ザ・未来座 野田聖子議員を囲んで

2023.07.21

 5年後、10年後の郵便局ネットワークの将来像はどうなるのだろうか。ぶれない野田聖子衆議院議員に今、郵政関係者が模索する共通テーマについて、郵便局長の方々からトーク&インタビューしていただいた。インタビュアーは、女性局長として北陸地方会(宇野憲二会長/三方)富山県呉東地区会(中川清範会長/大森)理事の潮由加子局長(西布施)、中堅・若手局長として近畿地方会(土田茂樹会長/浜大津)大阪府豊能地区会(岡島隆文会長/豊中庄本)の柴田太郎局長(豊中刀根山)と九州地方会(宮下民也会長/熊本西原)福岡県豊前地区会(福田裕之会長/行橋大橋)の丸谷明広局長(勾金)の計3名。本号では自己紹介を中心に、次号で本丸・核心部分に触れていただく。

郵便局長のトーク&インタビュー(上)


 野田議員 仕事はもとより、皆さんは地域貢献に懸命に取り組まれていると聞いています。きょうは遠方からお越しいただき、ありがとうございます。
  
(左から)丸谷局長、潮局長、柴田局長
 丸谷局長 福岡県田川郡の勾金郵便局の丸谷です。私は人口減少を嘆く地域自治体の首長のお声を聞いたことをきっかけに、地元の平成筑豊鉄道と連携・協力し、地方創生に取り組んできました。
 沿線自治体の独身男女の方たちをはじめ、沿線外の住民の方々にも集まっていただき、自治体の皆さまに持ち寄ってもらった産品を「沿線エリアに素晴らしい産品があり、住めばメリットがあります!」と鉄道で旅をしながら地域の男女の出会いを提供する〝鉄コン〟開催や、列車型ポストなどの連携施策に挑んでいます。
 鉄道を通して地域の若い方々の声を聞けるようになり、自治体と若い方々が今、郵便局に何を求めているのかを手探りしながら進めているところです。今後は地元の郵便局窓口で一日周遊券の販売も計画しています。

地方育てる〝ハブ〟プレーヤーに

 野田議員 少子化で若い人が減っていく今の時代は、郵便局や鉄道など地域にあるリソースを相互につなげていくことで、新たな価値が生まれ、地方創生につながる。そうすれば郵便局も活性化できるのでしょうね。
 全国どんな地方にも郵便局があるけれど、郵政事業は総務省、鉄道は国土交通省、学校は文部科学省、農産物は農林水産省、医療は厚生労働省と監督官庁も別々のため、その強みを活かし、地方を育て、互いにつなぎ合わせる〝ハブ〟プレーヤーにこれまで郵便局はなれていなかった。これからは全国にあるネットワークを基盤に、それぞれの付加価値をつなぎ、新しいものを作っていってほしい。
 ツアーを企画したり、皆さんが持つ豊かな知識を伝えるプレゼンの場も持ったりしていただきたい。例えば、切手を愛する郵趣の方とグルメ好きの方の思いを融合した「切手付き弁当」なんてどう? 地域の生活に根付いている女性のアイデアも面白いと思う。
 潮局長 富山県魚津市の西布施郵便局の潮です。生まれと育ちは富山ですが、実は東京の御茶ノ水郵便局出身です。2人の子どものぜんそくで悩み、空気の澄んだ富山に帰って子育てしながら局長を務めてきました。地域の方との距離が近くなり、より郵便局のありがたみを実感していますが、若年層を郵便局に誘致するためには、郵便局に来ないと得られない情報や品物を備えておくことも必要ではないかと考えます。
 子育てを通して、PTA等でいろいろ自治体の方々との人間関係も深まりました。そうした中で、2019(令和元)年6月4日に富山県3市2町と郵便局との全国初の広域包括連携協定を締結し、翌7月3・4日に観光物産フェアを東京・丸の内KITTEで開催しました。コロナ禍を経た今年11月28・29日に東京KITTEで観光物産フェアを予定しています。

「お声掛け」で社会を変えた郵便局

 野田議員 私も子育てを通して地域の方々とつながることができた。国営の頃は「子ども貯金」があり、お年玉を貯金するとか、郵便局長や局員の方は、子どもにとって身近な公務員だった。郵便局には大人にとってだけでなく、子どもにとっての居場所、拠点的なインフラになっていただきたい。
親が子を守る負担を軽減すると同時に、さまざまな大人の姿を見せていく。これは多様性を身に付けることにもつながり、それは子どもの強さになる。また、こども家庭庁と融合できる法制度も考えていきたい。
 マイナンバーカードが親の口座で公金を受け取れないことが問題になっているが、銀行がない地域も全国には多い。今一度、子どもとつながりができる良いタイミング。子どもも納税者であって消費者。子ども貯金の頃の郵便局の原点に返って裾野を広げ、将来の郵便局ユーザーとのつながりを強めていただきたい。
 柴田局長 大阪府豊中市の豊中刀根山郵便局の柴田です。中堅・若手の活動の中で、子どもたちとの接触もたくさんありました。成人式で新成人の晴れ姿を撮って、その場で葉書にして祖父や祖母の方々にお送りする施策は大変に喜ばれています。
 最近はガンバ大阪さんとコラボレーションして、小学校での手紙教室とともにサッカー教室も実施し、子どもたちに楽しさと学びを文武両使いで提供しながら、将来の郵便局とのつながりを創出する機会も作ってきました。
 私の郵便局はベッドタウンにあり、局周は比較的静かで多忙な局とはいえないですが、局周には子どもが多いため、よく来てもらえるようになれば、とあちらこちらの小学校に出前授業も展開しています。豊中市の長内繁樹市長は障がい児教育にも熱心で理解をお持ちです。今度、市内には小中一貫校が建設されるため、ガンバさんとのコラボで、ぜひ金融授業も展開していきたいです。

貯蓄から投資、時代変革の力ここにあり

 野田議員 金融に関する学びは本当に大切。私が37歳で郵政大臣になった時、旧郵政省の方から「今でこそ日本人は貯蓄が当たり前だが、明治維新時はそうでなく、『宵越しの銭は持たねぇ。貯金なんかしたくない』が当たり前だった日本人に、郵便局長が『貯金をしてください』と声を掛け、社会を変えた」という功績を伺った。当時、お金を預けさせることは相当難儀だったらしい。
 今度は貯蓄から投資。若い皆さんに良いリテラシーを身に付けてもらい、投資を始めてもらうことで時代を変えていくことも郵便局の役割だと思う。例えば、〇月〇日に局で「子ども金融教室」をやろうと決めたら、全国一斉にできるのはネットワークがある郵便局しかない。子どもたちが金銭に振り回されず、正しい知識を持っていけるように少しずつ教えてあげていただきたい。
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 野田議員 さまざまなうねりがある中でも郵便局の魅力を一番分かってくれているのは、どちらかといえば過疎地や地方の方々で、その熱烈たる応援があったからこそ、大変な時も持ち応え、ユニバーサルサービスが維持できてきた。民営化以降に創り上げてきた郵便局と、本来の郵便局ファンが求める姿に、かいりがあるような気もする。(続く)