効活用したいとの声がドライバーから上がっていた。
折しも、人口減少が急速に進む地方の交通モデルを模索する国土交通省の「ドライバーシェア推進協議会」の検討とも連携し、加賀市と深く連携を重ねてきた日本郵便が協力する形で実証開始に結び付いた。
3者の共創による「公共ライドシェアドライバーによる貨客混載実証事業」は、「加賀市版ライドシェア」のドライバーの需要がない手隙時間に「ゆうパックの配達(集荷はなし)」を行うウィンウィンウィンのスキームだ。
3者共創で地域交通×物流解決
実証事業は①ドライバーの収入向上②ライドシェアの供給安定化③日本郵便の配達リソースの多様化――の3点が期待されている。仕組みは、配車をUberアプリを使用し、乗客とのマッチングを行う市観光交流機構がライドシェアと荷物配達双方の稼働時間を把握。ドライバーは第一交通が管理する。
午前7時~午後7時まで市内主要な地域を走行。乗車運賃はタクシーの8割程でニーズが高く、時間もエリアも延長、拡大した。夜間は市内全域+αのエリアも走行するが、ゆうパックの配達は基本、通常の昼に行う。
2月27日の記者会見で、Uber Japanの山中志郎代表(写真上)は「地域交通と物流の連携強化、持続可能なモビリティの推進、さらなる協業の可能性を検討する枠組みを構築し、モデルケースとして全国展開も視野に入れたい。テクノロジーの力で人と物の移動を最適化し、全国の地域交通、物流の課題解決に尽力したい」と意欲を示した。
国土交通省の髙本仁大臣官房参事官は「自動車運送事業は深刻なドライバー不足。ドライバーシェア推進の肝は、地方部でのアプローチ。地方の方々に理解いただいて進めることが大事。成果、課題、論点を抽出して同じ悩みを抱える地方部で横展開いただきたい。制度面の改善にもつなげたい」と述べた。
日本郵便の指宿一郎執行役員は「配達委託手数料をお支払いすることで、ドライバーの皆さまの供給の安定化に貢献できる。加賀市さまとは包括連携協定を締結以降、局窓口の活用などさまざまな連携を行ってきた。新プロジェクトがさらなる地域社会に貢献できるよう期待を抱いている」と願いを込めた。
加賀市の宮元陸市長は「人口減少の著しい地方は貨客混載で、物流や人の流れをつくっていくことが喫緊の課題。将来的にMobility as a Serviceの実現に期待をかけている。地方が衰退すれば大都市圏もやがて衰退する。見守っていただければありがたい」と期待を寄せた。
記者団の「他の自治体にも広げる方針等は」との質問に対し、山中代表は「実証で時間当たりのドライバーの収入、仕事時間がどれだけ増えるのかを確認したい。効果が確認できれば他地域も検討したい」と答えた。
「ドライバーが郵便配達を担当した時の報酬モデルは」には指宿執行役員が「報酬は配達した個数に応じてお支払いする。事前にどの日にどれくらいの時間働きたいかを各ドライバーの方と郵便局で調整し、働いていただける分を依頼し、それ以外は社員が配達する」と説明した。
「人と荷物の両方を同時に載せてよいのか。ライドシェアの仕事が配達途中に入った際、配達すべき荷物が時間指定の場合の優先順位は」には「お客さまを乗せている最中にゆうパックを配るのは控えていただくが、ゆうパックを載せていることは構わない。ただ、カバーをかける等の配慮はしていただこうと思う。時間指定の荷物は依頼しないと想定している」と方針を示した。
郵湧新報の「将来、ぽすちょこ便の空きスペースに人を乗せる郵便車両ライドシェアは視野に入れていますか」には、「今回の取り組みでは考えていない」と語った。