求められる郵便局像、自治体や地域と議論へ 増田日本郵政社長

2023.07.15

 日本郵政の増田寬也社長は6月27日の記者会見で「住民の方との関係などを強みに、自治体が手の届かない細部に取り組んでいきたい。デジタル田園都市国家構想総合戦略にも『郵便局の位置付け』を明記いただいたが、まだ深掘りできていない。自治体と相談しながら取り組んでいきたい」と語った。増田社長は先立つ21日に行われた日本郵政の定時株主総会で「求められる郵便局の在り方を導き出すために自治体や地域の皆さまの意見を伺い、丁寧な議論を行いたい」と将来像を探る方針を打ち出している。

〝お客さまの声〟AI分析で改善加速

 増田社長は記者会見の冒頭、「過去5年間、年平均約590万件、お客さまから声をいただいている。『コエ活プロジェクト』(FRONTEOのAIソリューション『KIBIT Knowledge Probe』を活用)は①潜在リスク事象を検知②商品・サービスの改善――を加速させる。7月19日にセミナーも開催する」と報告した。

旧麻布局・旧東京支社「森JPタワー」に

 また「旧麻布局と旧東京支社の跡地を含む『麻布台ヒルズ森JPタワー』の竣工日が6月30日。日本郵便が権利者・組合員として参画するもので、日本一の高さになる。森ビルと連携し、分譲する」と語った。

 (以下、記者団からの質問)
 ――日本郵政グループとヤマトホールディングス協業の受け止めを。収益増の見通しは。変化を気にされる関係者も多いようです。
 増田社長 お互い得意分野を成長させ、十分使い切ることが必要と判断し、協業に至った。時代は大きく変わった。知恵を出し、お客さま目線で両社共に成長するサービスを考えたい。
 ヤマト運輸の商品二つを、新商品「クロネコゆうメール(仮称)」「クロネコゆうパケット(仮称)」に切り替える。2商品の収益は現在、年間約1300億円。価格や送料、受託手数料などさまざま協議中だ。
 例えば、ゆうパケットは現在の取扱量が倍になる。滞りなく回るように流していただく。協力会社の方との体制も協議を始めた。丁寧に進めたい。

 ――郵便局の新ビジネスは、郵便局ネットワーク維持の観点から収益性確保が重要だが、現状の取り組みは。
 増田社長 郵便局の収益確保は、今回のヤマトとの協業もある一方、個々の郵便局のタイプ別で収益を上げる。東電と連携した急速充電器設置のほか、中堅・若手社員で構成するJP未来戦略ラボが精米機設置や衣服リサイクル回収ボックスを発案したが、郵便局全体のマネジメントにつながるアイデアにも期待している。グループ各社を縦でなくて、横につなぐ発想で壁を破ってほしい。

 ――マイナンバーカード交付可能を機に、郵便局と自治行政の関わりを深める方策は。ゆうちょ銀行の地方創生Σビジネスと郵便局を連動されるお考えは。(郵湧新報)
 増田社長 法律が通り、郵便局にマイナ交付事務を委託する自治体には交付金の支援措置を活用できることになった。総務省自治行政局が担当されている。自治体事務の一部受託も6000局ぐらいまで広げたい。包括事務受託は3月末時点で24団体61局が取り扱っている。
 相談業務は、一部の局がタブレットを使って市の担当者につないでいる。地方創生交付金等も活用し、自治体が手の届かない細部に取り組みたい。地方創生総合戦略にも「郵便局」の役割を明記いただいたが、深掘りできていない。自治体と相談していきたい。
 Σビジネスは、ゆうちょも支店を持っているが、地域に根差す郵便局とも連携し、ネタを吸い上げることが重要だ。モデル的に始めることも考えているようだ。ゆうちょ銀行と日本郵便の現場の意識付けを強めていきたい。