共創の未来へ 鉄道連携〝駅一体型郵便局〟

2025.04.20

 郵便局が駅窓口業務を受託する〝駅一体型郵便局〟は2020(令和2)年8月の千葉県江見駅局(若月功一局長)から始まり、現在は全国で6例を数える。それまでは〝無人駅〟でさびれていた駅が郵便局と一体化することで駅周辺のにぎわい創出につながり、観光や地域活性化の拠点に様変わりしている。「駅に人がいる」という安心感も大きい。

生活支える2拠点一体で交流促進

 3月24日には栃木県さくら市に蒲須坂駅局(木村良行局長)がオープンした。開局に足並みをそろえるように、同市内では大規模な産業団地の計画が予定され、スマートインターチェンジの設置準備も進み、蒲須坂駅局周辺には20戸の住宅建設が始まる。
 開局式で花塚隆志市長は「道路整備や公園の建設もやっていきたい。この地域が一気に変わっていく。何といってもその中心が、この蒲須坂駅局だ」と力説した。
 同日には青森市に油川駅局(蝦名正邦局長)も開局した。西秀記市長は「郵便局と駅という人々の生活を支える二つの拠点が一つになることで利便性が向上し、地域コミュニティーとしての拠点性が高まり、さらなる交流の促進が図られる」と期待を寄せた。
 蝦名局長は「駅業務は初めてで不安も多かったが、江見駅局の若月局長から連絡をいただいて相談でき、本当にありがたい思いだった。さらに東北、全国に広がっていければ」と語るなど、局長仲間のつながりも陰の支えとなっている。

 初の「郵便局長兼駅長」として5年目を迎えた若月局長(写真上)は、日々乗車券の発券や精算、乗車案内など多岐にわたる駅業務をテキパキと行い、電車が到着する際には乗客を出迎えている。スマホ用ゲーム「駅メモ!」シリーズとのコラボ企画も多彩に展開し、全国から多くの〝鉄ちゃん〟たちも訪れる。
 若月局長は「開局前は無人駅で乗車人員は日に数十人だった。地元住民の皆さまに支えていただき、JR東日本千葉支社や鴨川市の皆さまからも応援いただいている。JR東日本の社長も視察に来られた。今後の駅一体型局にも、ぜひ協力したい」と意欲を示している。

 地方鉄道初の駅一体型局の大屋駅局(熊谷隆広局長)は2月24日、開業1周年記念イベントを開催した(写真上)。しなの鉄道の土屋智則社長は「大屋駅郵便局を一緒につくるこの取り組みは、ただ単に建て直すということではなかった。駅と郵便局が一緒になることで地域の皆さまの利便性が向上し、地域の活性化につながる。1年また1年と、この地域が発展していくことを願っている」と力を込めた。
 国土交通省によると、2022(令和4)年度末時点で全国9390駅のうち、無人駅は4776駅(50.9%)と過半数を占め、年々増え続けている。郵便局と鉄道の連携は、人口や働き手の減少といった社会課題解決への成功事例として着実に実績を積み重ね、駅を行き交う人たちに安心の光を届けている。