続・続 郵便局ネットワークの将来像㉚

2023.12.08

 全国各地に埋もれた困りごとの解決を目指し、総務省は郵便局長と行政相談委員との懇談会を今後、全国に広げていく方針だ。すでに愛媛県宇和島市と新潟県三条市で試行開催され、現在3回目を計画中。地域のキーパーソンや市町村職員、集落支援員、総務省職員等も交えながら開催される懇談会で期待されているのは、細やかに配置される郵便局で局周との人間関係を幅広に築き、声が届く局長の方々の〝地域力〟のよう。

行政相談 期待される局長の〝地域力〟

 「キクーン」をご存じだろうか? 国民一人一人の声をよく〝聞く〟コンセプトで行政相談を親しみやすくするマスコットキャラクター。鈴木淳司総務大臣は10月13日の記者会見で「ぜひ気軽にご相談を」と笑顔で紹介しながら呼び掛けた(写真上)。
 自治体の市民相談、企業のお客様相談窓口と同様に、国の行政にもお困りごと相談窓口がある。総務省は職員約1000名を10~20名ずつ、47都道府県の各行政評価事務所に配置し、市町村が推薦して総務大臣が委嘱する行政相談委員と連携している。
 保護司や民生委員、役所OB、行政書士兼務の方々で構成される全国約5000人の行政相談委員は、国に関する困りごとだけでなく、自治体や民事含め、解決に向けて日々努力を重ねている。
 例えば、「マイナンバーカードを作りたいが、役所までが遠い」「子どもが危険なのでフェンスを作ってほしい」「土砂が崩れそう」「災害後の罹災証明書はどこで作るのか」などの相談を、解決へと導く水先案内も役目の一つ。近年はインバウンドの方のサポートも増えてきた。自治体等に同行する場合もある。
 しかし、60年以上前から行政相談委員は存在していたものの、国民の認知度は2021(令和3)年9月時点で約13.8%。総務省職員の間でも知られていないのが実態だった。

埋もれた「困りごと」解決へ

 昨秋、当時の柘植芳文総務副大臣が推奨し、立ち上げた「郵便局を活用した地方活性化方策検討PT」(キャップ=竹村晃一官房長<当時は今川拓郎官房長>がまとめた郵便局の活性化方策に「地域の『埋もれたお困りごと』の発掘と解決支援」として、「国・自治体・郵便局が連携し、行政相談委員等へのヒアリングを行い、懇談会を試行実施した上で横展開を推進」と盛り込まれた。
 地域のキーパーソン、局長や社員、市町村職員、集落支援員、総務省職員、行政相談委員等の懇談会開催や、郵便局で災害時の「支援窓口ガイドブック」配布、行政相談ポスター掲示も明記。それを受けて6月28日、長谷川淳二総務大臣政務官が出席し、愛媛県宇和島市で愛媛県南予地区連絡会(清家裕二統括局長/宇和海)局長数名と行政相談委員の全国初の懇談会が開催された(写真下)。

 9月27日には新潟県三条市で、地元の国定勇人衆議院議員(環境大臣政務官)や滝沢亮市長が出席し、新潟県中越北部地区連絡会(山田良一統括局長/三条井栗)局長数名と行政相談委員の第2回懇談会が開催された(写真下)。プライバシー保護もあり、相談内容は秘められているが、例えば、豪雪時の対応やスマホ教室、公共交通のない地域でのコミュニティーバスやデマンドタクシーの運行、空き家対策等々含めていろいろな地域課題が浮上したもようだ。

 総務省行政評価局行政相談企画課の島岡良行課長補佐(総括)は「行政相談委員は地域を回ったり、電話でも相談を受け付けたりしているが、まだまだ拾い切れていない埋もれた困りごとは多い。救い上げて解決できれば、地域は元気になる。私も新潟の事務所で仕事をしたが、広大な県を総務省だけのマンパワーでは足りないと感じた」と強調。
 「住民の方々は皆、相談ごとは自治体にまず行き、次に郵便局に行く。局長さん方は地域のキーパーソンや自治会長ともさまざまなお付き合いがあり、人間関係が幅広かった。その力をお借りしたい。郵便局側からも地域貢献業務の一環として、行政相談委員とのコラボは良いと言っていただいた。局内にポスター掲示や行政相談目安箱を置かせていただくなどPRにも力を入れたい。3回目の懇談会も計画中で、さらに全国各地に広げたい」と意欲的だ。
 国定衆議院議員は「行政相談委員は相談を受けた内容を総務大臣や各関係機関に直接的に報告する法的権限を持つ。約60年前からあった素晴らしい制度であるにもかかわらず、あまり知られていない。私も市長時代は行政相談委員の存在を知らなかった。郵便局長のところには三事業とは関係ない一般行政を含め、市民の方の声が届いている。局長の皆さんからの声を聞くことで行政相談委員が困りごとを把握し、課題によっては総務大臣に意見具申するきっかけになる。行政相談委員の立場から見れば、郵便局は今も住民から強い信頼を持ち続けている存在だ」と語る。