日本郵政G 地方創生の人材育成「ローカル共創イニシアティブ」

2022.03.17

 日本郵政の増田寬也社長は2月10日の記者会見で、新規ビジネス創出を目指すグループ初の公募型で地方へ派遣する人材育成の仕組み、「ローカル共創イニシアティブ」を発表した。「人口が減少する地方のリアルな郵便局が果たす役割を残したい。相続等の相談業務も始まっているが、それ以外にも地域の困り事相談に応じられる郵便局にしていくことが大切だ。政府のデジタル田園都市国家構想にもつながる」と指摘。
 また、「金融機関がない市町村も増えた。郵便・物流だけでなく、金融機関としての郵便局機能を維持・向上できるよう現場の皆さんとも話し、機能を果たせるようにしたい」と郵便局ネットワークの新たな役割を創り上げる強い意志を表明した。

郵便局の金融機能強化へ

 同日の会見では、資本・業務提携を結ぶ楽天グループとの新サービスとして、フリマアプリ楽天「ラクマ」で提供する配送サービス「かんたんラクマパック(日本郵便)」の置き配開始や、「楽天モバイル申し込み等カウンター」を3月末までに全国285局まで拡大するなど、〝共創〟により成果を上げる具体策を二つリリース。さらに、集配用EV車両導入の計画前倒しなど脱炭素のさらなる先導役姿勢を明確に打ち出した。

楽天Gとサービス改善・拡大へ

 増田社長は楽天グループとの共創する新サービスを「差し出しと受け取りの利便性を追求したサービス改善。労働環境の改善とCO2排出量削減につながる。モバイルカウンターは実証実験で検証できた」と強調。また、集配用車両EVを中期経営計画「JPビジョン2025」に掲げた軽四輪1万2000台に1500台、二輪2万10000台に7000台上積みすると発表。

 理由を「①栃木県小山局の実証実験で航続距離延伸を検証②EVバッテリー性能が向上③複数メーカーの数年内参入――を踏まえた。東電、三菱自動車工業の皆さまと協力し、EV充電インフラの充実、寒冷地へのEV配備検討等を通じ、今後も前倒しを行う」と意欲を示した。

脱炭素を先導、EV導入前倒し

 4月から開始する「ローカル共創イニシアティブ」は、公募により選出された8名の本社若手、中堅社員を2年間、社会課題に精力的に取り組むベンチャー企業や自治体に派遣することで、新規ビジネス等の創出を目指す。
 地域経済活性化や関係人口創出、自治機能の維持・向上等に資するサービス等に挑戦する起業家マインドを持つ人材育成と、派遣先のベンチャー等と新規ビジネスモデルの検討も進める。
 増田社長は「変化の激しい時代に突入した今、新たな取り組みを積極的かつ主体的に行うことで持続可能な地域社会づくり、地域の方々の生活向上に貢献できる役割を模索する」と思いを明かした。
 記者団の「ヤマトはヤフーやAmazonと価格改定したようだが、日本郵便と楽天は」との質問に対し、「JP楽天ロジスティクス(諫山親社長)の倉庫の荷物がフル稼働すれば日本郵便の物流収益になる。Amazon倉庫の商品は他社が運ぶが、価格にウエートを置く他物流業者も苦労されている。魅力あるサービスメニューを広げることが大事だ」と強調した。

 「支社機能のイメージは」には「4月から支社機能強化に取り掛かる。支社による人事評価は、局長会の考えや評価、局長同士の部会単位の働き具合も非常に重要な要素だ」と指摘した。
 「日本郵政グループのデータ活用」には「例えば、車にカメラを積めば積み上がる『デジタル地図』も社会の自動運転化にも資する。個人情報保護には慎重に対応する必要がある」と述べた。
 郵湧新報の「①デジタル田園都市国家構想実現会議で『郵便局が身近な公的拠点として地方創生の役割を果たしたい』と発言されたが、『ローカル共創イニシアティブ』もその一環とお考えか②『国民の資産形成』に役立つ郵便局力の引き出し方は」には「さまざまな団体や自治体への社員派遣は、デジタル田園都市国家構想の実現を資すもので、支える。郵便局の将来的な業務拡大の意味でも重要。地方の郵便局の業務開拓に結び付けたい」と思いを明かした。

 また「岸田政権になって『まち・ひと・しごと創生』を『デジタル田園都市国家構想』と言葉が言い換えられた。人口が減少する地方のリアルな郵便局が果たす役割を残したい。公的な証明書類の発行のみならず、人材紹介や相談や問い合わせに郵便局が専門家に取り次ぐ仲介機能を発達させたい。派遣社員は新しい仕事を発掘し、持ち帰ってほしい。地域の困り事相談に応じられる郵便局にしていくかが大切だ。政府もさまざま交付金等も用意している。郵便局活性化につなげたい」と期待を寄せた。
 一方、「金融機関が郵便局以外に一つもない市町村が34~35。おそらく広がっていく。コンサルタントと窓口が連携して互いに本題の流れを作り合うことも大事だ。コンサルタント拠点は集約せざるを得ないが、補完する地域の郵便局機能が重要なため、これからは郵便・物流だけでなく、金融機関としての郵便局機能を維持向上できるよう現場の皆さんとも話し、機能が果たせるようにしたい」と語った。