日本郵便、デジタル地図に着手

2022.08.13

 米サンフランシスコで開催された「スマートシティXカンファレンス2022」(主催=スクラムスタジオ㈱:髙橋正巳社長)で7月20日(日本時間21日)、生活者目線で地域に則したサービスやサステナブルインフラ、世代間コミュニケーション、リアルとデジタルの結節点等をテーマに、日本の大企業と海外のスタートアップ企業がデジタルで共創する9案件が発表された。うち、日本郵便の共創は最も多く、3案件。次世代住民サービスの基盤となる自動運転や無人配送に向けたデジタル地図の構築、郵便ポストの機能多様化で地域を守るなど、郵便局のビッグデータを活用するまちづくりの実証が世界を舞台にスタートした。(写真は3D点群データを生成できるライダーセンサー)

まちづくりの鍵はビッグデータに

 デジタル技術を活用した新たなスマートシティの動きが世界中で加速している。そうした中でスクラムスタジオ㈱は、日本の各産業を代表する大企業と「ニューノーマル時代のスマートシティ」をテーマに各国のスタートアップ企業と連携し、事業共創を行う「グローバルオープンイノベーション・プログラム『スマートシティX』」第1期目を2020(令和2)年8月から開始した。
 21年11月からの第2期目には、日本郵便や全日空など国内大手13社、石川県加賀市や横浜市など先進7自治体がパートナーとして参画。国内のみならず米国やイスラエルの先進的な技術を持つスタートアップ企業と「未来のまち」を描く〝共創〟を開始した。
 金子恭之総務大臣は8月2日の記者会見で、「約2万4000の郵便局ネットワークを生かし、郵便局データの活用とそれによる革新的なサービス提供を積極的に進めていただくことを期待している」と語った。
 日本郵便の五味儀裕執行役員は7月21日のオンライン会見で「2023(令和5)~24年度の間には、何らかデジタル地図実用化のめどを立てたい。地域を支えられる価値創造に向けて引き続き挑戦していきたい」と意欲を示した。

(上がカメラ画像/下がライダー画像)

新たなビジネス創造へ

 「スマートシティX」第2期で発表された9案件のうち、日本郵便は3案件に参画するが、イノヴィズ・テクノロジーズ社(イスラエル)と共創した「デジタル地図」では、すでに6月16日に田園調布局で実証実験を行った(写真下)

 イノヴィズ社開発の、気候を問わず、ち密な3D点群データを生成できるライダーセンサーを日本郵便の配達車両に搭載し、配達時の道路や建物の変化情報を高鮮度に取得し、自動運転や無人配送など次世代サービスの架け橋となる「デジタル地図構築」や地域の「空き家対策」などのほか、「新たなビジネス創造」を目指していく。
 また、日本郵便とソルチップ社(イスラエル)は、太陽光で自己給電し、さまざまなセンサーも搭載するIoTソーラーバッテリーを各地の郵便ポストに実装。遠隔で郵便物投函状況を可視化し、効率的な取集業務を実現するほか、気象情報等の環境データも取得、子どもや高齢者のみまもりに活用する仕組みを検討する。
 さらに、日本郵便とあいおいニッセイ同和損害保険は三重県と「地域内の児童向けの交通事故防止通知スキーム」を共創。日本郵便が保有する事故防止ノウハウや郵便局配達員の知見を生かし、三重県内で実証実験を計画する。将来的には仕組みを活用し、身の回りの事故・防災・犯罪等、あらゆるリスクを回避する世界を目指していく。

郵便ポストにセンサーで見守りも

 日本郵便の五味執行役員は「イノヴィズ様との取り組みはデジタル地図の事業化加速に非常に重要。ソルチップ様との共創は、郵便ポストを町のセンサーとして活用するが、ポストを地域の見守り等に活用する際に充電が一つのネックになっていた。自己充電できるチップは利活用できる。三重県様などとの取り組みは、事故が起きる交差点で事前に危険性を洗い出しもできる」などと説明した。
 欧州では脱炭素化にとどまらないサーキュラーエコノミー(循環型経済)の動きが進み、米国はグリーンインフラ投資を後押しする一方で、アジアではデジタルツイン(現実の世界から収集したさまざまなデータをコンピューター上で再現する技術)に関する取り組みや都市問題対応など地域によって特徴ある形が注目されている。
 政府はソサエティー5.0の実装としてスマートシティやスーパーシティを進め、デジタル田園都市国家構想ではデジタル生活基盤の上でサービス創出と市民参画による好循環を目指している。