ユニバーサルサービス維持に基金創設を

2023.05.15

 長谷川英晴参議院議員は4月20日の郵政記念日に行われた参議院総務委員会で、「金融2社の売却益をユニバーサルサービス維持や、地域課題解決に向けて、郵便局を複合的に活用する新規事業に必要な資金を充当できるよう、『社会・地域貢献基金』を復活すべき」と言及した。

長谷川議員国会質問 参院総務委

 長谷川議員 地方への移住相談件数の推移を教えていただきたい。

 大村慎一総務省地域力創造審議官 調査を開始した2015(平成27)年度の相談件数は約14万2000件。21(令和3)年度には約32万4000件と約2.3倍に増加し、調査以来最多の件数。地方移住への関心は高まっている。
 長谷川議員 総務省の移住に関する取り組みを伺いたい。

 松本剛明総務大臣 地方の担い手不足や災害リスクの観点から、東京一極集中是正は日本にとって喫緊の課題。岸田内閣は「活力ある地域づくり」が重要との認識からデジタル田園都市国家構想を最重要施策に掲げ、「人の流れをつくる」ことを柱に位置付けている。
 私も「地域おこし協力隊」を視察したが、大変活躍され、約65%がその後も定住するなど地方への人の流れ創出に寄与している。総務省は自治体の移住・定住対策に財政措置により支援。多様な施策を積極的に展開している。デジ田構想の実現、活力ある地域づくり実現に向けて関係省庁と連携し、総務省一丸となって全力で取り組んでまいりたい。
 長谷川議員 空き家に関する日本郵便の取り組みをお尋ねしたい。日本郵政の増田社長は記者会見で「自治体が空き家業務に興味を示されている」と述べている。JPデジタルの飯田恭久CEOは、グループ内に約150名の1級建築士が在籍すると言われている。空き家リノベーション、移住・定住、町づくりなどに総合力で貢献いただけないか。

 立林理日本郵政常務執行役 日本郵便は郵便局ネットワークを活用した空き家のみまもりサービスの試行を開始し、また、三重県玉城町から空き家調査業務を受託した。人の流れをつくる移住・定住は大きな社会的課題。石川県では連携協定に基づき、郵便局長が移住サポーターとなる取り組みも行っている。
グループ内にはさまざまな資格や技術を持つ社員も多数いるため、活用を検討したい。どう社会や地域課題に貢献できるのかを見極めたい。

郵便局でのオンライン診療も問う

 長谷川議員 オンライン診療の郵便局空きスペース活用をお聞きしたい。

 森光敬子厚生労働省審議官 社会保障審議会医療部会で遠隔医療のさらなる活用を議論し、昨年末、へき地等で郵便局や公民館など身近な場所でオンライン診療の医師が常駐しない診療所を開設可能とする案を示し、方向性を理解いただいている。関係省庁と連携し、国民の医療アクセスを確保するため、オンライン診療のさらなる活用を着実に進めたい。
 長谷川議員 ゆうちょ銀行の株式売却収入の使途を聞かせていただきたい。

 西口彰人日本郵政常務執行役 ゆうちょ銀行株式は今年3月に1株当たり1131円で市場に売り出しを行い、約1兆2000億円の売却手取り金を得た。グループ全体およびグループ各社の企業価値向上のための成長投資に充当したい。
 郵便局窓口や郵便物流の業務を効率化するデジタル化や、不動産投資に活用するほか、シナジー効果や新たな収益源獲得につながる投資にも活用する。資本効率性向上や株主様の配当収支均衡の観点から、自己株取得にも活用する。

 長谷川議員 改正前の郵政民営化法では、日本郵政は社会・地域貢献基金として、上場後の株式売却収入や利益の一部を1兆円になるまで積み立てることが義務付けられ、運用益から交付されることになっていた。基金は改正民営化法でなくなったが、復活を検討すべきと申し上げたい。
 収入資金は、ユニバーサルサービス維持や社会地域の課題を解決するため、地域に根差した郵便局を複合的に活用する新規事業を生み出すことなどに売却収入を充てるべきだ。本日は郵政記念日。創業の精神、地域における郵政事業、郵便局の在り方を地域の方々の思いを持った上でグループ運営をしていただくことを希望する。