マイナンバーカードと郵便局 インタビュー(上)

2023.05.07

 3月末までに国民の申請件数が人口の約76%(約9604万件)となったマイナンバーカードに、郵便局はさらにどう絡んでいくべきなのか。まずは業務関係に明るい全国郵便局長会の福嶋浩之副会長に伺った。

システム等を含めたグループ一体化を
全国郵便局長会 福嶋浩之副会長

 ――マイナンバーカードに関する郵便局の利活用に追い風が吹いています。
 福嶋全特副会長 マイナンバーカードの申請等について、総務省から郵便局の活用を提言していただくなど追い風が吹いているので、さらに推進していかなければいけない。マイナカードにはNFC機能( 非接触ICチップにより、近づけるだけで通信できる機能。お財布機能付きスマートフォンや、交通系ICカードに使われている)が付いている。偽造も難しく、無理やり読み込ませようとすると壊れる等、セキュリティーも優秀だ。
 金融相談等をリモートで行う場合に怖いのが〝なりすまし〟。例えば、今後、ゆうちょ口座を開設したい時などに、カードをピッとかざすことにより、住所・氏名・生年月日・性別の基本4情報で〝本人確認〟できるようになれば、郵便局の窓口は本当に楽になる。
 かんぽ等でも年に何件かは性別等の間違えが起きているが、こういった間違いを防ぐことができる上、お客さまに合った商品やサービスをお薦めしたり、専門家につなげたりすることもできる。
 これまでも各局に業務用タブレットが配備されてきたが、NFC機能はなかった。円滑な業務運営のためには、今年度に増備予定の約2万台のタブレットにNFC機能を付加すべきだ。
 今後、過疎地や離島での活用が期待されているオンライン診療も、現行法では自宅か養護施設でしかできない。郵便局も「まちの保健室」として地域医療に貢献している。オンライン診療を本格的に郵便局で実施するためには、病歴等のプライバシーを守る本人確認が必須だ。
 マイナカードの取得は、当該地域で生活を続けるために必須になる。また、地域と共に生きる郵便局も、普及促進に向け全力を尽くす必要がある。

 ――日本郵政グループとしてシステムを一体化すべきとのお考えを持っていらっしゃるとお聞きしました。
 福嶋全特副会長 マイナカードの普及促進のためにも、まず郵便局でどんどん使えるようにして、お客さまにこんなに便利ですよとお知らせするのが一番のPR。
 そのためには、ゆうちょ銀行とかんぽ生命のシステムを日本郵便のシステムと一体的に運用できるようにする必要がある。
 また、ゆうちょPayの利用はいまだに郵便窓口だけで、金融窓口では使えない。それはおかしい。多くのお客さまに「リアル×デジタル」の郵便局を、さらに便利に利用していただくためにシステム統合を図るべきだ。
 改正郵政民営化法で金融ユニバーサルサービスを課せられているのは、ゆうちょ銀行とかんぽ生命ではなく、郵便局を運営する日本郵便。日本郵政は、所有する金融2社の株式を売却し続けており、グループの一体経営が維持できるのかが心配だ。
 システムの統合や法改正等により、グループを一体化し、将来にわたり、お客さまに安心して商品やサービスを提供していくことが絶対に必要だと思う。