つなぎ合えば皆が便利に 前橋市×郵便局 

2022.11.14

 群馬県前橋市内全46局で11月1日、デジタルを活用し、超高齢化社会の課題解決を目指すMaeMaaS(まえまーす=前橋版次世代型移動サービス)の仕組みを活用し、マイナンバーカードと交通系ICカードをひも付ける全国初のサービスが総務省の実証事業として始まった。行政と民間のカードひも付けによる市民割引の自動化等で暮らしやすい地域を創造する。今後、健康度を測定するバイタルデータ端末の局設置連携も予定。

マイナの民間連携開始 総務省の実証で

 前橋市の山本龍市長はセレモニーで「市民の暮らしを守る郵便も、電車もバスも、行政サービスも別々にあった。一つに結ぶことが公的基盤の連携推進。市民の方が日常立ち寄える郵便局の力をお借りし、皆でやっていこうというスタートだ。『つなぎ合えば皆、便利になる』とのメッセージを前橋から全国に発信したい」と力強く語った。

郵便局を公共交通等の結節点に

 MaaS(マース)とは複数の公共交通や移動サービスを最適に組み合わせ、検索・予約・決済等を一括で行うサービス。前橋市は、高齢者や障がい者の方がマイカーに頼らずとも外出できる、優しい交通環境の実現に向けて、まえまーす導入を進めてきた。
 11月1日、46局はまえまーす浸透に向けてSuica対応交通系ICカード「nolbé (ノルベ)」の販売を開始。ノルべとマイナンバーカードの登録連携がスマートフォンで簡単にできる端末が局に設置された。

健康維持の新サービスも検討

 郵便局が交通結節点の一部になり、シェアサイクル等、多様な公共交通の利便性を高めると同時にマイナカード連携によって健康維持等の新サービス導入にもつなげる。総務省の「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」は来年1月31日まで。
 まえまーすはスマホから専用サイトにアクセスし、会員登録を行うと複数の交通手段を組み合わせた移動法を探る「リアルタイム経路検索」等、各種サービスを利用できる。デマンド交通の予約、路線バス・鉄道が1日乗り放題の「デジタルフリーパス」も利用できる。

 セレモニーで、総務省郵政行政部企画課の芥唯一郎監理官は「スマホが苦手な市民の方も時には郵便局にサポートいただき、割引価格で路線バス1日券やデマンド交通予約もできる。マイナカードを行政手続き以外の民間サービスにつなげ、暮らしやすさとカード普及に寄与する実証実験。自治体と郵便局が連携するモデルケースとしてデジタル田園都市国家構想実現に結び付けたい」と意欲を示した。

 山本市長は「高齢者の方々も気楽に寄れる郵便局に端末が置かれれば便利になる。『誰でも簡単、いつでも手軽に利用できる一番身近な交通手段』がコンセプト。ひも付けにより、高齢者の方も障がい者の方も属性によって割引が受けられる。ノルベで決済もできれば新幹線から自転車まで全部つながる。例えば、自治体が苦労したコロナ給付金等も一瞬でできる」と説明した。

 関東支社(茂木孝之支社長)の栗村雄二副支社長は「市内46局は郵便局として全国で初めてマイナカード申請支援を5年間実施してきた。今回の実証事業を通じてさらに市と連携を深め、郵便局ネットワークを生かして便利に安心して暮らせる地域づくりに貢献したい。11月24日からスマホ決済もでき、マイナカードとのひも付けで市民割引になる『まえばしシェアサイクルcogbe(コグべ)』も始まる」と喜びを見せた。
 日本郵便地方創生推進部の寺田大資課長は10月24日のオンライン記者会見で、「マースは観光や医療等、目的地の交通以外のサービスとの連携も含めて、移動の利便性向上や地域課題解決に資する重要な手段となる」と指摘。
 「現在、健康度を測定するバイタルデータ端末の局に設置する連携も検討中で、AndroidタブレットとBluetoothで接続された体組成計を設置し、結果を見られるよう携帯型プリンターを設置する予定で、市民が健康状態をチェックできる一つの拠点に郵便局がなっていく。郵便局が地域課題を解決する一つの拠点となって前向きに取り組んでいきたい」と語った。