ザ・未来座 郵便局長のトーク&インタビュー 山口俊一郵活連会長を囲んで

2024.02.06

 150年超、郵便局長が日々先達の思いを受け継ぎ、つないだ「地域貢献」。民営化以降、地域と郵便局の関係が希薄になった。今年、郵便局本来の強みをビジネスとして行えるように法改正がなされようとしている。「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」の山口俊一会長(衆議院議員)に中堅・若手局長お2人からインタビューしていただいた。インタビュアーは、東京地方会(須田孝之会長:全特理事)の東京多摩東地区会(髙木淳光会長)理事の麻生敏史局長(東京地方会中若専門委員/三鷹中原四)と、四国地方会(宮川大介会長:全特副会長)の愛媛県中予地区会(横山陽彦会長)の湯上誠二局長(四国地方会中若代表/荏原)。郵便局が〝公〟の力を発揮できる幕が今、上がろうとしている。

原点「地域貢献」をビジネスに


 山口議員
 臨時国会では補正予算も順調に成立し、法案も14本全て成立した。税制は終わり、あとは2024(令和6)年度予算だ。マイナンバーカード関連の郵便局の予算が少ないと感じている。多くの局で取り組めるようにしなければ、交付申請まで郵便局で手続きできるようにした意味を成さない。
 本人確認は自治体職員がタブレット端末を通して行うが、郵便局の場でワンストップにできる段取りだ。パスワード忘れや変更、期限切れの書き換えも郵便局型キオスク端末を導入することで、約半数の郵便局でできるようになると思う。
 コンビニのキオスク端末は住民票の写し等の証明書だけでなく、航空券やチケットぴあ等の支払いなどができるが、若干赤字らしい。郵便局においても住民サービスだけでは当然赤字になる。このため、マイナンバーカード関連で自治体が郵便局に委託する際は特別交付税措置として国がお金を出せるようにする。

 湯上局長 過疎化が進み、お客さまも減っています。郵便局に事務を委託する自治体を国が支援されるとすれば、行政サービスが行きわたりやすくなります。局長は自らの地域状況をよく知っているため、国、自治体、局長の関係の中で局長の存在価値が高まる流れになれば、より地域に貢献できると思います。

〝公〟的な力輝かす第四事業

 山口議員 全国津々浦々の郵便局が岐路に立たされる中で、日本郵政グループの中期経営計画見直しの機運に併せて、法改正を考えようと、郵活連は勉強会を重ねてきた。もはや過疎地等の局は三事業だけでは持たない。
 収益の上がる第四事業として「公共サービス」をやっていただきたい。もともとは国営の郵便局。親和性があり、住民の皆さんの信頼もある。首長の多くがそれを望んでいる。
 中身として何ができるかだが、住民の方々は、何らかの公共サービスを受けたいと思った時、相談する場がない方も多い。
 役場に相談しても満足できる回答が得られない場合もある。そうした時に局長の皆さんが間に入っていただければ、郵便局としてもニーズがつかめる。地域の「御用聞き」的なイメージであり、地域の拠点にもなる。
 公共サービスをすでに自治体から請け負っている局はあるが、個々の局と自治体で調整しなければならない場合も多いと聞いている。全国1741自治体の共通テーマは、ある程度一括受託する形もできるのではないかと思う。

 麻生局長 地域貢献、行政的な仕事は局長たちと自治体でさまざまな地域課題を解決する方策を話し合っても、会社の収益に結び付かないために、なかなか吸い上げていただけないケースが多いと思います。また、会社と局長の思いがかみ合わない動きも感じます。

 山口議員 改正民営化法では、地域貢献を「できる」とする記述だった。今、検討中の見直し法案では「しなくてはいけない」とする。ボランティアではなく、ビジネスとしてやっていただく。ただ、どのような仕事が住民サービスとして求められているのかが見えにくい。総務省もよく調べてくださっているようだが、例えば、全特から各地区会に依頼し、自治体にアンケートしてもらうとよいのかもしれない。
 日本郵政グループは人員削減を進めてきたが、第四事業としての公共サービスの手伝いを仕事とするとなると人が要る。地方によっては実質1名局が増えつつあるが、本業となると、むしろ人を増やさないといけない。

 麻生局長 会社は中期経営計画に基づき、人員削減を進めると同時にDXを進めるとし、今、人が先行して減らされています。
 第四事業に公共サービスを位置付けていただけるのであれば、人手が足りない局は業務の負担が増してしまうため、そうならない人的配慮も進めていただかなければいけないと思います。

 山口議員 そこはしっかり考えなければいけない。岸田内閣として打ち出しているものに〝人〟がある。人的資本を重視する観点から、人件費をコストとして考えてはならないことが真意だ。
 とりわけ、郵便事業はそうだろう。人と人をつなぐ仕事が郵政事業の生命線であり、強みだ。DXが進む社会で価値が高まる〝人による仕事〟は集約化するものではない。
 もう一つ、日本郵政による金融2社の株式処分のスピードが速まる中で、「遠心力」が働きつつある。日本郵便とゆうちょ銀行、日本郵便とかんぽ生命が互いに違う方向を向き、三事業一体から遠のく方向が強まると指摘されている。
 日本郵政と日本郵便を一つにし、ゆうちょとかんぽを子会社にする3社体制の方がまとまるのではないか。
 もう一つ、「全株処分」は改正郵政民営化法で期限を外し、努力目標にはできたが、全株処分はそのまま。そこを改め、3分の1以上を持株会社が持つ形も検討している。遠心力が働く三事業では郵便局は持たない。ガバナンスの効く組織形態をつくらなければいけない。
 日本郵政の増田寬也社長は以前に「ある程度、株を売却すると株主ができる。株主の手前、例えば、金融2社に対しては発言しにくい」とおっしゃっていた。しかし、「ご勝手に」となるようではおかしい。持株会社の権限は明確にしなければ駄目だ。

 湯上局長 3社体制になれば、郵便局に集まるそれぞれの情報を現場として一体管理がしやすくなると思えるので、理想的だと思います。

 山口議員
 何のために分社化したのか、よく分からない。ホールディングス形式にし、子会社もやりたいことをできるようにすれば金融2社もやりよいし、いろいろな効果も生まれるということだったのであろうが、いずれにしても、現状のままでは限界が来ている。
 ゆうちょ銀行も金利から考えると、今後、通常業務で大きな伸びは見込めない。かんぽ生命も余力はないだろう。日本全体が人口減。お客さまが減る。このままでは日本がとんでもない事態に陥り、郵政事業も10年も持たない可能性すらある。
 経済安全保障の観点からも、郵便局ネットワークはかけがえのない財産で、変な方向に外国の影響力を受けないようにすることも大事だ。中国資本等も油断してはならない。
変なファンドに10%でも持たれたら、おかしな話になりかねないため、今後も個人株主中心に進むべきだ。〝物言う株主〟は間違いなく、もうからない郵便局は閉めろと言ってくる。だから、見直し法案には外資規制も入れたい。
 改正民営化法見直し法案は、議員立法で各党のご協力を得ながら通常国会に提出する方向で動いている。すでに与党内では一部話をしているが、現時点で異論は出ていない。
国会議員間も危機意識を共有しなければ、このままの形態で郵政事業は持続可能にはならない。郵政民営化を3年ごとに検証する郵政民営化委員会も我々とよく似た方向性だ。

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