簡易保険の宣伝 働けぬ頃に働く金が出来 郵政政策部会 米山高生部会長④

2024.11.21

 簡易保険の商品的特徴は二つあった。一つは言うまでもなく、小口の養老保険であること。もう一つは、商品設計にあたって保険金額からではなく、保険料から出発したということであった。簡単に言えば、保険金額500円では保険料いくら、1000円では保険料いくら、という方法ではなく、保険料から出発して、月々20銭の掛け金だと保険金額はいくらになる、というような商品設計だった。

庶民に寄り添った素晴らしい発想転換

 私には、庶民に寄り添った素晴らしい発想転換から生まれた方法だと思われる。保険の原則は、必要な保障額から出発するのであるが、簡易保険は、可処分所得を基準として出発するのだ。
 1916(大正5)年に簡易保険の募集が始まると、全国に速やかに普及したが、簡易保険局として何も募集活動をしなかったわけではない。数々の絵葉書やパンフレットで簡易保険の宣伝を行った。
 今回取り上げたのは、面白い図柄の販売促進のための絵葉書である。そこには、「働けぬ頃に働く金が出来」というスローガンが書かれている。描かれた漫画はけっして上手とはいえないが、滑稽味のあふれたものである。
 簡易保険は、保険期間中に死亡した場合に死亡保険金が、保険期間を無事に満期まで生きた場合に満期保険金が、それぞれ支払われるタイプの養老保険であった。この絵葉書では、満期保険が老後のために働いてくれると強調している。
 人生100年時代の現代では、当時の簡易保険では、長生きリスクに十分に対応できないが、当時は人生50年の時代であった。このことから考えると、老後生活に対する満期保険金への期待は少なからぬものがあり、それなりの宣伝となっていたのだろう。